
【筋肉】
平均的な体重の人の頭の重さは約5㎏程で、片腕も同じぐらいの重さがあり、片足は13㎏もあります。
こんな重いものが乗っかってたり、ぶら下がってたりする私達の身体ではありますが、普段まったくその重さを感じないのは、それらの重さを肩、おしり、背中の大きな「筋肉」がそれぞれ支えているからです。
重い物を手で運ぶより、リュックに入れて肩から担いで運ぶ方が楽なのと一緒です。
重量のあるパーツを毎日持ち運んでる私達は、特に運動しなくても必要な筋肉が必要なだけ鍛えられています。
しかし、その持ち運びが出来なくなってしまうと、たちまち弱ってしまうのが「筋肉」です。
例えば無重力空間での宇宙飛行士は、10日程の滞在で筋肉量の20%を失ってしまうと言われています。
「筋肉」は、たった何週間か使わないだけで、あっさりなくなってしまうものなのです。
筋肉には「骨格筋」「心筋」「平滑筋(へいかつきん)」の3種類があります。
骨格筋は筋肉の大部分を占め、その数は600以上にのぼります。
心筋は心臓のポンプ運動、平滑筋は消化管や血管などの「形を変える」臓器を形成しています。
「随意筋(ずいいきん)」とは自分の意思で動かせる筋肉で、骨格筋はこれにあたります。
心筋や平滑筋は自分の意思では動かせない「不随意筋」です。
身体の中で最も大きな筋肉は、おしりの「大殿筋(だいでんきん)」で、最も小さな筋肉は耳の中にある「耳小骨筋(じしょうこつきん)」です。
大殿筋の発達は人間特有のもので、直立二足歩行によって大きくなっていったのではないかと考えられています。
筋肉は、そこから水分を取り除くと約80%がタンパク質で出来ており、収縮する性質を持った細胞が束になって、筋肉を構成しています。
筋肉の端には「腱」が付いており、その多くは関節を越えて付いています。
骨格筋の多くは骨の表と裏の両面にくっついていて、それが「ペア」になって身体を動かしています。
例えば上腕二頭筋と上腕三頭筋、大腿四頭筋と大腿二頭筋といったペアがそうです。
動かそうとする側の筋肉(主動筋)が収縮し、その反対側の筋肉(拮抗筋)が伸びる事によって動けるのです。
例えば脚を持ち上げるには「大殿筋」や「大腿四頭筋」の筋肉が緩み、その裏側の「大腿二頭筋(ハムストリングス)」が縮む事によって、股関節と膝関節が曲げられて脚が上がります。
カカトを持ち上げるのには「腓腹筋(ひふくきん)」とその奥に隠れている「ヒラメ筋」が協力しています。
空手の「まわし蹴り」で説明すると「ハムストリングス」が収縮して膝が曲がり、「大殿筋」と「腸腰筋」が協力して膝を外に持ち上げ、「大腿四頭筋」の収縮で膝を伸ばして蹴るという一連の動きになります。
この「表」と「裏」のバランスが動きに影響してくるのです。
「動き」には「屈曲、伸展、外転、内転、回内、回外、挙上、下制、内反、外反、背屈、底屈」などがあります。空手で言うと正拳突きは「回内」で、引き手をとる動きが「回外」です。
相手の前足を足裏ですくう動きが「内反」で、横蹴りで足裏を相手に向ける動きが「外反」です。
また、カカトで蹴る前蹴りは「背屈」で、背足で蹴るまわし蹴りが「底屈」です。
「手」は指や手の平のひとつひとつに付いてる筋肉と、腕から繋がっている筋肉とがあります。
面積のわりに多くの骨や筋肉、靭帯で埋め尽くされた「手」は窮屈すぎて、その多くの動きは離れた「腕」から操作しているそうです。
拳を握ると腕が突っ張るのは、その為です。
ちなみに親指をグッと立てるだけの単純な動きにも、10の筋肉が関わっているそうです。
「足」の構造も基本的には手と同じですが、物を掴まなくなった私達の足の指は、手ほどの複雑さは必要なくなったようです。
もっぱら二足歩行に使われてきた足は、他の類人猿に比べて指が短くなった分、足の甲や足裏が発達したと言われています。
「まばたき」「目のレンズのピントを合わせる」「発音」「味」「血管の収縮」「熱を作る」「エネルギーを貯蔵する」など、その役目はレパートリーに富んでいる筋肉ですが、それを構成している「筋繊維」は非常に細く(0.01㎜~0.15㎜)、軽い運動でも傷つき切れてしまう性質があります。
切れてしまった筋繊維はタンパク質などによって、すぐに補修され(筋肉痛はこの段階で起こる)、それを繰り返すうちにだんだんと太くなっていき(増えはしない)、筋肉がついた状態になるのです。
ただし、せっかく運動しても筋肉の材料となる「タンパク質」が足りてなければ、あまり太くならないし、回復も遅れます。
そして何より大事なのは、運動後の休息です(程度によりますが、その目安は24時間から72時間程度)。
瞬発系アスリートが必要な一日のタンパク質の量は、体重60㎏で108gほどだと言われています。
タンパク質はたくさん摂ればいいってものでもなく、必要量以上摂っても、その余分なタンパク質は脂肪になってエネルギーに使われたり、腎臓や肝臓の負担も増えるので、体重を考えて摂らなければなりません。
筋繊維は収縮の速さによって、大きくふたつに分けられます。
強く速く収縮する「白筋(速筋)」と、遅い収縮の「赤筋(遅筋)」です。
更に白筋の中には、そのふたつの要素を合わせ持つ「FUG繊維」と言われる万能型があります。
瞬発系アスリートは白筋の割合が多く、持久系アスリートは赤筋の割合が多いとされています。
魚の身も赤身と白身がありますが、それも筋繊維の違いによるもので、その泳ぎ方にもそれぞれの特性が出ていますよね。
空手は全身を使うので、稽古だけでもじゅうぶん必要な筋肉は鍛えられますが、コンタクトスポーツである以上、多少「ウェイトトレーニング」も取り入れた方がいいですね。
そこで気をつけなければいけないのは、必要のない場所に筋肉を付けても「ただの重り」にしかならないという事です。
「力」は比較的簡単につきますが、「余分な力」を抜くのは難しいものです。
重りを用いたウェイトトレーニングは骨が発達する成長期ははずし、成長の止まる高校生後半くらいからがいいと思います。
ちなみにスポーツでは、4才頃からは「柔軟性」、7才頃からは「動作の正確性」、9才頃から「持久力」、12才頃から「筋力」、そして15才前ぐらいからは「スピード」が必要になってくると言われています。