
【押してもダメなら…】
「押しても駄目なら引いてみな」のコトワザを文字って「押しても駄目なら引いてみな、引いても駄目なら回してみな、回しても駄目なら自分が回ってみな」と言ったのは、空手の世界に「捌き(さばき)」の技術を確立した、芦原英幸先生です。
この言葉は見事にひとことで捌きと言うものを伝えています。
「捌き」とはステップの勢いを利用して、有利なポジションから相手の技を受け流し、側面(アウトサイド)や背後から攻撃をする、まさに「打たれずに打つ」空手を目指したものです。
ただし「捌き」の技術が作られた背景には「組手」の中での行き過ぎた攻撃に対しての「安全性」への配慮が多大にあり、実際は相手を押さえにいく「手」はすべて「パンチ」であり、相手に密着する「ステップ」はすべて「蹴り技」に置きかわるのが「捌き」の前提条件です。
押さえにいく手やステップを「突く蹴る」イメージでどれだけ捌けるかが「捌き」における最大のポイントなのです。
とは言っても「突く蹴る」以外に相手を傷つけずに押さえ込む術が空手には必要です。
「崩し」とは、相手の足底の安定面(つま先からカカトまでを四角で囲んだ範囲)から、いかに重心をずらすか?
です。
空手の「崩し」は相手の攻撃を、その力が向かう方向に延長(少し力を加える)することで相手の崩れを誘います。 その際最も重要になるのが「足の運び」であり、特に相手に素早く密着する「インステップ」と崩す為に必要となる「引き足」がポイントになります。 自分の足を大きく引くことによって相手を崩すのです。
「崩し」には、もうひと手間必要で、相手の上半身と下半身を同時に、しかもそれぞれ逆の方向に力を加えなければ、うまくは崩せません。
つまり相手の肩を押しながら、足を引っ掛けるといった反対の動きが必要なのです。
「頭の傾き」も崩しを大きく左右します。
頭がうしろに傾けば、うしろ方向に崩しやすくなり、前に傾けば前方向に崩しやすくなるのです。
頭は体重の10パーセントもあり、首の上に乗っかってるボーリング球(頭)を500mlのペットボトル(下あご)がぶら下がりながらバランスを取ってるイメージです。
この顎の位置で頭の傾きもかわるのです。
顎を上に上げれば頭はうしろに傾き、顎を横に押し上げれば、頭は横に傾くのです。
「首」は私達の頭が重力で前に垂れないように、うしろに引っ張る筋肉が元々発達しており、ちょっとやそっとじゃ頭は前方向には引き込めないように出来ています。
しかし首は回転には弱くできていて(たやすく回せる)それを利用して、回しながら前に引き込めば、いとも簡単に頭を引き込む事が出来るのです。(髪や耳たぶを引く)
崩しは押したり、引っ張ったり、持ち上げたり、すくったりしなければなりませんが、この押す筋肉を「伸筋」と言い、引っ張る筋肉を「屈筋」と言います。
パンチを打つ時は上腕三頭筋の伸筋を多く使い、パンチを戻す時は上腕二頭筋(力こぶ)の屈筋を多く使います。
蹴り込む筋肉は伸筋である大腿四頭筋(ももの前面)を使い、引き足の筋肉は屈筋であるハムストリングス(ふとももの後ろ)です。
このように身体のすべての関節は対になるふたつの筋肉があるのです。
この対になるふたつの筋肉のバランスは身体にとっては大切で、例えば背中(伸筋)が硬くなれば前屈が辛くなり、腹筋(屈筋)が緊張すれば後屈がむずかしくなります。
伸筋や屈筋には、それぞれ最も力を発揮できるポジションがあり、例えば歩く時は膝の角度が15度で最大筋力になるそうです。
蹴り込む寸前の膝の角度は70度から90度、インパクト時のストレートパンチは肘関節が少し曲がるぐらいが「力」の発揮できるポジションです。 また、腱を痛める可能性がある危険なポジションは肘、膝ともに伸ばしきった場合です。
ちなみに立っている人が崩れやすい方向は前方向と後ろ方向です。
身体の構造上、人は横の力には強く、腕を引っ張られたりした時は素早く身体を横に向けて踏ん張れば力に対抗出来ます。
電車やバスの座席やつり革が横に向くように作られてるのは、踏ん張りが効くようにですかね?

今週もありがとうございました。
また来週お会いしましょう!
押忍 織田