地球温暖化の影響でオーストラリア大陸では気温が上がり、山火事炎や洪水など、自然災害のリスクが高まっている。

 

特に大陸内陸ではかつては水が豊富だった川も干上がり、土地や川などと近い生活をしてきた先住民アボリジニの人々をめぐる環境は相当厳しくなっている。

 

今週前半は、シドニーから西1000キロに位置する内陸の小さな町にいた。シドニーでは夏でもめったに30度を超えることはないのに、連日40度まで上がり、雨量が少なくカラカラに乾ききった土地が広がる。

 

 

昨年から同じ大学の先住民アボリジニの歴史を専攻する研究グループのプロジェクトをお手伝いしている。そのプロジェクトでアボリジニの人たち向けのワークショップがあって、スピーカーとして3日ほどこの小さい町に滞在した。

 

オーストラリアのアボリジニの歴史に少しふれると、1788年にオーストラリアがイギリスの植民地となってから、彼らの苦悩の歴史が始まった。虐殺、奪略、強制労働、差別等々が当然のように行われ、土地に根付いたアボリジニのコミュニティや文化を破壊した。

 

現在のオーストラリア政府は、過去に奪略した政府の土地をアボリジニのコミュニティに返還している。ニューサウスウェールズ州では1983年にアボリジニコミュニティへの土地権の移行が法制化された。

 

ところがニューサウスウェールズ州内陸部で返還される土地の多くは、辺境にあり、やせて農業等への利用に適さない。これらの土地をアボリジニの人たちが経済的にも活かすためにはどうしたらいいのか??

 

そこで、これらの土地を再生エネルギー利用に活かすとしたらについて検討するためのワークショップとなった。再生エネルギーの専門家、アボリジニ・コミュニティと働く専門家が集まって、アボリジニ・コミュニティの代表者へいろいろな情報を提供したり、議論の聞けた有意義な数日だった。

 

日本では投資詐欺事件などでネガティブに考えられがちな再生エネルギーだが、オーストラリアのような広大な土地がありあまる太陽光晴れ晴れのめちゃくちゃ強い国にとっては非常に大きな可能性を秘めている。

 

オーストラリアはそもそも天然資源国であり、日本はオーストラリアからの最大の石炭輸入国。天然資源の採掘も多くのアボリジニの土地の破壊と犠牲の上に行われてきた。この負の連鎖は終わらせなくてはならない。オーストラリアも世界の潮流に乗って、石炭エネルギーからの脱却を目指す方向に進みだした。

 

これに加えて、オーストラリア内陸部のコミュニティーでは、電線などの電力インフラさえおぼつかかず、エネルギー供給が不安定。発電に使うディーゼル価格も高騰して大変なことになっている。地域で生み出せる太陽光などの再生エネルギーは、辺境地に住むコミュニティーの生活向上を図る意味でも重要になってくると思う電球

 

写真はマレー川。年初にこのあたりで洪水があった。

 

 

マレー川はオーストラリア内陸を流れる最長の河川で、ニューサウスウェールズ州とヴィクトリア州の州境となっている。1950年代の灌漑事業のおかげで周辺地域は農業地帯として発展。しかし農業水をめぐる利害関係は複雑で、近年の干ばつ等々による水不足・水質問題などの影響で、周辺コミュニティ(アボリジニコミュニティーも含む)は厳しい状況に陥っている。