予告編から気になっていた『満江紅/マンジャンホン』

先週観ました。

めくるめく歴史大作で見応えたっぷり、むちゃくちゃ良かったです。


ポスターはこれ


来場者プレゼントでポストカードいただきました😃

右がポストカード、左はパンフレットの裏表紙




中国では2023年に公開されたようなのですが、日本では2025年。

このタイムラグは何なのかな。

私も2023年に観たかった(良い映画は早く観たい😊)。


チャン・イーモウ監督作品。

『紅いコーリャン』『菊豆』『紅夢』の頃からするとスケールがどどどどんと大きくなっていますね。

しかし炙り出される心理描写や、事象の陰にあって心に深く沈んでいる(そして消えない)信念が描かれていることは

この作品にも共通しています。


12世紀の中国、南宋の時代で、英雄・岳飛が処刑されて5年後に起こる事ごとの物語り。

岳飛、いたなぁ。

北方謙三氏が書いてらっしゃるなあ。

という認識レベルの私でしたが、疎くても無問題に楽しめます(良い映画の証拠)。


物語の中心となる人物が二人いて、張大という下級兵士と孫均という若き武将。

この二人が実に良い!格好良い!(ルックスに関係なく存在が)。



連携するにしても半目するにしてもギリギリの真剣みが怖いくらいの迫力で、ぞくぞくします。

剣アクションあり歴史大作映画の醍醐味の一つですね。


この二人の上司レベルの官僚(かな)二人も個性と癖強さがナイス。

張大&孫均と、この上役二人との駆け引きもスリルに輪をかけます。

お、二人と二人。2とかペアつながり?

もう一つ「2」がありまして、悪役(にされている)秦檜という宰相に仕える侍女も二人組。

藍玉と緑珠という若くてほっそり、クールでしなやかな美女コンビ。

この侍女コンビと秦檜の会話は全て手話で行われるのですが、これがまた秘密めいているし大変美しいのです。


さらに妓女や下級兵士仲間などがどんどん出てきて色々が繰り広げられ、それぞれに忙しいくらいドラマがあるのですが、

実は!もっと大きなものがあったんだ!ということに後半部分で気付かされます。

その気付かされ方もドラマチックなんですよ、もう。

バーフバリ(インド映画)ばりの大時代歴史ドラマ映画固有の表現力で。


命を賭けて作戦に参加した人々の求めていたものは、利でも欲でもなく、祖国とその英雄(岳飛)を思う気持ちであった、

というのが、命を本当に賭けていたがために志半ばで散っていった人々の数が増え切ったところ、というのがまた。

映画鑑賞的に様式美系の感動を存分に味わって、胸と目頭が熱くなるポイントでした。


目に入るものも、登場人物の心の動きも全てが美しい。


孫均と張大は叔父・甥の間柄だそうで、劇中、張大は孫均に向かってしきりに

叔父貴叔父貴と呼びかけるのですが、どうみても張大の方がおじさんなのが謎でした。

孫均とお姉さんがうんと歳の離れたきょうだいだったのでしょうか。


孫均を演じているイー・ヤンチェンシーは『少年の君』で不良少年だった人でした。

え、あの男の子がこんな武将に育ったのね、というのもまた別の感動ポイントでした。

どちらの作品でも素晴らしかった。

これからも観たい俳優さんです。

そんな若手に巡り会えて嬉しい。


中国の映画を観ていていつも思うのは、こんなに同じ作品に感動できるもの同士なら、

仲良くできるはずだよね、ということです。

特に『象は静かに座っている』を観た時に思いました。

お若いフー・ボー監督はこの1本を残されて世を去られましたが、今でも無念に思われてなりません。


映画はその作品の内容だけでなく、その周りのあれこれについても深く考えさせてくれます。

映画、ありがとう。