その1
母に、「これ美味しいから、あんたも食べて」と手に何か握らされた。
手を開けてみたら、ティッシュが出てきた。
私は、ヤギか?
その2
「 Y(兄)と、M子(私)は、兄妹やったとね」
と言われた。
誰が産んだんや?あんたやろ?
その3
深夜1時頃、「助けて〜」と母の声がする。
ベッドから落ちたのかと思い、慌てて3階から母の部屋に行くと、
「下の歯も、上の歯もないの。」と言われる。
「お母さん、寝る時に入れ歯は外して薬に漬けて消毒してるよ。洗面所にあるから大丈夫よ。」と言うと安心してベッドに横になる。
30分後、また「お〜い」と呼んでいる。階段を駆け下り、「どうしたの?」と聞くと、
「下の歯も上の歯もないの。どこやったかね。」と言う。「お母さん、入れ歯は洗面所で薬に漬けてるから心配しなくても大丈夫よ。」と言うと安心してベッドに横になる。
また30分後、センサーが鳴って下に降りてみると、入れ歯がないとベッドに腰掛けてベッドの下を手探りで探している。
「入れ歯は、洗面所にあるよ。毎日、寝る前に外して薬に漬けるやろ?これで、おんなじ事言うの3回目だよ。もう2時だからこれを最後にして下さい。」と言うと、母は「そうね。」と言った。
その4
週に2、3日は、昼夜逆転で母は一晩中ゴソゴソ起きている。
深夜、センサーが鳴り、カメラで確認すると母がベッドから降りて歩き出そうとしていたので、階段を駆け下りて、トイレに連れて行く。
「あんたもトイレ?」と聞かれる。「違うよ。お母さんが、目が見えなくてトイレの場所が分からんけん降りてきたよ。」と言う。「あら、ありがとう。」と言う。
そんな日、母は頻回にトイレに行く。
その度に、私はセンサーで起こされ母をトイレに連れて行く。
「私がトイレに行くのがよう分かるね。」と言うので、「お母さんが、ベッドから起き上がると、私の耳元で人感センサーのベルが鳴って起こされるんよ。」と言うと、母は言った。
「あんたも大変ねー」
その5
母が大好きな孫のS君が、夏休みで都会から帰省してきた。母を驚かそうと、ずっとSが帰ってくる事を秘密にしていた。
Sが夕方帰ってきた時、母はベッドに横になっていた。Sが、ベッドサイドに行って、「ばあちゃん、ただいま」と言った。私が「だ〜れだ?」と聞くと、母は、「分からん」と言った。
「S君やん。夏休みで帰ってきたよ。」
「S君忘れたと?」と聞くと、母は「知らん」と言った。あら〜残念。忘れられとる。