デジタル彼女

　デジタル機器というものは扱いを間違うと突如心を閉じてしまう。優しい声をかけても、時に声を荒げてもウンともスンとも言わない。繊細な思春期の乙女心とでも言いましょうか・・・。鈍感な僕だから、つい心無いことを言ってしまうこともある。女心がわからない鈍感男子、ここにあり。

　先日、iPhoneが心を閉じた。よかれと思ってOSをアップデートしたのはいいが、5時間経っても終わらない。出かける寸前になっても変化なし。仕方ないのでその電源を落とし、再び電源を入れた。するといつもの画面にならず、iTunesに繋げと言う。どうやら知らずに彼女を傷つけたようだ。ごめんよ涙。

　彼女の心を開くため色んな事をした。友人のネット君に相談し、薔薇の花束とネックレスを送った。それでも機嫌を直さない。うぬぬ、強欲なやっちゃ！・・・いやいや、ここでへこたれてはいけない。

　物質じゃだめだ！精神的に攻めなければ！・・・ということで、どれだけ君が好きかを曲にして歌って見せた。チラッとこっちを見たが、まだプイっと顔を背けた。むむ、気分は「ため息のマイナーコード」だ。それでも僕は作業部屋の中心で愛を叫んだ。何度も何度も。

　すると彼女の表情に変化が訪れた。僕のストレートな表現にクスッとしたり、それを我慢しようとして背を向けたり・・・。本心は笑って許したいのにプライドが許さない・・・てな感じ。わかるぞ、わかるぞ、その気持ち。乙女心の理解度アップ。

　そのやりとりを丸一日以上費やしたが、どうやら僕は彼女の心をほぐしてきたようだ。最新の復元は出来なかったが、一ヶ月前の復元状態へ戻すことが出来た。この一ヶ月に入れたメモなどは消えてしまったが、それは鈍感な僕へのペナルティー。

　しかし彼女もなかなかのやり手。最後の最後で僕を困らせる。音楽の同期をしてくれない・・・くれない・・・紅（くれない）だぁ～！！！ なんてX-JAPANのライブでの曲紹介な気分。YOSHIKIさんの倍転ドラムが胸に響くぜ～。

　すると徐々に、徐々に・・・ジョジョの奇妙な冒険てな感じで曲の同期を許し始めた。しかし途中で同期ストップ。でも諦めず同期。徐々に曲が増えてゆく・・・。この乙女な現象、全くわかりません。意味がわかりません。

　それを何度も何度も繰り返し、ようやくいつもの彼女に戻ってくれた。

♪～ありふれた言葉だけれど　今君に届けたいよ　いつも口下手でごめんね　ホントは　心の底からありがとう～♪

　僕らの関係はいつもあやふや。不安だからこそ求めあってしまうのだろうか。都会の片隅で今、二つのかけらが重なった・・・（森本レオ風に）。

　ではまた・・・。