女性しかいない異世界に男子高校生が転生する物語、「パラレルパラダイス」(作:岡本倫)。
ヤングマガジンで連載中ですが、官能的な場面が多い中、時にハッとさせられる言葉に出会ったりします。
例えば、最新の第8巻の主人公ヨータの心中。
ヨータが例示しているように、大掛かりに初詣が行われるようになるのは、確かに明治時代に鉄道が各地に敷設されてからのことです。
葬式の黒い喪服もそうです。これは欧米に倣ったもので、もともとは日本では白でした。
また今は崩れつつありますが、日本の企業の慣行とされてきた終身雇用制は、第二次世界大戦後に定着したものでした。
同じように、僕たちが自明と思う慣習や慣行も、実は近代に導入されたものや戦後に採用されたものであったりするのです。
結婚制度などもそうですね。
明治期まで日本は一夫多妻が許容される風土の元にありました。貴人は特にその傾向がありました。
欧米列強の婚姻制度に倣い、明治民法の導入と大正期の皇室での側室制度の廃止などを経て、一夫一妻制が定着しましたが、イスラム教圏では21世紀の今日も一夫多妻制度が現存しているように、一夫一妻は絶対的な制度ではありません。
一夫多妻は両性同権との兼ね合いで問題も少なくないとは思いますが、最近の日本では、人の多様な生き方を求める意見として、女性の立場から、一夫一妻に疑義を呈する意見も見かけるようになりました。この場合は1人にパートナーを固定しないという意見が多いように思われます。
僕はたとえ作られた伝統であっても社会でうまく機能しているならわざわざ変える必要はないという立場を取りたいですが、問題が生じた時は当然視せず、柔軟に変化に対応することも大切だとは思います。
話が硬くなってしまいましたが、久しいと思われている伝統や習慣も明治以来、あるいは戦後以来の慣習かもしれないということを、時にマンガが読者に気づかせてくれる、そんなことを思ったことでしたよ。