『プレデター バッドランド』
今的なテーマと出演者の妙。面白かった!😃
『プレデター』シリーズの9作目となるこの作品では、初めてプレデターが主人公になっています。
なんか、いいですよね、最初は「悪」だったのが「主」となるって。
逆転の思想、反転の視点、多様性を深めることの重要性。
そしてエイリアン及びエイリアンvsプレデターシリーズに登場するウェイランド・ユタニ社が登場することで、シリーズ通しての世界観がしっかりと虚構世界的リアリティを持って迫ってきます。
ディズニーランド的ですが、真実味が増した物語世界は楽しいです😊
この絵面はいいのですが、このコピー二つとも無い方が良かった。
作品内容と一致してないし安っぽくて残念。
このプレデターはデクという名前の若き戦士です。
こちらの方は孤高の戦士感が表われていて崇高でさえあります。
プレデターにはプレデターの星があり、家族や一族がありました。
兄弟愛も人情も伝統もありました。
不思議なのはむっちゃ文明と科学が進んでいて、超ハイテク(というか)先端技術の武器や防具や便利グッズを持っているのに、やってることは地球の中世以前的な狩りや粛清やそんなこと。
しかしそこは映画世界では神の領域だから置いといて。
で、このデクの動きが素晴らしくかっこよくて、俳優を知りたくて公式サイトの「キャスト」の項を見たら目が点に。
キャスト エル・ファニング
この一行。
主人公に対して失礼極まりないと思うのですけど、実は公式あるあるの一つですね。
たまにあるまずい邦題・時々ある考え無しのコピー・情報量の少ない公式サイト、この三つは配給会社の謎です。
重要な登場人物でも、日本での知名度が低ければ記載する必要ないという判断なんでしょうか。
そこが知りたいから公式見てるんだよ、って思うのに。
プレデター家族から物語は始まって、お父さんプレデターが弱っちょ次男を殺そうとしているという、ショッキングな場面。
長男プレデター・クウェンが守ろうとしています。
ただの親子喧嘩じゃなくて、一族の掟によるものらしくて重い緊迫感があるのですが、とにかくいきなり何人ものプレデターがいて、しかもお父さん激怒してるしお兄さん戦うし、弟焦ってるし、顔の表情がみんなただでさえプレデター特有のあれなのに、それがシューとか牙を剥いたりとかでもう、大変怖かった。
し、正直きしょかったです。
お兄さんの弟愛は感動だったけど。
プレデター、きしょいのに、ストーリー進行と共にそうでも無くなって、佳境に入る頃にはかっこいい❣️とさえ思えてきました。
これはひとえにデク役のディミトリアス・シュスター=コロマタンギのおかげだと思います。
デクはお兄さんが身を挺して守ってくれたおかげで自分の星から脱出して別の星に着地しまして、お父さんを見返すために当地におるカリスクという危険な獣を狩って国に(星に)持ち帰ろうと決意しているようなのです。
トロフィーハンティングというにはもっと危険で悲壮感のある「狩り」だと、察しがつきます。
デクが不案内な土地でさまざまな危険に見舞われ、苦労しているときに降ったように出会うのがティアという名の女アンドロイド。
これがエル・ファニングだったので、少し驚きました。
予告編の記憶からフローレンス・ピューみたいな女優だったかな、と思いながら劇場に向かったのでしたが、まさかのエル・ファニング。
『ネオン・デーモン』『パーティで女の子に話しかけるには』『ビガイルド』『ティーンスピリット』等々、甘い可愛いさが全面に出た役が多かった彼女なので、まさかこんなボロボロになった上にドロドロになるような役で観るとは考えてませんでした。
が、この映画での彼女は今までとは別次元に(『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』でのシルヴィよりも) 到達したように思えました。素敵でした。
このエル・ファニング演じるアンドロイドが、下半身を失った上半身だけの痛々しい姿で登場して、その姿のままデクと行動を共にするようになるのは、とても現代に合った設定だと思いました。
ティアは失われた下半身と、生き別れになった同僚というか姉妹分アンドロイドのテッサ(エル・ファニング二役)を見つけるための移動にデクを利用しようとし、自らを「カリスクの居場所知ってるし、私を同行すると道具として便利😉」と売り込みます。
ヤウージャは一人で狩る、と強がる誇り高きヤウージャ族のデクですが、次から次へと出会う未知の変で危険な癖強植物・動物に悩まされていたので、うん、まあ、道具として利用したるわ、って渋々感と嫌々感を隠さずティアを連れてカリスク探しの旅に出発。
歩けないティアを最初は手で持ち、時には放り投げ、全くモノとして乱暴に扱いますが、そのうち葡萄のツルみたいなので背中に縛り付けます。
仕留めた獲物で晩御飯の際には、肉をティアに分けてあげたりするようにもなって、だんだんと相棒感が醸されるのも見てて他人ながら嬉しかった😊
アンドロイドなのだから肉が不要なのは分かってるのに、そんなことするデク。優しさが滲みます。
そうそう、この肉🍖食事の時にはもう一人(匹?頭?)の同行者ができていて、それは当地の謎の獣の子供で結構強い。
食用にする獣倒しの際には活躍してくれて、ティアは勝手にバドなんて名前をつけます。
デクは強がりの若者にありがちな「仲間なんていらねーよ、ちっ、面倒くせ」って態度ですが、バドの方はデクに懐いているのも微笑ましい。
それぞれ別の目的がありつつも、旅をしながら友情と親しさを育んでいく三名ですが、カリスクの巣か?とデクが呟いた地に辿り着いた時からまた、新たな局面に。
そこにはカリスクに襲われた(のでしたっけ)ウェイランド・ユタニ社基地跡で、瓦礫の中にティアは自分の下半身を見つけて修理に及びます(セルフで修理できるシステムが残ってました。修理マシーンを駆使してアンドロイド自身がセルフで修理する手順もよくできていて、本当にありそう)。
ここでティアが連絡したのでテッサ率いるウェイランド・ユタニ部隊がやってくる、ユタニはヤウージャのサンプルとしてデクを捉えるから逃げて、デク。とティアが告白、なんだお前俺を運搬に利用しただけだったのか、ごめんねデク😢
とここまでの仲良しムードから一転、デクはもう誰も信じない的モードに戻りそう。
こちらが気を揉むまでに二人に感情移入してました。
感情といえばティアとテッサは二人(二体)とも感情を機能の一部として与えられているのですが、柔・暖のティアと硬・冷のテッサ、それをエル・ファニングが一人で別人のように演じ分けていました。
ティアはどちらかというと今まで知ってるエル・ファニング。
テッサは「こんなエル・ファニング知らない」というくらい多分彼女の守備範囲に無かった役柄。
顔つきまで似てるけど全く違う、ように見えてましたもの。
勝手にエル・ファニング新境地と思ってしまいました。
テッサの率いる男アンドロイド武装軍団は全員白人美形でした(と思いますが有色系もいてくれてたらほっとする)。
作るなら美形、美しくない物には存在価値がない、という価値観はウェイランド・ユタニの信条のようで、テッサだったか男アンドロイドの一人だったかがそんなことを言ってました。
思想が組み込まれてるのか。人間だったら生まれながらの洗脳ですね(宗教2世みたいな)。
人種的優位主義の怖さもさらりと描かれてます。タイムリー。
ここからカリスク対デク、それを応援するティア、の戦闘(デク苦戦。カリスクって真っ二つに切ってもくっついて死なないんだもの)があって、
さらにはウェイランド・ユタニに拘束されたりと戦いが続くのと並行して、各人物の気持ちの変遷が現れます。
ティアはデクと行動を共にしたことで、これまでの社蓄アンドロイド思考から解かれ、社是(というか)や営業目的にも疑問を抱くように。
そう、思い出しました。
彼女自身もデクとの旅で豊かな知見を得たことに喜びを感じていて、それをテッサと共有しようとするのですが、そんなもん会社の任務遂行には不要、と冷たく言われて撃沈。
このあたりのティアの「これまで信じていた最愛の相手に裏切られた」という、驚きと悲しみの混じった表情。
見ていて心が痛くなりました。
最初はそれって恋人?男なの?って思えるくらい嬉しげに、テッサのことを語っていたティアだったのに。
ここからラストまでの山場は、新しい価値観と縛られない自由が基軸になっていて、爽快さと愛に溢れていました。
人間に尽くすために作られたと信じていたけど、信じる相手は自分で選ぶのだと気づいたティア。
倒すのが強さだと信じていたけど、護ることが真の強さであると知ったデク。
地球に生息する狼で最も強いのは、群れを護るアルファという地位のボスなのだと、ティアに教えれれてもピンときてなかったデクだったのに、
危機に晒されたティアを見捨てられずに戻った際にティアに理由を聞かれて「狼だから」と言う場面は、大変かっこいい。
もう1場面かっこよかったのは、「俺には自分の家族がいる」というセリフを口にする場面。
ま、ちょっと、家族で殺し合うのもままある種族、と言うヤウージャの設定もどうかとは思うのですが、故郷の星で父と相対した時に放つこのセリフ。
その場にはティアと共にちょっと大きく成長したバドがいます。
信頼と愛と友情で結ばれている仲間が家族なんだと言い切った彼に感動しました。
また、そそれはティアとバドと三人で育んだ絆のおかげであるので、そこにも胸が熱く😭
三人とか表現してしまいましたけど、人間の出てこない映画でした。新鮮。
ラスト、次回作をほのめかされていたので楽しみです😌

