入院して5日目の朝。
やっと3日間のうつ伏せ修行が終わって、眼帯も取れてすっきりしました。

まだ左目は白目が真っ赤に充血して、目の周りが内出血で青くなったりして
見た目はひどい感じでしたが、痛みはありませんでした。

看護師さんに久しぶりに髪も洗ってもらって
シャワーもして、やっと普通に生活できる喜びをかみしめました。

 

目の見え方はというと、ガスが入っている部分は
水の中で目を開けているみたいな感じです。
 

顔をまっすぐに前に向けると、ちょうどその水面が下から8割くらいのところにあって

そのうえは黒いクラゲのようなものがぷかぷか浮いている感じです。

まるで金魚鉢が目の中にはいっているみたい。

 

顔を少し下に向けてガスの部分を通して自分の手をみると、
今まで見えなかった視野の中心がはっきりと見えました。

よかった。穴はちゃんとふさがって見えるようになっています。


けれど度の合わない老眼鏡をかけたみたいな見え 方で
焦点は目から5センチのところで合っている感じ。
ガスを通して見ているからでしょうね。

 

実はこのガスがなかなか抜けてくれないのです。

普通に見えるようになるのは思ったよりずっと先のことでした。

 

翌日は日曜でしたが、無事に退院することができました。
一人で荷物をまとめて、息子と自分の昼ご飯のために売店でお弁当を買って

日曜で人気のない病院の受付から、タクシーを呼んで家に帰りました。

 

家に帰ると息子の千羽鶴が完成していました。

以前、母に作ってくれた千羽鶴より、虹のようなグラデーションがついて

バージョンアップされていました。すごいね。ライダーくん。

1週間でこれを作り上げたなんて!集中力はすごくあるのです。


 でも息子はまた泣きながら
「論文が間違ってるのでもうやだ」
と繰り返していました。
まだラスボスの論文ちゃんは息子の中で消えていませんでした。

栄養不足と不安の中で1週間がんばって鶴を折り続け
がんばりすぎてよけい不安が強くなったのかもしれません。

 目の前で泣いている息子を見ながら
しっかりしてほしいという気持ちとありがとうがんばったねという気持ちが

交錯していました。



息子の気持ちがこもった涙の結晶の千羽鶴