東京オリンピックのエンブレムが撤回され新しいエンブレムの募集と選定が始まることになりました。騒動にひとまず区切りが打たれましたが、この問題はアニメ、マンガ、音楽も含めて表現にかかわるクリエーターに大きな問いを投げかけました。
オリジナルとは何かという問いと、インターネット時代における模倣という非難へどう対応するかという問いです。
オリンピックエンブレムに関する限り、公表された選考過程を見れば、佐藤研二郎氏は模倣ではなく、たまたま似たものになったように思われます。ロゴのようなシンプルなものほど、デザインは重なりやすいです。多くの識者が指摘するように、法的には問題はありませんでした。しかし、佐藤氏のほかのさまざまな失態が、白紙撤回につながりました。
おそらくシンプルなものは、どのようなデザインであっても、世界中のデザインをネットで検索すれば、似通ったものは見つけられることでしょう。今回のエンブレム問題はネット時代で顕著になった問題とも思いました。デザインも含めて表現されるものは完全なゼロからは生まれません。その時代に至るまでに蓄積されてきた有形・無形のものが何らかの形で母体となり、それが反映するからです。ですから、あからさまな模倣ではなく、先行したものに少しの変化があれば、それはアレンジであるとともに創造と十分認めてもいいように思われます。
また、デザインばかりでなく、マンガやイラスト、音楽でも盗用の騒ぎが時々起ります。音楽について言えば、上海万博テーマソング事件を思い出しますが、これは万博主催者側が盗作を認め作曲者をオリジナル曲の作曲者としました。このケースは盗用が認められた珍しい例ですが、よほど似ていると感じたのでしょう。
一般的には、似ていると感じた側はネットで炎上させるのではなく、事実関係を確認し冷静な対応が必要だと思います。また、模倣でないと反論する側にも結果的に似ているならば相手へのリスペクトを保ったうえで、説得力のある反論をするのが望ましいのかなとも佐藤氏の対応をみて思いました。
もしもあなたが表現者としたら、この問題にどう向き合うでしょうか?