こんにちは。

週の始まり、お疲れ様でした。

暑かったですね。


彼女に初めて逢ったのは

大学病院の閉鎖病棟の廊下だ。


すれ違った時

彼女の美しさに目を見張った。

と同時に

パンダのぬいぐるみの耳を持ち

ぶらぶらとさせながら

うーうーと

コトバにならない音を発し

素足で歩く彼女は

何と表現したら良いのか分からない重厚な空気を

纏っていた。


あの少し怖い鉄格子の保護室のドアが開いていた。


彼女が、ずっと保護室に居るHちゃんだと

教えて貰った。


食事も、彼女は保護室で取っていたし

保護室から出られる時間も決まっていた様で

逢う機会が中々無かった。



保護室から聞こえる

鉄格子に顔を打ち付ける音。

きゃーと金切り声を上げた後に

激しい嗚咽。


保護室から1番離れたベットで伏せっていた私の処迄響き渡る音。


何が、それ程彼女を苦しめるのか

知る由もないが

胸をえぐられる様な痛みだった。

私も涙を流していた。


何がそんなに辛いの?

もう、泣かないで。

そんな想いだった。


或る時に逢ったHちゃんは

全くの別人だった。

パロ(アザラシ🦭型ロボット)

価格35万円  

普段は、パロはナースステーションに。笑

を抱っこし、主治医に


「せんせぇー。ごほんよんでー。えほん。」

と甘えていた。


或る時は、

談話室のソファの上に座り

饒舌だった。


必ず?1人は居る

やたら入院仲間の病名やら、バックボーンに詳しい人によると


21歳。

W大学生。

男の人が大の苦手。

解離性同一性障害。

6人彼女の中に居る。


主となるHちゃんは、病識も無く

記憶も無い様で、ここが何処なのか

ここから出して欲しいと看護師とよく言い争っていた。


私達は、常にHちゃんと呼んでいたが

時々

「違うよ。私Mよ。」

「違う。私Y子」

と訂正を受けた。


看護師さん達は、

Hちゃんが持つぬいぐるみで区別していた。

看護師さん同志がすれ違う時

「今、Mちゃんだから。」

と情報を共有していた。

流石だなぁと思った記憶が有る。


私も調子は悪いのだけれど

いかんせん

人間ウォッチング大好きなので

初めての世界は、驚きの連続だった。


解離性のメカニズムは、未だ十分に解明されていない様で

Hちゃんも、投薬は受けていないとのコトだった。(Y子さんによる情報)


病気を憂いても仕方がない。

なったものを、ならなかった時の様には出来ない。

だとしても、

病気を抱えながらも

社会生活を送れる。

そうなれば、どんなにいいだろう。


病歴が長くなると

自ら入院を懇願する人達も居る。

病院は守られていて、

看護師さん達は優しい。

3食美味しい物も食べられる。

孤独では無い。


健康な人からすると、

拘束される入院生活が苦痛だろう。

けれど

寂しい人にとっては

社会が生きにくい人にとっては

病院は安息の場所だ。


だから、先生は

ここは貴女の居場所では有りませんよ。

ここは、あくまで仮の場所ですよ。

と口にしていた。


病院を居場所にせず

社会に身を置く事に怖がらなくていい。

社会にも

孤独では無く、安息の場所が有って欲しい。

勿論、私にとっても。


Hちゃんが学生生活を満喫してくれてたらいいなぁ。

もう、卒業してたら

もっと嬉しい。


最後迄読んで頂き有難うございました。