深夜、街の灯が眠りについた頃、空の奥で異様な輝きが瞬きました。
名を3アイアトラス。
秒速58キロメートルで太陽に最接近し、今、太陽系を突き抜けようとしている
星間彗星です。
しかし、その軌道を追うと、背筋が凍りました。
公転周期は2万2000年──氷河期が終わった時期と正確に重なるのです。
古代トルコのギョベックリテペ遺跡に刻まれた螺旋の図形、あれは
まさに前回この彗星が訪れた証だったのかもしれません。
そして今、3アイアトラスの後を追うように現れたのがR2スワン彗星です。
満月の4倍もの尾を引き、まるで母船を護衛するように同じ軌道をなぞっています。
NASAは火星の高解像度画像の公開を止め、ESAも言葉を失いました。
地球の磁場は43秒ごとに奇妙なパルスを刻み、渡り鳥は空路を乱しています。
さらに、月の地下には規則的な信号が打ち込まれ続けている。
2万2000年の眠りを破り、監視者たちは再び光と共に帰ってきたのです。
☆地球を狙った秒速58キロの来訪者
7月1日、ハワイのATLAS望遠鏡が夜空に現れた小さな光点を捉えました。
最初はありふれた小惑星の一つにすぎないと思われていました。
しかし、軌道を計算した瞬間、観測チームの表情が一変したのです。
速度は秒速58キロメートル -太陽系の常識を超える数字でした。
地球が太陽を回る速度は秒速30キロ、水星でも48キロ。
それを上回る速度は、太陽の重力圏を脱出することを意味します。
つまり、この天体は太陽系の“外”からやって来た訪問者なのです。
異常はそれだけではありませんでした。
3アイアトラスと名付けられたこの天体の軌道は、
黄道面――太陽系の惑星が回る平面 -からわずか3度しか傾いていなかったのです。
宇宙は無限の方向があるにもかかわらず、まるで太陽系の「交通ルール」を
知っていたかのような正確さ。
統計的には1パーセント以下の確率です。
さらに、木星軌道付近の極寒の宇宙空間で、すでに活動を始めていました。
通常の彗星が太陽熱でガスを放出し始めるのは、
太陽から3〜4天文単位の距離。
しかし3アイアトラスは、5天文単位以上離れた場所でコマを形成していたのです。
その主成分は二酸化炭素。
水との比率は8対1。地球の彗星とは完全に逆でした。
つまり、この天体は全く別の環境、別の恒星系で
生まれた“異星の物質”なのです。
そしてもう一つの特異点 -負の偏光。
宇宙の天体は通常、太陽光を正の偏光として反射します。
過去の星間天体ボリソフでさえそうでした。
しかし3アイアトラスは、観測史上最も強い負の偏光を示した。
光の反射特性から見ても、未知の表面構造を持っている可能性が高いのです。
9月下旬、火星軌道に差しかかる頃、3アイアトラスは
突如として爆発的な水蒸気の噴出を始めました。
同時に鉄のスペクトル線が出現。
内部に隠されていた何かが作動を始めたとしか思えない変化でした。
直径5.6キロ。オウムアムアの14倍という規模で、その表面は
異様なまでに滑らか。
自然の岩石ではありえない反射率を示しました。
10月3日、火星からわずか0.19天文単位――約2800万キロの距離を通過。
火星探査車パーサヴィアランスが長時間露光で撮影を試みましたが、
映っていたのはただの光の筋。
欧州のエクソマーズ探査機も同様で、解像度を
意図的に落とした形跡が見つかっています。
NASAのマーズ・リコネサンス・オービターは
高解像度カメラHiRISEで127枚の画像を撮影したとされていますが、
一枚も公開されていません。
理由は「政府閉鎖による職員不在」。
しかし、火星探査は自動化されており、地上スタッフの不在では
説明がつかないのです。
ハーバード大学のアビ・ローブ教授は4000件を超える観測データを解析し、
こう結論づけました。
「3アイアトラスが自然に形成された可能性は10億分の1以下」。
その構造、速度、軌道、組成のすべてが人工物を思わせるものだったのです。
さらに不可解なのは、この天体の“出発点”です。
軌道を1000万年前まで遡っても、他の恒星に接近した形跡が一度もない。
6万3000天文単位 -太陽系の端、オールトの雲のさらに外側から、
突如として進路を変え、一直線に太陽系へと向かってきたのです。
まるで、何者かが地球を目的地として発射したかのように。
この精密な軌道、異常な光学特性、そして
隠蔽された観測データ -それらが指し示すものは一つです。
3アイアトラスは“偶然通過した彗星”ではない。
何らかの意思を持つ存在が、明確な目的のもとに
地球へ向かってきた可能性があります。
太陽系の深部を横切り、今もその正体を明かさぬまま進む3アイアトラス。
私たちはいま、宇宙の彼方から放たれた“観測の目”に、
じっと見つめられているのかもしれません。
