自己表現を科学する | 御木白日のブログ

御木白日のブログ

学習院大学 仏文科卒業。大正大学大学院文学博士課程修了。
詩人活動をとおして世界の平和に貢献。

 「パフォーマンス学」という学問をご存知でしょうか?
 パフォーマンス学は「自己表現」を研究するサイエンス、科学で、1960年頃からアメリカで始まったそうです。
 パフォーマンス学では、パフォーマンス(performance)を「presentation of self in everyday life」と定義しているそうで、日本語に訳しますと「日常生活における個の呈示」、すなわち「日常生活における自己表現」になります。 
 二代さまは、「人生は芸術である」(PL処世訓第1条)と悟得され、「人の一生は自己表現である」と教えてくださいました。
 初代さまは、「宗教と科学は一致する」と教えられましたが、「自己表現」を科学するとは、まさに宗教と科学が同じことを目指している一例ということができましょう。
 わが国にパフォーマンス学を紹介され、第一人者である佐藤綾子先生は、社会の中で自分らしく生きていきたいという「自己実現の欲求」を持っているのが人間の人間たる証(あかし)であり、その自己実現欲求を実現するためには良い自己表現が欠かせないと言っておられます。「自己表現は自然のままがいい」のではなくて、自己発見→自己強化→自己表現というスリーステップによって人間は成長していくと言われるのです。
 人から常に見られていて、見られた自分を良き者として他人から認めてもらいたいのが人間の本性だと佐藤先生は言われます。自分がひとかどの人間であることを他人に承認させるためには命をかけてでも闘争するのが人間であるとドイツの哲学者ヘーゲル(1770~1831年)は考えましたが、このヘーゲルの考え方の射程距離内にパフォーマンス学が在るようです。
 パフォーマンス学では、これを「見る目」、「見られる目」、「見せる目」という3つの目で説明するのだそうです。この3つの目は「能」の大成者である世阿弥が「能」の極意を教示した『花鏡』(1424年)の中で言っている「我見」、「離見」、「離見の見」と同じとのことです。
佐藤先生は次のようにまとめておられます。
①自分がまわりの風景や相手を普通に見ている「見る目」が第1の目「我見」
②相手が自分を見ていることを知り、見られている自分を相手の立場から見る「見られる目」が第2の目「離見」
③相手からどう見られているかを知って、最高の自分を見せていく「見せる目」が第3の目「離見の見」
 自分の中に、「自分自身を見ているもう一人の自分」のいることを自覚的に捉える、“two in one”の在り方と同じことを言っておられるのです。
 日常生活において、すべての「もの」と「こと」(神業)を素材として良き芸術を実践する、良き自己表現を目指すことは信仰そのものであり、しかも科学と一致してもいるのです。