「你好…」と言いながら、そっとドアを開けて道南館に入った。


*前回の台湾滞在記はこちらからどうぞ!


このお店を紹介してくださった奥谷道草さんが、ありがたい事にお店の奥さまに連絡してくださっていた。

奥谷さんを通じ、奥さまからの「都合が良いときに来てください。スタッフが日本語通じますのでご心配しないで」との温かいメッセージを受け取っていた。



カウンターにいらっしゃったのはご主人。

もう1人はお若い可愛らしい女性スタッフさんだった。

そのスタッフさんがカウンターへと促してくれる。

「日本人ですか?」と訊かれたので「はい」と答えると、メニューを見せてくれ、説明してくれた。


店名に「珈琲館」と付いているだけあり、豆の種類もたくさんあり、それぞれ好みによって「浅煎り・中煎り・深煎り」を選ぶことが出来る。

私はコーヒーは好きだが、そんなにこだわりはない。

まぁ、あえて言うなら酸味が強過ぎたり苦味が強過ぎたりするものはちょっと…と言った感じだろうか。


という事で、なるべくマイルドな感じに仕上がるようなものをお願いする。

しばらくすると、美しいカップ&ソーサーに入ったコーヒーが登場した。



落ち着いてコーヒーをひと口。

「はぁ〜」と思わずため息が漏れてしまう。とても美味しい。


普段は朝にコーヒーメーカーで淹れて飲んでるだけだし、そもそも慌ただしくて味わっている余裕は無い。

未だ水分の摂取制限をしているので、普段の生活ではあまり喫茶店やカフェ的な店へと行かなくなっていた。


しかし、こんな店が近所にあったら時々通いたいと心から思う。

明るく静かな店内はゆったりした時間が流れていてとても良い雰囲気だった。

日本だとコーヒーに拘りがあるお店は一癖ある感じのお店も多くて何となく入りにくい感じがするが、こちらはすっきりとしたモダンなインテリアで居心地が良い。


スタッフさんは受け取っていたメッセージ通り日本語がとても堪能で、「ご旅行ですか?」と訊いて来られた。

それをきっかけに会話が始まる。

「このお店は友人に教えてもらったのですが…」と言うと、店の奥にいらっしゃった奥さまを呼んで来てくれた。


奥さまに「奥谷先生にご紹介してもらったのです」と言うと「あぁ!」と分かってくださった。

そして、「この後はどうする予定ですか?」と訊かれたのでこの後行ってみようと思っている場所を告げ、「あと果物が食べたいです!」と付け足した。


すると、奥さまは嬉しい事にこの後のスケジュールを一緒に考えてくださったのである!

主にこの後の食事についていろいろ提案してくださったのだが、その提案は「さすが美食の古都・台南人!」と唸ってしまうものだった。


私など海外から来た人に「大阪でどこに食べに行ったらいい?」と訊かれても、そんなに思いつかない(そもそも店もあんまり知らないし)。

せいぜい「串カツなんていかが?」と答えるのが関の山で、「じゃあどの店で食べれば良い?」と言われても「どこもそんなに変わらないと思う」と答えるのが精一杯…という心許なさである。


しかし、台南人である奥さまの食に対する熱量は素晴らしかった。

それだけこの台南という街に美味しいものがたくさんある、という事の証明でもある。

これまでにもちょこちょこと訪れた時や、台南に関する情報を見聞きしてわかっていたつもりだったが、本当にそれはただの「つもり」だったのである。


*追記しました(2023.11.9)

滞在記には「台南人である奥さま」と書きましたが、当の奥さまより「台北出身で10年前に台南に引っ越してきた」との訂正を頂きました。

「生粋の台南人」であると勘違いして書いた事をお詫びして追記させて頂きます。

しかし10年台南に住んでらっしゃり、市街地の事に詳しい奥さまのアドバイスや提案はこの旅において本当に心強いものであった事に変わりはありません。


「まずここを出たら、甘いものなんてどう?

お勧めは豆花。○○というお店がいいと思う。ここからもすぐ近くだし」


「その後☆☆に行ってから△△に行くのよね?

そしたら晩ごはんは○△なんてどう?」


「フルーツは☆○か△☆(すぐ近くにある2軒)がお勧め!」


それらのお店を奥さまと一緒に私のスマホ上にあるGoogleマップに印を付けていく。


こちらの希望も考慮してくださった上、単なる旅行者の私には思いつかないようなお店をたくさん提案してくださった。

これは、台湾が大好きで食い意地の張った私にはかなり感動的な出来事である。


私の旅のモットーとして「地元の方の提案には乗れ」というものがある。

ガイドブックやSNSでチラッと情報を仕入れて来ただけの自分より、当然日々ここで暮らしている人々の生の情報の方が良いに決まってるからである。

特に、こんなに素敵で美味しい珈琲のお店をやってらっしゃる方の情報・センスが確かで無いわけない。


何と翌朝の朝ごはんの提案(ちょうどどうしようかなって思ってた)までして下さったので、ここから先の台南滞在は台南人である奥さまのプランにどんと乗っかって行けば良い、という事だ。


☆道南館 自家烘焙珈琲館

↑実は奥さまとの会話が楽し過ぎてお店の写真を撮らせて頂くのをすっかり忘れていた私である…。

とても素敵なお店なので、ぜひ台南観光の際には立ち寄ってみて頂きたい。

今回の滞在記にあるように、奥さまを始めスタッフさんも日本語堪能なので安心して訪れて欲しい。


「何かあったらすぐ連絡してね」と言ってくださったので連絡先を交換し、お店の外まで見送ってくださった奥さまに何度も「謝謝!ありがとうございます!」と言って別れた。


名残惜しいが、居心地が良い道南館を後にする。

また絶対に訪れたい場所がこの台南という街に出来て幸せだった。


さて、「道南館奥さまお勧めプラン・その1」である。

道南館がある民権路から1ブロック新美街を南下し、民生路へ。

民生路に出たら東方向へ向かってすぐの場所にある「冰郷」に到着した。



この「氷の故郷」という意味の店名を持つ冰郷は、日本のガイドブックや台南本なんかで目にされた事がある方も多いかも知れない。

私もそんな感じでこのお店の名前を目にした事はあったが、そこで紹介されていたのは日本人が大好き(私ももちろん大好き!)なマンゴーかき氷(もしくは冬季限定の苺かき氷←めちゃくちゃ美味しそうなので食べたい)を中心にしたものだったと思う。


しかし、やはり地元の方が紹介してくださるものはひと味違う。

奥さまからはこの冰郷で「八寶豆花を食せよ」という指令(?)を受けた。


実際、注文表を見ると「強力推薦(超おすすめ)」の欄には「八寶豆花」と「薑糖蕃茄(生姜・砂糖・醤油入りの特製ソースで食べるトマト)」があり、お店的にも台南人的にもやっぱり「お勧めはそっち」という事なのだ。


↑歩道上にテーブルがあるこのスタイル、好きだなぁ。


注文表と共に代金55元を払い、再び席にて待つ。

待つ事しばしで運ばれて来た豆花は…


きらきらきら…!

豆花の上にかけられた氷が輝いて見える!



豆花の上には紅豆・緑豆などの甘く煮た豆、肌に良いはと麦、タロ芋団子やタピオカというもちもち系、そして良い感じにカリッとした食感を残した花生(ピーナッツ。豆花には柔らかく煮たものが乗せられている事が多いが、最近時々カリッと系のも乗っている。私はカリッと派)…という最強の布陣。


肝心の豆花は、私の好きな「豆腐っぽさ控えめ」のなめらかな豆花だった。

シロップも、当然甘過ぎたりしなくてちょうど良い塩梅。


「台湾好きは豆花好き」という言葉が頭に浮かぶほど(ayacoさんの「台湾好きは誠品好き」という言葉より名作ではないな…)、やっぱり台湾が大好きな私は豆花が大好きである。



これまでにも何度も台湾、そして日本で豆花を食べて来たが、豆花と具、そしてシロップのバランスが最も素晴らしいと思う、冰郷の八寶豆花であった。

もちろんお味も最高である事を付け加えたい。


諸々の事情で仕方がないとは言え、日本で豆花を食べると結構お高い(普通に¥1000近くする)。

それが、こちらでは何と55元なのである。

その点も含め、やはり現地で食べる幸せに勝るものは無い…と思う。


本当に美味しかった!


道南館の奥さまへの感謝を胸に、次の目的地へと歩き始める。


↑歩き始めた瞬間、「ヤツがいる…!」。

しかし、夜に再び通った時には人だかりが。人気店なのだ。

いつかは臭豆腐とも仲良く出来るのかな…。