ブラックバッグ。

原題も同じBlack Bag。

「オーシャンズシリーズの」スティーブン・ソダーバーグが監督で

「ミッション・インポッシブルの」デビッド・コープ脚本、ということで、

何やらスタイリッシュでテンポが良く、売れる映画、という感じがしますね。



その通りにオシャレすぎて、何やら良くわからんまま終わってしまったなって思いました。

瀟洒なお宅のオシャレなホームパーティから始まって、オシャレな夫婦の粋な会話で終わる、

オシャレジェットコースターに乗せられたようにお話が進んで、気がついたら終着点。

良くわかんなくてもついて行けないことはなく(そこが脚本の妙なのでしょうか)、目を見開いたまま、

オシャレな夢を見ていたかのようでした。

良くわからんかった理由には、出てくる組織名やキーワードの数々も、聞きなれないものばかりだった、

というのも大きいです。


イギリス(が舞台です)のスパイったらMI6(ジェームズ・ボンド)かSIS(ロレンスfromエロイカ)だと思ってたし。

SISは会話の中で出て来たのですが、それでさえ「SIS。なんだっけ」と勢いで知らないもののように聞こえてしまいましたから。


主人公含めて重要登場人物たちが所属しているのはNSCS。

国家サイバーセキュリティセンターの略ということですが、どちらも私は知りませんでした。

映画でお目にかかったこともなかったと思います。

タイトルになってる「ブラックバッグ」、主要人物たちの軽い会話の中では「極秘任務」の隠語らしいのですが、

これも聞いたことなかった。


マイケル・ファスベンダー演じる主人公ジョージはNSCSの諜報員で、「セヴェルス」を盗んだ犯人を探すのが任務、

その犯人探しのために仕掛ける罠、相手が親しい同僚達や愛する妻でドキドキ、スリルとサスペンス。

そんなストーリー。

何気にセヴェルスと書きましたが、映画でも「セヴェルス」はしれっと出てきます。

これはプログラムらしく、これが不正に使われると世界が大変なことになるのだそうです。

なんか試験管に入ったウィルスや、マイクロチップに記録された情報、みたいな実体が出てこない分、

洗練されててオシャレ度と良くわかんない度上げてる。


ただただ、美しいケイト・ブランシェットの腕ききスパイ行動を見ながら、

彼女の美しいイギリス英語発音にうっとりしているうちに色々進むのです。

それはそれでとても心地よいものでした。


はっきりわかったこともありました。

マイケル・ファスベンダーが軽くて若かったです。この作品では。

一人の時や妻のキャスリン役のケイト・ブランシェット以外との絡みではなんとかなってる

(というと申し訳ないな、特に気にならない、にします)のですが、

ケイト・ブランシェットの存在感がすごかった。

性別や年齢をも超越するような。

なにしろあのター(TAR/ター 2022)ですもんね、実年齢でもファスベンダーが年下だけど、

それだけでない何か重みと渋みがもっとあれば良かった!

単体で見たら素敵だったんですけど。

渋スタイリッシュな装いも喋り方も。


どれくらい渋くて重かったら良かったのかというと、「裏切りのサーカス」(2011年)の

ゲイリー・オールドマン演じるスマイリーくらいならもっと好きになってた😍

だって、ブラックバッグ・ジョージ・ファスベンダーの黒縁眼鏡からして、

裏切りのサーカス・スマイリー・オールドマンが想起されるようなだったし、余計に。


ピアース・ブロスナンが一人、オシャレに棹さしてくれてました。

非オシャレでちょっぴり老害な上司の役で、貴重でした。


色々味わえたブラックバッグ、ぜひおすすめしたいです。

一味違ったスパイものでした。