記憶操作が実現し得る今〜『東京ゲンジ物語』を思う〜 | みかんともブログ

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6月29日月曜日の日本経済新聞朝刊で肌寒さを感じる記事に接しました。
ノーベル医学・生理学賞を受賞した利根川進氏のインタビューが載っていたのですが、記憶を操る研究手法を確立したというのです。研究成果として、マウスを使った実験で、光とDNA操作で偽りの記憶を作ったり、嫌な記憶を楽しい記憶に作り変える仕組みの一部を解明したり、楽しかった記憶を活性化したことが挙げられていました。これは、アルツハイマーや鬱病の治療につながるそうです。
しかし、僕は驚異を感じる以上に、肌寒さを感じました。マンガBOXで連載していた『東京ゲンジ物語』(原作:天樹征丸 漫画:尾崎南)を思い出したのでした。
主人公のゲンジの周りで奇怪な殺人事件が次々起こります。
それは、ゲンジの幼い頃の記憶が関係しています。
ミステリーを解く鍵は冬夜という謎の人物と、ゲンジ自身の記憶。
実はゲンジの両親は研究者で、記憶を操作する手法を生み出していたのです。それゆえにゲンジは権力に狙われます。記憶操作によって恣意的な支配が可能になるからです。
記憶操作技術が出現するとき、病気治療の善用もあるのかもしれませが、力を持つ者や専制国家の支配者たちは、それをきっと悪用することでしょう。
『進撃の巨人』の壁の中の世界は、王の記憶操作によって王や貴族に都合のよい秩序が保たれていたのは象徴的です。
利根川進氏は科学の進歩や人類の向上の為と思って研究しているでしょうし、仮に氏が研究をしなくても、他の研究者や機関が研究を進捗させるにちがいありません。悪用されないことを願うばかりです。
インタビュー記事において、利根川氏は言います。
「人間はできることはなんでもやる。(中略)人間を滅ぼすことになっても」
果たしてそうなのでしょうか?自発的な歯止めはあり得ないのでしょうか?
『東京ゲンジ物語』はその点で示唆になります。主人公は記憶操作技術を事実上封印し物語は終わりました、人の世のために。
(ネタバレですいません)