伊庭八郎が暴れた? | 始めのはじめは一(ハジメ)なり

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先祖・家系調査の具体的な方法をご紹介します。
大好きな新選組隊士・斎藤一を調べていたら
自分の先祖に関係があった!
そして知った先祖とは、なんと明智光秀だった!
そこから広がる史実と閨閥の世界。

このブログを書くために毎日本を読んでいます。
新しく読む本や、かつて読んだものを読み直したり

もしているのですが、一度読んだ本でも読み返して

みると、見落としていたことや、
あらためて気がつくことがとても多いのです。


そんなことの一つで、ちょっと気になる記述が

ありました。





三宅秀(復一)を主人公にした鈴木明著『維新前夜』

という本があります。
いちおう小説形式ですが、ノンフィクションといっても

いいくらいの、池田遣欧使節団についてよく調べて

ある本です。



この本を数年ぶりに読み返してみると、伊庭八郎に

ついて書かれた箇所があることに気がつきました。






伊庭八郎という人は幕末ファンにはよく知られた

幕臣です。
心形刀流伊庭道場のおぼっちゃまとして生まれ、
戊辰の時には幕府奥詰から改編された遊撃隊の

一員として戦い、そのさなか片腕を斬られながらも

戦い続け、浮世絵に描かれ、隻腕の美剣士として

大人気になった人です。
最後は榎本軍に加わり箱館で亡くなりました。



多くの人に愛され、おいしいものが大好きで、
将軍家茂の護衛で上洛した時には、
一部ファンの間で「幕末版るるぶ」と云われる

食べ歩き日記を残したというオチャメな人

でもあります。
幕末青春映画の名作「狼よ落日を斬れ」 では

近藤正臣さまがイバハチを素敵に演じて

おられました。




その伊庭ちゃんが『維新前夜』に登場する場面が

あります。




三宅秀が立石トミー斧次郎の立石塾に住み込みで

英語を習っていた頃、立石と一緒に

万延元年遣米使節団に加わった成瀬善四郎の

家に、立石と共に招かれたことがありました。
そこに同じく客として招かれていた伊庭八郎が

酔っ払い「立石のような英語をやっているヤツなど

けしからんから斬ってやる!」と言い出しました。


あわてた復一は実家に帰り、ウチにあった

ピストールを持ちだし成瀬家に引き返しました。


ピストールはもちろんご禁制ですが、復一の父・

艮斎は、外科道具を鍛冶屋に作らせていた人で、

他にも兵器や科学製品なども作らせていて、

実弾も作成していたのです。



そのピストールを持ち出したはいいものの、復一は

実戦で使ったことなどないのでどうして

いいかわからず、あんな恐かったことはないと
あとで語っていたということです。






ところが『維新前夜』を書く参考資料として使われた
『文久航海記』 には、成瀬善四郎宅で酔い客が

暴れた話は載っているのですが、それは「或剣客」と

書かれているだけであって伊庭八郎という名前は

一言も出てこないのです。





『維新前夜』は小説という形で史実を描いているもの

ですが、『文久航海記』は小説ではなく、三宅秀が

残した日記や資料類を紹介している史実作品です。
『文久航海記』に伊庭八郎の名前などまったく出て

いないのに、なぜ『維新前夜』には酔って暴れた客が

伊庭八郎だと書かれているのでしょうか。
伊庭ちゃんが暴れたというのは『維新前夜』の
著者である鈴木氏の創作なのでしょうか。
鈴木氏がすでに亡くなっているので、今となっては

謎が残るばかりです。



ふと思ったのですが、ひょっとして『文久航海記』の
もとになった三宅秀の日記には伊庭八郎の名が
記されているのでしょうか。



三宅秀は几帳面な正確だったらしく、膨大な量の

日記が残されています。
鈴木氏は『維新前夜』を書く前に三宅秀末裔の家を
訪れて、秀の資料を目にされたそうです。



現在『三宅秀日記』は三宅家に残っていた他の

資料類とともに東京大学医学部博物館へ寄贈され

「三宅コレクション」として保管、研究されています。

コレクションの一部は一般公開もされています。
しかし日記は一部のみ書籍化されていてわたしも
読みましたが、大部分は未公開で眼にすることは

できません。
いつの日かそのすべてを見ることができれば

いいのですが、まずムリかなぁ。




で、伊庭ちゃんはいったい無実なの?ちがうの?あせる









※4月6日追記


大正15年、維新史料編纂会講話会での

三宅秀(復一)の講話記録を読んでみると、

成瀬家で酔っ払った客の話をしていて、

「或剣客」となっていました。


立石を斬ってやる!といきまいたのは

伊庭ちゃんではなかったのかな。

だったらなぜ鈴木氏は伊庭ちゃんだと

書いたんだろうか…。


やっぱり謎は残るのでした。











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