新たに始まった結婚生活、その幸せの中で、唯一の悩みが、やはり母のことでした。
母から再び逃げたくなった理由。
それは「依存」でした。

私しか頼る人がいない。
経済的にも、精神的にも。
それは、22歳の私には大きな負担でした。

父から残されたものはほとんどなかったので、母の生活は、すべて私にのしかかっていました。
幸いお給料は良かったので、生活に困ることはありませんでしたが、母は常にそれ以上のことを望みました。

もともとお嬢様なので、金銭感覚が甘いところはあったようなんですが、欲しいものは手に入れないとすまない感じ?
後から弟に聞いてわかったことですが、母の浪費癖に父も困っていたことがあったとか。

着物、宝石、絵画、洋服や靴など、新しいものがどんどん増えていくんです。
「お金はどうしたの?」と聞くと、「ローンを組んだ」と。
で、私に向かって「よろしくね」と。

寂しい気持ちや不安な気持ちが物に向かっているんだと、ずっと1人にしていた罪悪感から、はじめは「いいよ」と払っていたのが間違いで、母はだんだんエスカレートしていきました。

買い物をして満足しているときは、躁うつ病の症状がおさまる。
完璧な依存ですよね。
その姿を見て、強く言えない私がいました。

結局、それは母が亡くなるまで続きますが、私は結婚することで、その状態から逃げたかったんです。

「結婚することが決まったから、彼と暮らします。生活費は出すけど、それ以上のものは出せないから、自粛してね」

母は納得し、しばらくは大人しかったんですが、それも続きませんでした。


つづく。