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本能寺の変に関する出版物は無数にあります。
雑誌などでは定期的に特集が組まれ、選ぶのが難しいほどたくさんの
書籍が出版されています。
テレビでも信長や本能寺の変に関する番組が次から次へと
作られ流されています。
光秀や信長、本能寺について調べ始めて数年。
結論。「テレビの歴史番組は観なくてかまわない。」
というより観てはいけない。
たまにまともな学者が出演されていることがありますが、ほとんどは
小説家や自称歴史に詳しいタレントが、根拠に乏しい自説を
しゃべるだけです。
雑誌もどれもこれも同じ内容の焼き直しばかりで、お金を出して
買うほどの価値のあるものはほとんどありません。
(これって新選組関連でも同じことが言えます)
資料集や一次史料以外の一般向けの研究書は、様々な分野、
視点から書かれた書籍が出ています。
信長や織豊期の研究書や関連書籍は無数にあり、それより数は
劣るものの、光秀研究書も何冊も出ています。
「本能寺の変」研究に的を絞った書籍でお勧めのものがいくつも
ありますが、その中でわたしが独善的に選び抜いて、これさえ
読んでおけばとりあえず大丈夫!という書籍をご紹介します。
著:桐野作人 『真説 本能寺』 『だれが信長を殺したのか』
著:樋口晴彦 『本能寺の変 ー光秀の野望と勝算ー』
わたしが光秀冤罪説を提唱しようとしていることは、拙ブログを
お読みいただいている方はご存じかと思います。
今回挙げた三冊はいずれも光秀冤罪説は唱えておらず、定説通り
光秀がおこした謀反として本能寺の変を捉えています。
~説という結論にこだわらず、この三冊には歴史研究に対する
基本的な姿勢、視点、史料の読み方、調査方法などで得るところが
多くありました。
桐野氏はもう二十年以上も前、「朝廷黒幕説」を提唱し、その後
その自説を打ち消し、「四国説」寄りにシフトしておられるようです。
一度公(おおやけ)にした自説を間違いだったと否定し、新たな説を
立てるというのは、自説の矛盾点を突かれても無視する人もいる中、
潔い立派な態度で尊敬に値すると思います。
『真説本能寺』『誰が信長を~』の二冊には、本能寺の変研究において
必要な基本史料や、あまり知られていない史料が
多く紹介されています。
初心者向けよりももう一歩踏み込んだ内容ですので、まったくの
初心者には少し難解かもしれませんが、この二冊で本能寺に至る
おおまかな流れが理解できます。
信長と光秀を取り囲む五畿内の情勢、そして東国、西国、
九州に広がる日本全国の情勢の概略が説明され、同時に
本能寺の変に関すると思われる人物や出来事について、多くの
史料を挙げながらその中身が注意深く考察されています。
『真説本能寺』が出版されたのは2001年、『誰が信長を~』が2007年、
この後四国説に関する新たな史料が見つかったりしていますが、
いずれの二冊も現在においても変わらずもっとも重要な書籍だと
わたしは評価しています。
結論がどうこうではなく、この二冊には本能寺の変の
真相解明において、重要なヒントがいくつも隠されて
いるような気がします。
樋口氏の『本能寺の変』は、小説などで創られた神経質で保守的な
光秀像の否定、世にはびこる陰謀説の否定、それから本能寺の変が
起きた時点での情勢が解説されていて、桐野氏の二冊を補完できる
ような内容が含まれています。
桐野氏と樋口氏のこれらの著作はいずれも自説の押し売りではなく、
冷静に史料を分析した結果が示されています。
この数年、専門家も在野も含めた研究者の著作をそれなりに多く
読んできたつもりですが、本能寺の変という一点に絞った研究書の
中では、この三冊、特に桐野氏の著作を強くおすすめします。
極端に言えば、この三冊以外は読まなくていいと言っても
過言ではありません。
もちろん専門家である学者の方々の本にはそれぞれ学ぶところが
多くありました。その中から究極に絞り込んで選ぶとしたら、
この三つになりました。
必要な情報のほとんどはこの三冊、そして太田牛一の『信長公記』に
含まれているのかもしれません。
繰り返しますが、桐野説や樋口説をそのまま信じていると
いうのではなく、謎を解くために必要な基本情報を得るのに
これらの本が重要だというわけです。
自説に導くために都合の良い史料の取り上げ方をせず、史料精査の
仕方をわかりやすく学べる点でおすすめします。
『信長公記』に関してもその内容がすべて正しいというのではなく、
あの本は実はただの伝記ではなく、その中に謎を解くヒントが
散りばめられた暗号表のような気がしてなりません。
『信長公記』の本能寺の変の箇所とそれ以外の箇所とのあの差違は、
牛一がわたしたちにあえて遺した、謎を解く仕掛けなのでは
ないのか?と、かなり本気で考えています。