【心臓】
上の図は「ハート・プラスマーク」です。
心臓や呼吸機能、腎臓など一見わかりにくい障害を持っている人が安全に社会生活を営む為の大切な「印」です。
街中では最近よく見かけます。

「ハートマーク」は14世紀頃のイタリア北部の絵画の中に、どこからともなく現れたそうです。
そのきっかけは今となっては謎ですが「心」を表すシンボルとして広く世界中の人々の間に浸透しています。
しかし実際のところ、握り拳のようなグロテスクな心臓に人間の感情はありません。
ひたすらよそ見もせずに拍動して、全身に血液をめぐらすのが心臓にとっての唯一の仕事だからです。
誰かの計算によれば、心臓の一生涯におけるポンプ運動は、1トンの重さの物体を高さ240キロまで持ち上げるほどの圧力なのだそうです!(
大動脈が切断されると3メートルも血が吹き上がると言われるのも納得です)

心臓は4つの部屋に別れていて、血液は心房から入り、心室から出ていきます。
心臓から押し出された血液は動脈を通り、足の末端まで流れ、静脈を通って心臓に戻ってきます。
戻りは重力に逆らわなければならないので、ふくらはぎの筋肉(第2の心臓)の収縮などに助けられながら戻って行きます。
そして血液が下に流れ落ちないように静脈には所々、逆流防止の為の「弁」が付いているのです。

心臓から押し出された血液は50秒程で全身を一周します。
送り出される血液のうち15パーセントは脳が利用し、最大量の20パーセントは腎臓へと向かいます(ろ過する為)。

心臓のポンプ機能は「収縮(血液が押し出される)」と「拡張(血液がたまる)」ですが、このふたつの差が「血圧」になります。
血圧の大きい方の数値が「収縮」した時で、小さい方の数値が「拡張」した時です。
血圧は真夜中に最も下がる傾向があり、夜中に起こりやすいと言われている「心臓発作」と何かしら関係があるのではと考えられています。
ちなみに健康な人は肩で計った血圧と足首で計った血圧の差が20パーセント未満だと言われています。

心拍のリズムが遅すぎる状態が「徐脈」、速すぎる状態が「頻脈(ひんみゃく)」です。
不整脈は心臓の電気の流れの異常で起こります。
徐脈性と頻脈性のふたつがあり、最も多いのは「期外収縮(きがいしゅうしゅく)」と呼ばれるもので、時折早い脈を打つ状態を言います。
まったく健康な人でも起こり、この期外収縮が一日10万回の拍動の中で1000回以下なら、治療の必要は無いと言われています(起こっている心臓の場所による)。
一方、非常に危険な不整脈は心室で起こる「心室細動」です。
ブルブルと震えるだけで収縮せず、血液が送り出せなくなる状態で、数秒でめまい、10秒で意識を失い、5分で死ぬと言われています。(別名 致死性不整脈)

心臓のリズムを整える為の「ペースメーカー」は徐脈性不整脈の治療に用いられます。
世界で初めて身体に植え込むペースメーカーが作られたのはスウェーデンで1958年のことです。
当初は煙草の箱ほどもある大きさだったようですが、現在は100円硬貨ぐらいの大きさで、最長10年の耐久性があるそうです。

日本では死因の第2位、世界では1位を占める「心疾患」ですが、何より恐ろしいのは誰しもが突然その病に襲われる可能性がある事です。
映画「エルム街の悪夢」のヒントになった、東南アジアのモン族の人々の突然死は眠ってる間に突然ピタリと心臓が止まってしまう病で、永らくその原因がわからず「夜間突然死症候群」と呼ばれ恐れられていましたが、のちにそれが心筋細胞膜の遺伝子異常だということがわかり「ブルガタ症候群」と名付けられました。
アジア人の30代から50代の男性に多く見られ、日本では「ぽっくり病」と呼ばれています。

突然死はスポーツ時にも起こります。
その原因は複数あるようですが、コンタクトスポーツの中では「心臓震とう」が多いとされています。
「心臓震とう」とは胸への衝撃によって心室細動が起きた状態で、ボールや肘、膝などが当たった時に起きやすく、まだ胸椎が柔らかい若年層に多いと言われています。
「衝撃の強さ」「場所」「タイミング」の3つが揃えば起こりやすいと言われていて、「強さ」は強すぎても弱すぎても起こらず、「場所」は心臓の真上で、「タイミング」は心電図である決まった瞬間に起こることがわかっています。
心臓は胸骨や肋骨に守られてはいますが、皮膚からは以外と近く、表面からたった2cmで心膜に達すると言われています。

心停止になった場合、助かる唯一の方法はAED(自動体外式徐細動器)と心臓マッサージです。
AEDは心室細動の震えを取り除きリズムを取り戻す役目があり、心臓マッサージは機能しなくなった心臓にかわって、全身の臓器に血液を送る役目があります(10秒で少なくとも100回、胸の真ん中を強く圧迫する)。
心室細動になると、3分ほっておくと救命がむずかしくなると言われています。
空手の試合などで、お腹を打たれてうずくまる選手をみかけますが、それがお腹なのか心臓なのか、瞬時に判断するまわりの目が今後は必要となってきそうです。

最近は「心臓震とうプロテクター」と呼ばれる、心臓を打撃から守るパットが普及し始めていますが、子供の着用は、まだまだ任意の空手団体が多いようです。
その背景には、動きの制限がひとつ大きな要因としてあるようです。
一方が着用して動きづらくなり、一方は着用せずに動きやすくなるなら着用していない方が有利になります。
そのあたりのルールの整備に今後議論の余地がありそうですね。

スポーツ心臓は適応する為に心臓が肥大する現象で、特に持久系スポーツをする人に多くみられます。
心臓が大きくなった分、一回に送り出す血液量が増えるので、心臓の拍動は少なくてすみます。
拍動が少なくなれば身体は疲れにくくなり、より記録も出せる訳です。
スポーツ心臓は「肥大型心筋症」とはまた別物で、スポーツをやめると1年ほどで元に戻ると言われています。

心臓を移植してもっとも長く生きた人はイギリス人の女性で、33年間生きたそうです。






今週もありがとうございました。  押忍 織田