腱膜性眼瞼下垂の手術については以前にも記事にしました(こちら)。この手術の本質は、加齢や物理的な摩擦で伸びてしまった挙筋腱膜を瞼板に固定し、挙筋の力が瞼板に正しく伝わるようにすることです。実際の手術では、多くの患者さんにおいて瞼の皮膚が伸びて余ってしまっているので、同時に皮膚を切除することになります。
この、余っている瞼の皮膚をどこで切除するか、については二つの選択肢があります。
①瞼縁切開
特徴:二重になる
メリット:腱膜固定が同時にできる
デメリット:腫れが強い
②眉下切開
特徴:印象変化が少ない
メリット:腫れが少ない
デメリット:腱膜固定は同じ傷からできない(腱膜固定のためには瞼縁を切開する必要がある)
図解すると次のようになります。
どの方にも共通することですが、眉に近いほど皮膚は厚く、瞼縁に近いほど皮膚は薄くなります。全体的に皮膚が非常に厚いタイプの方は、眉下で皮膚を切除した方がより自然になります。ですが、腱膜固定が一緒の傷からはできませんので、後日、腱膜固定の手術を別に行う必要があります(先に腱膜固定をする場合もあります)。
眉下での皮膚切除と瞼縁での腱膜固定の二つの手技を、患者さんの強い希望で同時に行ったこともありますが、手術の質が下がるのでお勧めできません。また、眉下切開において保険が適応されるのかについては、ケースバイケースだと思います。機能改善が目的ということが明らかな場合には、眉下切開も保険で行っていますが、瞼縁で切開すれば1度で済む手術を、整容性を向上させる目的で眉下の切開にするのであれば、やはり自費で行う必要があると思います。形成外科医であれば、機能の改善を目的に保険で手術を行ったとしても、整容性に配慮して行うのは普通のことですが、整容性を特に重視した手術の場合には、手術の目的、手術にかける時間、手間、材料費などが全く違ってきますので、多くの病院で自費になっているのはそういう理由だと思います。