あの空気感の中 | 酒井ミキオオフィシャルブログ「raintree」Powered by Ameba

あの空気感の中

 随分前の1994年2月8日、京都にいた。街中を歩いていると十字屋というCDショップを見つけた。入ってすぐのところに「今だけは君を離さない」の赤と黒のコントラストが印象的なCDがあった。ショップには前日に並ぶ・・・そんなことを当時は知らなかった。

 それは自分がデビューしたということを実感する象徴的な出来事なのだが、第一に思い浮かんだのは「流通ってすげぇ」ってこと。業者から業者へ、人の手から人の手へ。あまり意識してこなかったが、流通というものが網の目のように張り巡らされている・・・日本すげぇ、と。

 そんなことを思いつつ眺めた自分のCD。ショップの人が作ったポップには、FM802ヘビーローテーション曲!と紹介されていた。関西圏ではかなりの影響力を持ったFM局なのです。

 次の日のデビュー日、2月9日はそのFM802で生放送ライブを行うという、当時の実力からすると無謀な挑戦をするために前日京都に入って鋭気を養っていたのです(ディレクターと、なぜか京都の北海道料理屋で蟹の刺身などを食し・・・まあ飲んだっちゃ飲んだのだが)。

 当日、大阪へ移動し局へ。デスクが立ち並ぶ局の普通のフロアの横に楽器をセットしリハーサル。通常業務をしている隣で♪~今だけは君を離さない~♪と大声張り上げる。ちょっと恥ずかしい。

 そしていよいよドキドキの生放送生中継。DJの方がいらっしゃって、軽くトーク。でも風景は通常業務をしている会社そのもの。本当に自分の声が流れているのか?と、リアリティーが持てない。でも必死にトーク。

 そして「では演奏よろしく!」と、全てを渡された。ギターの狩野さん、コンピュータ&キーボードの岸と共に演奏開始。しかしその演奏、今ではほとんど憶えていない。3曲という比較的長い時間だったが、必死過ぎて憶えていない。人は、自分に都合悪いことは忘れるそうです(笑)。

 当時の音源はもう聴けない、というか持っていない。持っていても聴きたくないってのが正直なところ。やばかったんだろうな。まあ皆そんなもんですよ。

 そんな昔のことを思い出したのは、今日がプロデュースさせてもらった
sissy というバンドのデビュー日だから。思わず当時の自分を重ねてしまいます。あの空気感の中にいるのかぁと。ソロとバンドの差はあるけどね。

 昨今の厳しい状況の中、このような直球爽やかバンドがあってもいい。ここが原点。キャパは必ず大きくなる。歌詞、メロディー、アレンジ等の深みも必ず出てくる。その背中をそっと押してあげるよう努めます。

 夢っていい言葉だ。そんなことをしみじみ感じる今日この頃。ではまた・・・。