これが『統一教会』の秘部だ (上)<妄想でなくリアル | ナツミカンのブログ

    世界日報事件、副島事件・・・、統一教会に関わり始めた時、

    以前このような事件があったことなどまったく知らなかった。

     

     

    https://ameblo.jp/damedamewanko2/entry-12375388073.html

    上記URLより、加工あり。

     

     

    これが『統一教会』の秘部だ  –  世界日報事件で『追放』された側の告発

    副島嘉和
    そえじまよしかず
    (「インフォメ一ション」編集発行人)

    井上博明
    いのうえひろあき
    (「インフォメ一ション」営業担当)


    暴カをふるって占拠

    唐手つかいを含む約百人の男たちが、東京の渋谷にある九階建てのビルの裏口にはいった。昭和五十八年十月一日の正午である。世界日報というささやかな新聞社が、このビルの三階以上の四つのフロアにある。侵入者たちは暴力をふるって社を占拠し、役員を長時問監禁して、十名ほどの社員に負傷を負わせた。この事件は一部の新聞に報道されたので、ご存じの読者もあると思う。

    世界日報は、世間に様々の話題を投げて来た統一教会=世界基督教統一神霊協会一の発行していた日刊手紙であり、当時私(福島)はその編集局長をつとめていた。その前年までは私は統一教会本部広報局長も兼務しており教会の方針を決定する最高決議機関の十二人の局長会議のメンバーの一人だった。また同僚の井上博明は、統一教会の四国ブロック長(四国全域の責任者)を経て、当時は世界日報社の営業局長の要職にいた。

    統一教会というより、「原理運動」といった方が、あるいはご理解が容易かも知れない(原理運動は統一教会の学生組織をさすのだが)。とにかく侵入して暴力をふるったのもその「原理運動」、すなわち統一教会の男たちである。統一教会の政治団体、国際勝共連合の梶栗玄太郎理事長以下が、統一教会の日刊紙を発行していた新聞社を襲った。理由は私たちが世界日報を、一般知識人の読むにたえる新聞にしようとしたことにある。

    昭和四十九年一月一日、世界日報は統一教会の教祖である韓国人「文鮮明氏」の指示で、統一教会と勝共連合の出資によって一般紙を目標として設立された。しかしそう簡単に日刊紙ができるわけはなく、世界日報は創刊来六年間、宗教団体である統一教会の一機関紙部門という状態から発展することができなかった。事実社員はすべて統一教会の一会員であったし、経営的にも欠損は全額、統一教会に補填してもらうという事態が延々と続いていた。

    創刊から六年後の昭和五十五年十月、私と井上博明が入社した時は、有料購読部数が約七千部しかなく、毎月六十万円の欠損を統一教会に捕填してもらわなければ維持してゆくことができない新聞であった。背後に統一教会、勝共連合があるということで、一般に評価されている学者、文化人の寄稿はなかった。自ずと執筆者は限定され、松下正寿氏、福田信之氏、入江通雅氏という統一教会の学者組織である「世界平和教授アカデミ一」の会員や、広田洋二氏、弘津恭輔氏などの勝共連合の顧間に依存するという状態であった。

    なぜ訣別したのか

    私たちは厳しい決断を迫われた。一宗派の宣伝紙ではなく一般紙をつくろうとする以上、編集権と経営権の独立を保持し、一宗派や特定の政治団体に偏しない紙面作りを考えなければならないだろう。そのためには以下のような方針を取らなければならない。

    世界日報の紙面を統一教会、勝共連合の布教、宣伝に用いない。統一教会、勝共連合とこれに関連する団体の報道は原則として他紙と同程度に扱う。事情によっては他紙よりも控えめに取り扱う。ただし論調はサンケイ新聞よりも強い反共、愛国の方向をとる。これにより出資者である統一教会と勝共連合には、自由主義陣営の擁護と日本の共産化を防衛するという点で間接的に寄与するということである。

    私はこの基本姿勢を社員に周知徹底させ、これまでは世界日報に登場することのなかった学者、文化人の説得にあたった。時と共にその成果があがり、武藤光朗氏、勝田吉太郎氏、林健太郎氏、田中美知太郎氏、草柳大蔵氏、加藤寛氏、竹山道雄氏、尾崎一雄氏など多数の著名な知識人が寄稿するようになった。加えて源田実氏の「風なりやまず」と村上元三氏の「田沼意次」という、これまでは企画することもできなかった強力な連載小説が続き、部数拡大の大きな戦力になった。

    一方、報道の面では昭和五十七年、教科書検定報道の際、その誤報を真っ先に指摘して、マスコミ報道のあり方に警鐘を鳴らし、「悪魔の飽食」の写真誤用事件のキャンペーンでは、言論機関の倫理問題を問い質した。さらに昭和五十八年に入っては、レフチェンコ事件報道でいちはやくKGBのエージェントを割り出すというスク―プがあり、その国際的陰諜を摘発する先陣を切ることができた。これらの報道の成功は、世界日報が他の週刊誌、月刊誌に引用されるという現象を生み、知名度は飛躍的に向上した。さらに竹村健一氏と渡部昇一氏が世界日報をテレビで紹介するということがあり、全国から購読中し込みが殺到した。

    経営の正常化を可能にしたのは、有料購読部数の増加と社内の合理化だった。営業局長井上博明は当初十店舗しかなかった販売店を三年後には七十四店舗まで増設し、有料購読部数を七千部から三万五千部まで引きあげた。また、二百人余の大幅人員削減と二億円余の売掛金回収も二年がかりで完了した。こうした経営努力により、世界日報への統一教会と勝共連合の援助金は完全に停止した。次に着手したのは、統一教会会員が社員の大部分を占める異常な社員構成を修正することだった。これは世界日報が新聞協会に加盟するための条件だった。そこで昭和五十九年度からは思いきって社員の一般公募を開始することにした。

    しかしその自由な言論機関をという私たちの理想に不満を抱いていた、統一教会と勝共連合が、突然、世界日報に全面介入してきたのである。

    この暴力事件や世界日報乱入、占拠事件の際の社員に対する傷害、暴行事件などについては渋谷署に目下告訴中だが、その暴力を行使した当人の梶栗勝共連合理事長が世界目報の社長に就任している。

    私たちは、宗教団体を代表すると自称する人々が、己れの利益のために世界日報を占拠し、私物化しようとするやり方に絶望して社を去ったが、新役員をみると、統一教会と勝共連合の役員が世界日報の役員を独占しており、そこに政治団体国際勝共連合と宗教法人統一教会の宣伝のための「機関紙化」の意図が明瞭にでている。

    その後、事件の前年まで統一教会本部広報局長をつとめ、教会の幹部であった私は、井上博明と共に教会から除名されることになるが、むしろ私たちの方が、すでに長く抱いてきた統一教会への信頼を急速に失って来ていた。何よりも私たちをそうさせたのは、あれほど敬慕していた「文鮮明氏」と久保本修己(亮光と改名)日本統一教会長への、ぬきさしならぬ失望、疑惑の深まりであった。とくに、世界日報の暴力事件も、梶栗理事長らに暴力をふるえと命令したのは「文鮮明氏」自身であり、久保本会長がそのことに見て見ぬふりをしたということである。それが、私たちの統一教会からの訣別を決意させる、決定的要因となった。

    「愛のマグロ釣り研修」とは

    世界日報暴力事件が「文鮮明氏」の指示に基づいたという証拠資料はある。事件二日後、教会本部が全国の組織幹部にあてて出した「世界日報事件についての対応」という指示それだ。

    「九月下旬訪米した梶栗理事長に、天より、世日を大掃除し、人事を一新せよ、との命が下されました。天の悲しみと公憤は甚しく『信仰の伝統基準を破壊するものは許されない。たとえ新聞を一ケ月いや三ケ月休刊しても、その損失より天の伝統を確立することの方が重要である』とのみ言を頂き、新人事として梶栗理事長が世日の新社長……に任命されました。そして久保木会長に世日問題を根こそぎ整理し、新人事を行うようにとの御指示がありました」
    ここでの「天」とは、もちろん「文鮮明氏」のことである。また暴力をふるった張本人である梶栗氏も、それが「文鮮明氏」の指示であったことを認めている。梶栗氏は事件から四日目の十月五日に、世界日報の社員を統一教会本部に集め次のような演説を行っている。
    「なぜ私が世界日報へ力でもってこれを占拠したか……九月二十三日十時二十五分、イ一ストガ一デン(ニューヨークにある「文鮮明氏」の私邸)のお父さま(「文鮮明氏」のこと)の前で世界日報の人事発令がなされた。この人事発令を申しあげる。共同社長石井光治(統一教会の責任役員)、梶栗玄太郎(勝共連合理事長)……副社長国時昭彦(国際勝共連合機関紙「思想新聞」の元編集長)……二十七日、世界日報に関する会議が行われた。そこで(「文鮮明氏」から)この世界日報の間題解決の一切の責任を石井及び梶栗両社長に一任された。……二十八日午後五時成田に到着、……九時から会長(久保本亮光のこと)を中心に会議を開いた……」
    「三十日に社長、副社長不在のとき、通知もなくこのような会議をして、役員会議と称するのは二人(副島と井上)がかってにやった陰謀の会議によって、……お父さま(「文鮮明氏」のこと)の許可なく本人も知らないところで解任し、自分が(副島のこと)代表取締役になる……この会社(世界日報)は統一教会から離れ、もはや独立した別の会社になってしまう。もはや統一教会は会社(世界日報)全体を失うことになる。このような犯罪事実が明確になった。これ以上待つことはできない……」それで世界日報社を襲撃したというのである。

    宗教組織にとって、教祖の存在は絶対であり、信者に対するその権力は絶大である。しかし、教祖を頂点とし、その教義に固く帰依はするが、世界各国に組織をもつ統一教会は、それぞれが会長のいる単一の組織として、各国の状況に応じて活動をつづけて来たのである。ところが、いつの間にか、日本国内の統一教会の活動が、次第に久保本会長を長とする日本統一教会の決定によるものではなく、すべてアメリカにいる「文鮮明氏」の直接指示によってなされはじめた。

    「世日事件についての対応」の指示の中で、私たちの「反逆行為について」として、「天の召命に応ぜず、情報管理して天のみ言が末端まで伝わらない」など「信仰の伝統を破壊する」と書いている。「天の召命に応ぜず」の具体的内容として「最近では、愛のマグロ釣り研修をボイコットした」ことを挙げている。
    「愛のマグロ釣り研修」とは、「文鮮明氏」が毎年、アメリカ・ボストン沖で、マグロ釣り漁船に幹部を三、四人ずつ交代でのせてマグロ釣りをやらせ、その船上や宿合で訓話をたたき込むという、実利を兼ねた(とったマグロは教会系の漁業会社に回す)一石二鳥の一風変った幹部研修である。そのマグロ釣りの働きぶりを見て、人事替えも行われる。これを「文鮮明氏」は霊眼による人事と説明している。

    昨年も七月から八月にかけて、日本から約七十名の幹部がアメリカに行って、このマグロ釣り研修に参加させられ、うち二十人がアメリカヘの人事異動を発令された。言葉も不自由なアメリカに突如やらされ、教会系の会社や日本料理店などで経済活動につかされて、いまそれらの人たちは苦労しているだろうと思う。

    たしかに、私もこのマグロ釣り研修参加者リストに入っていた。しかし、私は、日刊紙である世界目報の編集局長として、十日もマグロ釣り研修のために職場を離れることは、新聞づくりに支障を来すと考えた。

    これまで、私は日本統一教会の幹部の一人として組織の決定に従い、かつては統一教会本部広報局長、あるいはやはり「文鮮明氏」が総裁を兼ねる国際文化財団(この援助でつくられた学者・文化人組織が「世界平和教授アカデミ一」)の事務局長などとして懸命に働き、さらに世界日報の編集局長になってからは、社会の公器としての役割を呆す一般紙として成功させることが、教会の底力となって寄与することになるという考えで、努力を重ねてきた。そのため、あくまで言論機関という原則を守ってゆくことを第一に考え、統一教会員が多数を占めてはいるが、世界日報社内では宗教上の礼拝を社員にはさせないという思い切った指示を出し、それを守らせてきた。私が入社する前は、役員会議や編集会議の前後に全員で「文鮮明氏」を讃えるお祈りをしていた。そういうことも、「文鮮明氏」に忠実な日本教会幹部たちの反感を招いたといえるかもしれない。

    日本語版から削除された個所

    昨年十二月末、朝日新聞が世界日報事件と私の統一教会批判の動きを記事にし、その見出しに「韓国色濃い儀礼」とつけていた。その文中で「統一教会はキリスト教の完成をめざす世界宗教のはず。しかし文師の考えで、儀式の服装、拝礼、用語など韓国色が強すぎる。欧米では、人事も韓国人が偏重されている。日本人として改善の必要を感じていた」という趣旨の私の談話を載せていた。その私の気持は今いっそう強くなっている。

    たとえば、先に引用した「世日事件についての対応」という指示の中で「これらの事実(私たちが反逆行為を行ったなどの)を全食口に周知徹底させ」と「食口」といぅ韓国語をつかってある。食口とは韓国語で「家族」の意で、統一教会では会員のことをそう呼んでいる。

    さらに昨年十一月五日出された「子女の日特別指示」には「本日を期して韓国語を全食口学ぶように!」と書かれている。朝日新聞の記事にも書いてあるが、統一教会では韓国語を将来の「祖国語」といういい方で、信仰の母国語と規定しているが、このような韓国語全員学習の特別指示が出されることは、初めてのことだ。

    統一教会は、韓国で生れ、韓国人「文鮮明氏」を教祖とする宗教であることは、いうまでもない。そのために、信仰儀礼などに、いくばくかの韓国習俗的なものがあることは仕方がないとしても、問題はただそれだけでなく、「韓民族」が選民であり、他民族に優越していると説くことである。この考え方は、キリスト教本来の世界宗教としての性格を否定することになる。選民に対する考え方こそが、民族宗教と世界宗教を分つ点である。

    このようにみれば、「韓民族」が選民であるとか、韓国が世界の中心であるという考え方は、キリスト教の正統をつぐ世界宗教としての統一教会という原則と明らかに矛盾する。しかし、統一教会の教典「原理講論」の韓国版には、そのことを明示した記述がある。

    ところが、この部分は日本語版の「原理講論」から意図的に削除されてきたのである。韓国版「原理講論」の第六章第二節「イエスはどこに再臨されるか」の以下の個所に、「韓民族」を選民とし、韓国語が祖国語、世界共通話になるなどの韓国中心主義、世界宗教とは異質な韓国の民族宗教的なものであることが示されている。

    「古来より東方の国とは、韓国、日本、中国の東洋の三国をいう。ところでそのうちの日本は、代々天照大神を祟拝してきた国として、その上全体主義国家として再興期に当っており、かつての韓国のキリスト教を苛酷に迫害した国であった。そして中国は共産化した国であるため、この両国はいずれもサタン側の国家である。したがって端的にいって、イエスが再臨される東方のその国とはまさに韓国である……イエスが韓国に再臨されるならば、韓民族は第三イスラエル選民となるのである」

    「この国(韓国のこと)であらゆる文明が結実しなければならない。有史以来、全世界にわたって発達してきた宗教と科学、即ち精神文明と物質文明とは韓国を中心として、みな一つの真理のもとに吸収融合され、神が望まれる理想世界のものとして結実しなければないないのである……ゆえにまさしくあらゆる文明が結実しなければならない韓国においてなされなければならないのである」

    「言語はどの国で統一されるであろうか?その問いに対する答えは明白である。子供は父母の言葉を学ぶのがならわしであるからである。人類の父母となられたイエスが韓国に再臨されることが事実であるならば、その方は間違いなく韓国語を使われるであろうから、韓国語はまさに祖国語となるであろう。
    したがってすべての民族はこの祖国語を使用せざるをえなくなるであろう。

    この日本語版で削除された再臨に関する部分が、原理講論の結論だといっていい。いわんとすることは、再臨主とは韓国人である「文鮮明氏」のことであり、「韓民族」は選民であるから、「文鮮明氏」によって世界は統一され、必然的に韓国は世界の中心となり、韓国語が世界の共通語となる。そして、「文鮮明氏」夫妻が、全人類から「お父さま」「お母さま」と尊称される「真の父母」になるということである。

    このような教義には日本人に対する韓国人の歴史的に屈折した心理が反映しているのであろう。それが「文鮮明氏」の日本統一教会とその幹部に対する、強い不信となって表れて来る。そのような「文氏」の実像と統一教会の本質をあらわにみせたのが、「子女の日」の指示事項の中で、とくに責任者に祈禱の指示をした「大石様とエバ国家が心情一体となれますように」という項目である。

    敬礼式の奇怪な儀式

    大石様とは、東海大を卒業し、日本に滞在している「文鮮明氏」の先妻の子文聖進氏の日本名である。日本滞在中の「保護者」となっている二人の日本教会幹部の苗字の最初の字を組合せてつくったものだ。「エバ国」とは日本のことをいう統一教会用語である。では、この「大石様」と「エバ国」が「心情一体となれ」とは、どういう意味なのか。それは、文聖進氏を日本統一教会が誰よりも大事にして尊重せよ、ということになる。したがってそれは、日本統一教会の久保木会長は文聖進氏に従え、ということを意味しているに他ならない。

    「文鮮明氏」を「メシア」「王の王」とみなす象徴的な、不愉快な儀式が統一教会にあることも書いておく。統一教会が四大名節と呼ぶ記念日には、早朝五時からの敬礼式という儀式があり、そこでは聖壇に座った「文氏」とその家族に対し、統一教会の主要幹部が三拝の拝礼を行う。場所はだいたい「文氏」の私邸であるアメリカ・ニュ一ヨ一ク州のイ一ストガ一デンである。その際、天皇陛下をはじめ、レ一ガン大統領、全斗換大統領ほか主要国の元首の身代りを、それぞれその国の教会幹部が担当し、文教祖一族に拝跪して全世界の主権者が文教祖に拝礼したという儀式を行うのである。

    日本の天皇陛下の身代りを演ずるのは、日本統一教会会長の久保本氏なのである。何とも奇妙で、そして国民の象徴として天皇を上にいただく日本国民としては見逃せぬ情景ではないか。それだけではない、イエス・キリスト、釈尊、孔子、マホメットなど主要な宗教の代表の身代りを務める人も決っており、同様に「文鮮明氏」とその家族に平伏をする。これは「文氏」がすべての宗教の上に立つ権威をもっていることを示す重要な儀式なのである。

    これをみても解るように、統一教会と国際勝共連合が行っている、宗教活動や愛国運動は、「文鮮明氏」の野望を実現することを目的とした方便なのである。

    さらに注目されるのは、「文鮮明氏」が五十九年の年頭標語を「祖国創建」と決めたことである。「祖国創建」とは、文字通り統一教会が国家を創るという意味である。その「祖国」とは、いうまでもなく韓国である。その韓国での「祖国創建」のためとして、韓国内での勝共運動要員の名目で、百五十人の日本教会会員の人事異動発令がなされているといわれている。

    みていると、「文鮮明氏」と韓国人の統一教会幹部には、日本統一教会内に日本人としての誇りを持つ人間が現れることの警戒心が強い。日本人に対しては、とくに尊大になる。この「文鮮明氏」の日本統一教会とその幹部への強い不信と、そこから来る強圧的な姿勢の根底には、くりかえすが韓国・朝鮮人としての日本人に対する、反日感情がある。「文氏」は、日本の幹部に経済活動による金集めや、その献金の指示を出すとき、必ず常用するいい方がある。それは、日本の復興は朝鮮戦争の特需によるもので、韓国・朝鮮人の犠牲のうえに日本の繁栄が成り立っているという理屈である。だから、教祖は、日本から莫大な金額を持ち出すことも、そのために日本人会員が苦吟することにも、良心の呵責を感じないと断言している。

    統一教会は、創立後二十数年の新興宗教だが、いまや世界百三十力国に傘下の教団組織をもつ、一大宗教組織へと発展した。しかし、その実体は、最も教勢を誇る日本で八千人、アメリカが二千人、ヨ一ロッパ全域で二百数十人、発祥の地である韓国は大部分が名前だけの会員で、教会活動に専従しているのは二千人程度にすぎない。にもかかわらず、あたかも巨大な組織という印象を与えている原因は、豊富な資金力にものをいわせた種々の行事、大会、事業体、施設等の宣伝効果による。

    金集めに狂奔

    世界日報事件と、それをきっかけとした私の統一教会からの訣別には、統一教会員、とくに統一教会の重要企業であるハッピ一ワ一ルド関係者の、物品販売などの経済活動のあり方、平たくいえば、金集めの狂奔ぶりに対する批判が大きな要因としてある。私たちが「裏切り者の烙印を押されることを十分予期して、この手記を公表しようと決意したのは、これまで書いて来た統一教会の本質や「文鮮明氏」の実像に加え、巧妙な脱税や許欺まがいの高額商品販売など、おそるべき経済活動の実態をしっかり世間に知ってほしいと思ったことにある。

    実際、統一教会員が、資金カンパ、歳末助け合い募金、印鑑、大理石のツボ、多宝塔の販売などによって、金集めに狂奔している実態は、宗教法人の宗教活動の域を、はるかに逸脱している。昨年来、世界日報社員もインドシナ難民救援の街頭カンパを実施したが、これら街頭カンパの実態も、自分たちの資金づくりをすることが目的であると断言していい。

    朝日新聞が昨年十月、統一教会が九州と韓国の間に「日韓トンネル」を掘ることを計画、佐賀県下や壱岐、対馬海峡で、ボ一リングによる地質調査や、調査船による海層調査を進めており、その調査費など数百億円をすべて統一教会が出しているという記事を掲載していた。事実、この「日韓トンネル」構想は、「文鮮明氏」の提唱による大プロジェクトだが、調査にたずさわっている学者や技術者などは調査そのものだけでも意義があるとはしても、「実現不可能な夢物語」と思い、これにかかわっている統一教会関係者自身もそう思っているのである。

    それでも「文氏」の提唱だからと何百億という金を惜しげもなくつぎ込んで、懸命に計画に取り組んでゆく。宗教組織の異様さがそこにあるが、問題は、一体その金がどこから出ているか、ということである。

    統一教会はアメリカでいま伝道の中心となっている元ニュ一ヨ一カ一・ホテルや新聞社を買い取るなど、多くの施設をふやし、各種の会議を開いたり、事業活動を拡大している。最近も、南米のウルグアイで、銀行をおさえ、首都モンテビデオ最大のホテルから月刊新聞社、出版社を買収、ラジオ放送局を開設したことを、フランスの新聞「ル・マタン」が報じている。このウルグアイについては、昨年五月に私が訪韓命令をうけて行った済州、島グランドホテルでの幹部会議で、「文鮮明氏」から直接聞いている。話の中で「文氏」は「世界復帰のために四権を握れ」という指示を出し、四権の一つの経済に関連して、資源国ウルグアイに基盤をつくるため、すでに銀行を買収中であると語った。

    その四権の他の三権についていえば、思想に関しては、学者、文化人組織世界平和教授アカデミ一を七十力国に設立する。世界平和教授アカデミ一は昭和四十九年に日本にも設立され活動を続けている。科学技術については、西ドイツで買収したバングラ社を基盤に統一産業(韓国にある統一教会系企業)の技術を世界的水準にもってゆく。言論に関しては、先に設立した「ワシントン・タイムズ」を中心に全米五カ所にタイムズグル一プをつくる。日本では朝日、毎日、読売のどれかを買収する。信じ難いことであるが、日本の大手新聞社買収の件は現在、具体的な話が来ているので、二年後には着手する、といった内容だった。

    統一教会は毎年、学者を集めた「科学の統一に関する国際会議」、マスコミ関係者を集めた「世界メディア会議」などを開いており、今年十月、第六回の「世界メディア会議」を、十一月には「科学の統一に関する国際会議」を東京で開く準備を進めている。

    これらのおぜんだて「正解平和教授アカデミ一」の日本組織は、元立教大学総長松下正寿氏や、現筑波大学長福田信之氏らが中心となっている。実は、統一教会はこの両氏を含む四人の学者を教会に貢献する重要人物に指定し、定期的に手当てを支払っていた。統一教会本部局長会議での予算配分の報告の時は、四人に対する支払い金額が記録されていた。その金額は私が記憶するかぎり、月々六十万円が二人、四十万円が二人だった。

    いずれにしても、相当の資金が必要なことはいうまでもない。日本ばかりではなく、世界各国で、統一教会が多くの人に疑惑の目でみられているのは、この豊かな資金についてだろう。そして、ここで重要なことは、これらアメリカの各施設、韓国の企業群、南米、アフリカの開拓教会などの設立や維持資金は、日本統一教会員がカンパや募金、人蔘茶、印鑑、ツボ、多宝塔などの販売、しかも詐欺まがいの高額販売や巧妙な脱税によってつくり出されたものだという事実である。

    資金ばかりでなく、アメリカはじめヨ一ロッパ、南米、アフリカなどで布教活動に従事しているのは日本人教会員であり、世界各国に統一教会網を発展させた原動力は、「文鮮明氏」のカリスマ性一般で、日本の統一教会で、あったということができるのである。日本人の温順、勤勉という特性が、特異な統一原理への魅惑とからまって、日本統一教会の大きなエネルギ一を生み出したといえる。日本人に対する本来の不信、反感がありながら、「文鮮明氏」が日本教会への期待を捨てず、人事や組織について、次々と指示を出してくるのは、日本統一教会員の活動なくして、財政、資金の調達ができないからである。

    「ハッピ一ワ一ルド」社とは?

    昨年十一月五日の「子女の日」指示は「百二十日路程大勝利を期して」となっている。この「百二十日路程」とは教会用語で金集め期間のことであり、「文鮮明氏」が金集めのために決めた十一月十六日から一月二十一日までの非常に重要な期間であるから、統一教会とその傘下の全組織は、一切の活動を停止して、「経済復帰」一一金集めに努力を集中せよ、ということである。これは、世界日報事件が世界日報内だけでなく、統一教会員の間に混乱を起し、かなりの経済活動が停止した。二十日間休刊にした世界日報の欠損も補填しなければならなかったし、それよりも毎月二十億円、五十年七月の送金命令以来計二千億円余も送ってきた「文鮮明氏」への納金も、とどこおってきた。この財政危機を打開するための「百二十日路程」の命令だったのである。

    統一教会についての問題点は、先にものべたとおり、その経済活動、物品販売活動にからまる巧妙な脱税操作と、詐欺まがいの商品の高額販売である。「ツボに仏霊が宿っており、これを買うと幸せになる」と老女に大理石のツボを高価で売りつけたセ一ルスマンが詐欺で逮捕されたり(五十七年四月、東京・大塚署)、印鑑、ツボ、多宝塔、高麗人蔘など総額四千四百万円を売りつけられ、消費生活センタ一が間に入って返還させたり(五十八年二月、福島)、「ツボをなでてお祈りすれば極楽へ行ける」など執拗な押売りでツボや多宝塔を高額で買わされた主婦らが、代金の返還請求訴訟を起したり(五十八年十一月)など、新聞ザタになった悪質販売事件は多い。今年一月には、セ一ルスで知り合った女性を「悪霊がついている」と旅館に連れ込み、霊払いの儀式をして千二百万円もの金を祈禱料としてだまし取った印鑑などのセ一ルスマンニ人に、青森地裁で執行猶予つきの有罪判決が言い渡されている。

    これらの事件の場合、統一教会や事業部門のハッピ一ワ一ルドや事業当事者は、統一教会員やハッピ一ワ一ルド系のセ一ルスマンであることを完全否定しているが、金額返済などトラブル解決に当っているのはハッピ一ワ一ルド本社関係者やその顧問弁護士であることなどから、その関係を否定することはできない。また警察も充分承知している。教会側が懸命に否定する事業部門との結びつきについても、それを証明する多くの資料が存在する。

    経済企画庁の外郭団体、国民生活センタ一が五十七年十一月、全国二百四十七の消費者センタ一、国民生活センタ一について五十一年来の相談について調査した結果、印鑑、大理石のツボ、多宝塔に関する悪質な販売件数が計二十六百三十三件、金額にして約十七億円に上っていた。

    その報告書は「最初印鑑を購入させられ、次に『まだたたりが消えない』等の理由で大理石の壺をより悪質な手口で購入せられる、といったように、同一人が複数の被害を受けたケ一スが相当数ある」「消費者への勧誘は、口頭によるだけでなく購入しなかったため実際に不幸に見舞われたという人のケ一スをスライドやビデオテ一プで見せる。商品を祈禱した後で渡し、祈禱料を請求する等手の込んだものがある」と書いている。

    これらの統一教会員の物品販売の元締めは、東京の渋谷区神南に本社をもつ、ハッピ一ワ一ルドである。渋谷パルコの道をはさんで前のビルに大きな看板が出ている。同社側は外部に対し統一教会との関係を否定しているが、同社の古田元男社長は統一教会の経済担当副会長の地位にあり、アメリカの「文鮮明氏」への資金送金を一手に握っている人物である。

    現在はアメリカの元ニュ一ヨ一カ一・ホテルの伝道本部にほとんどいて、「文鮮明氏」の指示をうけながら日本から人事異動でやって幹部や教会員の職務の割り振りなど、日本人の采配に当っている。

    この古田社長のハッピ一ワ一ルドの下、全国を十地域に分けて、販売会社、さらに特約店、小売店という四段階の販売網が組織されている。セ一ルスに従事する統一教会員は小売店に所属するが、あくまで個人の委託セ一ルスマンとして登録してある。
    したがって、未端のセ一ルスマンが引き起したトラブルは、小売店、特約店でくいとめられ、セールス本人も取調べなどに対して決して統一教会員であることをいわないように指導されているため、本社のハッピ一ワ一ルドや、統一教会の名がトラブルにからんで決して表面に出ることのないよう、体制ががっちりと固められている。