復活した千代の人生に、もう一平は必要ないと思った。過去は忘れて、あとは進むだけ。もう、辛いことなんて、わざわざ掘り返す必要ないって。
でも、脚本の八津さんは最後に出しちゃうんだねぇ。

一平も自分なりに脚本を書き上げて乗り越えていた。
しかし千代に悪かったという気持ちは残っていたはずだ。千代が戻るのはそれを救うためだと思った。

みんなが救われる大円団。とても朝ドラ的。

でも、千代の方も、道頓堀を誰にも告げずに離れてしまったという思いも残っていたわけだ。
それを消化するためか。

立ち直ったもの同士の再会。
一平と2人のシーン。
何も話さないんかい!
緊張した空気を感じるが、思いのほかあっさり。
どんな気持ちで会ったんだろうな。

そして3人の場面。
一平あぐらのままなのはそういう演出なのか。

千代と一平との間にはもう、情というかそういうものは感じられなかった。お互いにもう腹くくってるのか、とっくに吹っ切れてるのか。かつて夫婦だった2人がこうして面と向かっているのが、なんとも言えない。気まずくて、逆に灯子がいてよかったぐらい。
一個人として、役者同士のやりとりだ。
バックで流れる音楽が明るくて、暗い雰囲気を穏やかにしていた。

一平、千代がいなくなってからずっとどの場面でも自信なさげな雰囲気だったのに、千代を前にちょっと貫禄を感じた。
やっぱ千代がいないとだめなんだねーこの人は。なんか締まらない。

千代はテルヲに一平に、男に振り回されて、男なんて必要ない人生だったけど、一平は女がいないとだめなんだなきっと。
だんなに何気なく
コロナのせいで、修学旅行とか行けなくて、学生たちは思い出づくりが出来なくて残念だよね
なんて話をしたら、
みんなそうなんだから、別にそうは思わない
なんてことを言う。

私は、自分はコロナのない時代で、なんの制約もなくいろんなことを経験できたから、それと比較してそう思ったのであって。

それじゃ、自分が学生の時にこんな状況になったらと考えてみた。
私は、学校が、集団生活が好きじゃなかったので、むしろラッキーと思ったかもしれないと思って。高校の時は特に。
明日突然学校休みになったらいいのになーって考えてた。

所詮、他人事というか、余計なお世話だったのだと気づいた。


実際自分だって、遠くに旅行行きたいのに行けない。気軽に街ブラもできない。
でも仕方ない、諦めるしかないって思ってる。
みんなそう。それに子供の方が切り替えが早かったり、むしろ状況を楽しめたりするものだ。
今まで自由に好き勝手してきた大人の方が諦めきれず、文句を言っている場合の方が多かったり。

結局、今のこの状況を生きるしかないということだ。
目の前のことを一生懸命取り組むだけ。
先週のおちょやんは、私の中で最大の山だった。
予告で展開は見えていたからこそ、千代がどんな行動をとるのか、どんな結末を迎えるのかとても興味深かった。
結末は、思いっきり憎むこともできず、怒りを通り越してただただ悲しく、なんでこうなってしまったんだろうとしか思えない。
それが、少し脚色されているようだが、実話を元にしてるというところがすごい。

言葉数も少なく視聴者に想像させる部分もあり、無駄な部分が一切なく、各描写も悲しくも美しく、時折り笑える劇団員のコントも挟みつつ、中身のつまった一週間だった。

周りの人たちに振り回されて(主にテルヲ)、自分で決めた女優という職業すら手放して。
10周回って、家族同然だった劇団を辞めて、最終的に血のつながった家族のもとへ落ち着く。

なんとも言えない切なさというか、今まで一生懸命居場所を探してきたのはなんだったんだろうという。
今まで千代の人生を見てきたからこそ感じるやりきれない思いというか。
それでも、千代を救ってくれる人がいてよかったという気持ちもある。


どん底を抜けた今週は、徐々にではあるが前を向いているようでよかった。
当郎さんとのかけ合い、栗子さんのつっこみが1番おもしろかったわ。