
【呼吸】
心臓は1分間に約60~70回拍動します(心拍数)
一生(80年)で約20億回も拍動し続けます。
「呼吸」は1分間に約12~20回、1年で約1000万回、一生(80年)では約8億回呼吸します。
心臓は自力では止められませんが、呼吸は自力で止められます。 深呼吸だって出来るし、ため息をつく事だって出来ます。
しかし私達は完全に「呼吸」をコントロールしている訳でもなく自力で息を止めても、せいぜい1分が限界ですよね。 激しい運動や恐怖を感じれば心臓の拍動は速くなり、呼吸も意思と関係なく速くなります。
「呼吸」は自動と手動で成り立っているのです。
自力で息を止めて1分程で耐えられなくなるのは、脳幹にある呼吸中枢から「はやく息を吸いなさい」と指令が下っているのです。
心臓は筋肉のかたまりですが、肺は筋肉が無いので自ら膨らんだり、しぼんだりしません。
肺は単なる風船のようなものなのです。
私達の身体の中は「横隔膜」と呼ばれる厚さ3ミリ程のドーム状の筋肉で胸腔と腹腔にわかれています。 胸腔には心臓や肺が入っていて、その他の臓器は腹腔の中にあります。
「呼吸」をする時は横隔膜や肋骨や胸の壁の筋肉などが上下、内、外に動くことによって胸腔が広がったり、元に戻ったりします。
息を吸えば胸(肺)が広がり、吐けば胸(肺)がしぼむのです。
激しい運動の時は、肩の筋肉も胸郭を広げるのに使われています。 肩が上下するのは、そのせいです。
私達の「喉」は気管と食道とに分かれています。
普段は気管の入り口にあるフタは開いていて、空気は肺に流れ込みます。
喉が何かを飲み込む動きをする時にだけ、そのフタは閉まり、食べ物や一緒に飲み込んだ空気や唾などが食道を通り胃に流れ込みます。 食べ物と一緒に食道入った空気は胃から逆流すると「ゲップ」になり、下にいくと「おなら」になります。
肺に入った空気中の酸素は血液を通して全身に運ばれていくのです。
私達は普段無意識に「呼吸」をしています。
昼間は活動するのに適している速いリズムの「胸式呼吸」になり、夜眠る時やリラックスしている時などは、ゆったりとしたリズムの「腹式呼吸」に自動(無意識)でなっているのです。
「浅い呼吸」と「深い呼吸」が身体をリセットしてくれているのですね。
「胸式呼吸」は横隔膜が大きく動かない分、肺もあまり膨らまないので吸い込む量は少なく、速く短い呼吸になります。
「腹式呼吸」は横隔膜を大きく上下に動かすので、吸い込む量も多くなり、呼吸もゆっくり長くなります。
「吸う息」と「吐く息」は自律神経とも深く関わっていて、息を吸うと活発な神経と言われている「交感神経」の働きが高まり、息を吐くとリラックスの神経と言われている「副交感神経」の働きが高まると言われています。
剣術用語でもある「上虚下実(じょうきょかじつ)」とは上体の力が抜け、下半身に力が入った状態をいいます。
心が落ち着いている時は下半身に力が入っており、上半身は力が抜けています。
この時私達は「腹式呼吸」をしています。
逆に感情が高ぶった時には下半身の力は抜け、上半身に力が入っています。
この時私達は「胸式呼吸」をしています。
「吐く息」に力がこもれば気持ちが落ち着き「吸う息」に力がこもれば緊張感を高めてしまうのです。
腹式呼吸にはさらに「逆腹式呼吸」と「腹圧呼吸」と呼ばれるものがあります。
「逆腹式呼吸」は腹式呼吸の真逆で息を吸ってお腹がへこみ、吐いてお腹が膨らみます。
「腹圧呼吸」は吸う時も吐く時も常時お腹に圧をかける呼吸法です。
これは空手の呼吸法でもあります。
常にお腹に圧がかかっているので「吐き」から「吸い」に転じる時のスキもなく、ボディへのダメージも軽減出来ます。 この呼吸はリズムが難しいのですが「吐いて(膨らます)吐いて(膨らます)吸う(へこます)」のリズムの繰り返しが最もスムーズにいきます。
戦いで相手と向かい合った時、間合いによっても「呼吸」は変わってきます。
接近戦では動きに合わせて短く吸って短く吐き、遠い間合いでは長く吸って長く吐きます。
呼吸は吸ってる時よりも吐いてる時の方が身体の反応も早いので、攻防の激しい展開では「吐く息」だけを意識します。
パワーの出る順番は、息を止める、吐く、吸うの順ですが、息を止めて技を出すと身体がりきんでしまい、ブレが生じてしまいますし、息も上がってしまいます。
息を吐きながら技を出したり受けたりすれば身体のブレも抑えられ、手足に力が伝わりやすくもなるのです。
「フー」と吐くため息は、ほとんどが無意識に吐いています。 心の不安から浅くなっている呼吸によりバランスが悪くなった自律神経の働きを、息を深く吐くことによって回復してくれる役目があったのです。

出場される東京東支部の皆様頑張って下さい! 押忍織田