実家で飼っていた犬のポチは両親の散歩コースの公園に捨てられていた2匹の子犬の内の1匹だった。
子犬が捨てられているのを見た父はどうしても拾って帰る!と。
実は母は大の動物嫌いで(私は大好き) テレビで画面に動物が出てくると ご飯がまずくなるとチャンネルを回すほどだったのだけれど 丁度 私が結婚して寂しかった時期だったので母も渋々承知したようです。
そして2匹の内のどちらを選ぶか・・・父は皮膚病で足先の毛が剥げてしまっている方を選んだ。
母は驚いて「きれいな方にすればいいじゃない!」と抗議したのだけれど 父は
「きれいで可愛い方は誰かに拾われるだろ?でも 皮膚病で汚いのは俺が拾ってやらなきや誰にも拾われないぞ。」
父はそういう人だった。
子犬を家に連れて帰った父は 毎日 薬を塗ってやり 私が初めて見た時には 皮膚病はすっかり治り フワッフワの可愛い子犬になっていた。
一方 母は 毎日 私に電話で愚痴る愚痴る。
「パパったら 夜 犬を玄関に入れてるのよ!」
「うん 小さいから外じゃ可哀そうだよね。」
「犬がね 私が近くを通ると こっちを見るのよっ!」
「うん そりゃ見るだろうね。」
「犬がね 夜中にクンクン鳴くのよ~~~。」
「うん 子犬だからねぇ。」
「私が夜中にトイレに行こうとするとクンクン言って こっちに来ようとするのよ~。」
「繋がれてるんだから大丈夫でしょ。」
「ダメよ~!夜中にトイレに行けなくなっちゃったわよ~~~。」
「だから 繋がれてるんだから大丈夫だってば。」
「でも 犬はやなのよ~~~。」
とまぁ 半べそ状態。 やれやれ・・・
ところが しばらくして実家に行ってみると
大きくなった犬の首に抱き着いて
「ポチ~~~~!」と犬にスリスリしている母がいた。
「え~~~~!? お母さん それ犬だよ? 犬に触れるの?」
「ん~~~、ポチは特別ぅ~~~!」スリスリスリ
・・・人間 こんなに変わるもんかね?
この人 本当に私の母親? 誰か違う人なんじゃない?
「飼ってみたら 犬も可愛いわね~。あんたにも飼ってあげれば良かったね。」
「そうでしょう?飼ったら可愛いでしょ?私も飼いたかったよ。」
その後も母のポチへの可愛がりっぷりを見るたびに (うそでしょ~!?) と ポカンと口が開いちゃったり 目がテンになっちゃったりする私なのでした。
でも ポチが死んだ後 もう一度 犬を飼う話があったのですが 母の
「ポチ以外の犬はイヤ!」 の一言で 犬を飼う話は無くなった。
その後 母が入った施設にも 犬と触れ合う というイベントの日もあったのですが 母は一度も出席しなかったみたい。
母にとって ポチは本当に特別な犬だったんだな。