アンケートの結果からではありませんが、
陰部から採皮した場合、術後に合併症が起きた方(=傷に問題があった方)
について調べてみました。
陰部から採皮した人が24名で、そのうち術後の陰部の傷に問題が起きた方は、カルテを調べた限り、4名いらっしゃいました。それらの4名の方がどのような状況であったのか、カルテの記載と記憶が残っている限りでご紹介したいと思います。
Aさん:術後に創(傷)が離開し、再縫合するも、再々創離開したため、二次治癒させた方
Aさんの場合で考えられる要因としては、BMIが高かったこと、比較的大きめの乳輪であったが採皮は1枚で行ったこと、美容業界で術後早期から立ち仕事に復帰していたこと、などがあったと思います。
Bさん:術後創離開
Bさんの乳輪のサイズは中程度で、大きくはありませんでしたので、1枚で採取しました。看護師さんで、術後すぐに職場復帰する必要があったそうです。復帰後、患者さんのベッド移動で患者さんを抱えて中腰になった瞬間、「ブチッ」という音がして、傷が開いたそうです。再縫合するほどの大きさでもなく、そのまま二次治癒させました。私自身、術後の安静はある程度必要だと考えさせられたケースでした。
Cさん:術後創離開
Cさんの乳輪サイズは大きく、2枚で採取する方法も選択肢にあがったのですが、整容性を優先し、1枚で採取しました。やはり医療関係の仕事の方だったため、術後に安静にはできなかったそうです。創離開が起こりましたが、開いてから少し時間が経過していたので、そのまま二次治癒させる方針としました。この経過のせいで、術後の痛みが非常に長引いて、とても辛かったようです。
Dさん:術後創離開と浸出液
Dさんの乳輪サイズは小さめだったので、迷わず1枚で採取しました。術後しばらくして傷から浸出液が出たので見てみると、その部分が小さな傷(穴)になっていたそうです。傷は小さかったため、軟膏処置で治癒しました。特に体を使う仕事ではなかったようです。
以上、4名の経過をご紹介しましたが、その4名中3名の方で、術後の安静を保てなかったことと合併症が関係している可能性があると思われました。その3名の方のうち2名は乳輪が比較的大きい方でしたので、やはり、『傷が大きいにもかかわらず安静が保てない場合には合併症が起こりやすい』可能性があるのだと思います。
合併症を減らすためには、縫合する形成外科医の技術を向上させることが大前提ですが、それと同時に、この方法を選ばれる患者さんが、合併症が起こりやすい要因があるのかについても考える必要があると思いました。傷が治りにくい要素があるか、乳輪の大きさがどうか、術後の安静が確保できるのか、などなど、患者さん個々について検討し、方法を選んだほうがよいと思いました。合併症が起きやすそうであれば、タトゥーを選択するか、整容性は若干落ちますが、継ぎ目のある2枚で皮を採取して傷を小さくする工夫を加えるなど、さらに検討する必要があると考えさせられました。