瘢痕切除(3)「分割切除」とは | Life can be beautiful. (みかこクリニック院長 高木美香子のブログ)

Life can be beautiful. (みかこクリニック院長 高木美香子のブログ)

愛知県一宮市の美容クリニック(形成外科/美容外科/美容皮膚科)
一宮駅東口から徒歩1分(一宮駅東口ビル5階)
名古屋駅・岐阜駅からも快速で約10分です
形成外科専門医の院長が、女医ならではの美容医療をお届けします
ホームページは t-mikako.com

(つづき)

 

「分割切除」とは、一度で切除するには大きすぎる皮膚腫瘍や瘢痕を、2回または3回に分けて切除する方法です。1回目と2回目または2回目と3回目の手術の間は、4~6か月の間を開けます。その間に皮膚に余裕が生まれ、次の切除と縫縮が可能になります。手術の回数は増えてしまうというデメリットがある一方、最終的な傷の長さを短くすることが可能になるというメリットがあります。

 

師匠である市田正成先生の御著書『スキル外来手術アトラス』より、図をお借りします。

 

上の図でご覧頂いたように、1回で切除した場合、横径3倍の長さになる傷の仕上がりの長さが、分けて切除することで、短く仕上がっています。

 

状血管腫の場合、血管腫が増殖した際に過剰に伸びた皮膚が幅広い瘢痕になっていて、(色素性母斑などとは違って)見た目の瘢痕の幅よりは実際の正常な皮膚の欠損がそれほど大きくない場合もあります。この患者さんの場合も、もしかすると1回で問題なく縫合できる可能性もあると思われました。しかし、可能な限り短い傷で、しかもドッグイヤーを絶対に作らないという確信も持てませんでした。

 

 ご両親には、傷跡を短くするためには「分割切除」という選択肢もあることを説明しました。その結果、「手術の回数が増えてもいいから、最終的に綺麗に仕上がる方法を選択して欲しい」とのご希望をされました。そこで、1回目の切除ではドッグイヤーが残る前提で瘢痕のみを切除し、2回目の切除でドッグイヤーも含めて切除しつつ瘢痕形成を行うことで、可能な限り傷を短く綺麗に仕上げるという方針が決まりました。

 

 

 手術のデザインの写真が無かったので、図解します。

デザインは瘢痕ぎりぎり、傷両端の正常な皮膚はほんの1mm程度つけただけでデザインを行い、切除・縫縮しました。先ほど、「ドッグイヤーが残ることをやむなしで」と書きましたが、それでも、可能な限りドッグイヤーができないように工夫した縫合を行いました(具体的には、両端の埋没糸をかける角度を傷の中心に向けること、8の字縫合を2か所入れました)。

 

 

 

右上の写真は術後2か月目の写真ですが、やはり私の目から見るとドッグイヤーは若干気になります。2回目に瘢痕形成で平らに仕上げる予定だったのですが、ご両親にとっては期待以上の傷の仕上がりだったそうで、「これなら、2回目の手術は必要ないのではないか?」と言われ始めました。それならば、この状態から可能な限り綺麗に仕上げることをめざしましょう!ということになりました。

 

ここで登場するのが、「ピタシート」と、フラクショナルCO2レーザー「アンコア」です! 皮膚は紙面上の理論のようにはいきません。外力によって変化する可能性があります。そこで、術後にピタシートを開始して頂き、フラクショナルCO2レーザーも3回頑張って頂いた結果が、最初にもご紹介した、下の写真です。

 

 

 

正直なことを言えば、上方の瘢痕の端にまだ若干ドッグイヤーの残存が見られるのですが、もし、さらなる改善を希望されれば、その手段はあります。しかし、本人はじめご両親も結果に大満足してくださいました。「この治療、超お勧め!どんどん宣伝した方がいいよ!紹介していいよ!」と、ブログへの掲載も快く了承してくださり、今回ご紹介できる運びとなりました。ご快諾ありがとうございました。