サダさんの歌 | 凶暴なお魚と戦う極真カラテ みけねこ日記

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世界を拳で繋ぐ格闘家ママ・山本ゆきの釣り・空手・育児日記。世界大会第3位、全日本優勝5回、全アジア大会軽量級優勝、オールアメリカン無差別級優勝。現在は治療院と愛知北FMにて木曜日スマイルチャージのナビゲーターをしております。

今日は施設に入居している梅本さん(仮名90代後半 男性)の誕生日会でした。


みけマンマが企画担当だったので、一日大忙し。ケーキを用意し、プレゼントを用意し、寄せ書きを用意し。

食堂の机を並び替え、入居者さんを誘導。

梅本さんは明治生まれ。


いつも

「はよ天国からお声がかからんかのう~」







と言ってますが、極めて元気です(笑)



「このまま世界記録更新させなきゃ♪あと20年は生きられるよ~♪」

というと

「そりゃ困るのう~、天国でおかあが待ってるのに。待たせてしまっとるしの~」


と笑っているお茶目な方です。

こういう人にも、誕生日を迎えられて良かった、と思って欲しい。

入居者さんを集めて、梅本さんが産まれた時代のニュースや時代背景なんかを説明する。

そして梅本さんのスピーチ。詩吟が上手な竹内さん(仮名90代男性)が詩吟を披露すると皆大喜び。そしてカラオケ大会になりました。


ふと、そういえば、一人、まだ皆が知らない人がいる。

サダさんだ。

サダさん(仮名80代女性)はこの施設で一番介護度が高い5。

半身麻痺で寝たきりで、しかも胃ろう。


胃ろうは、体に直接チューブを入れて栄養を流し込んでいるので、経口摂取、つまり口からは何も食べられません。


サダさんは認知症もあり、意識が混濁してるときはなかなか会話が出来ないですが、話せる時は結構コミュニケーションは取れる人です。

木曜日にみけマンマが機械浴(寝たまま入るお風呂)に入れた時も嬉しそうだったし。


カラオケが盛り上がってる間に、サダさんの部屋へ。


「サダさん。元気?」

「ああ…」

「サダさん、今日はね、明治生まれの人の誕生日会をしてるんですわ。サダさんも行きましょう♪」




うんうん。



サダさんがうなずいたので、さっそくベット状になる車椅子でフロアーまで運ぶ。


「皆さん!今日は、梅本さんのために、サダさんが駆けつけてくれました!多分、皆さんお会いするのは初めてですよね♪

どうも~サダさんです!宜しくお願いします~!」


自立度の高い人ばかりの誕生会に、サダさんの姿は異様とも、痛々しくも映ったようで、皆引いていました。

寝た状態で、目もうつろ。麻痺でだらんとしている。

梅本さんの前に連れて行き


「梅本さん、お誕生日おめでとうございます♪」

みけマンマが言うと、

「こりゃどうも♪」

と梅本さんがペコリ。

「今から、みけマンマとサダさんで、梅本さんにお祝いに歌のプレゼントをしま~す♪」

みけマンマの十八番。南国土佐を後にして。




「サダさん、南国土佐を後にして、歌える?」




うんうん。




サダさん、天井を見ながらうなずく。

カラオケが始まって、みけマンマが歌い出すと、スタッフの一人が



「みて!サダさんが歌ってるよ!!」

なんと、あのサダさんが、必死に口をパクパク動かして歌っている。
何も口にすることが出来ないサダさんが一生懸命歌詞を口ずさんでいた。

みんなの口から驚きの声が漏れる。

そして、いつの間にかフロアーの入居者もスタッフも一緒になって歌っていました。

必死に歌うサダさんの姿に思わず涙が止まらない女性も。

サダさんは結局3番まで頑張って歌い切りました。

サダの唄に、みんなが色んな想いを巡らせたようです。


部屋に帰って、サダさんに

「サダさん、上手でしたよ~♪ありがとうございました」

サダさんは




うんうん。




とうなずいて、みけマンマの太ももを麻痺から免れてた右手でさすっていました。

ともすると、生きていく事の意味を失い、自分たちは見捨てられたかもしれない存在なんだろうか、と悩む高齢者も沢山います。

でも、サダさんの懸命な唄が、みんなに、生きているなら、その生を最後までしっかり全うしなければ、という前向きな方向に少しだけ向けさせてくれたように思います。

夕方、一階の事務所へ行くと、ロビーに早坂さん(仮名 80代 男性)がちょこんとソファに座っていました。

「早坂さん、こんな所でどうしましたのん?」

「おう、みけマンマか。今日の誕生日会は良かったぞ。

わしもな、なんかせなあかんなーと思ってな。

昔詩吟やってたんや。もう、詩吟なんてやろうなんて思ってなかったんやけど、やっぱりもう一度やってみようと思ってな。

今、家に電話して、昔の詩吟の本があったら持ってきてくれって言った所なんや。」

「すごい~♪今度詩吟聞かせてよ!」

「いやあ~もう、忘れたかもしれんけどなあ」

「そんなことあらへんって。うちもしばらく空手休んでいたことあったけど、やれば思い出すもん。
昔取った杵柄じゃないけど、昔体に染みついて覚えたことは、頭じゃなくて体が覚えてるから。本見れば、きっと詠えるよ。」

「そうかそうか。そうやな。きっと本見れば、また詠えるな。」

「楽しみにしてるし♪」

「おうおう♪」

久しぶりに早坂さんの笑顔を見ました。サダさんは、みんなを元気づけてくれました。


ありがとう。サダさんの唄。
                        最終更新日 2007年07月20日 19時42分57秒



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