(つづき)
木沢記念病院に転職するにあたって、『美容診療』(特に肌の治療)に力を入れることにしたのには幾つか理由があります。
まず、私にとっての美容治療の修行先であった「いちだクリニック」での在籍期間が、外科的な高いレベルの手術(フェイスリフトなど)をマスターするには若干短かったこと、次に、あくまで勤務医である以上は、訴訟リスクの高い美容手術を行って病院側に迷惑をかけるわけにはいかないこと、そして、すべての女性が外科的手術で別人のように若々しくなりたいと思っているわけではなく、むしろ肌がきれいになるだけでかなりの女性は満足できるのではないかと思ったこと、などがその理由です。
じゃあ、美肌治療なら簡単で修業期間の短い医師であっても誰にでも直ぐ出来るようになってリスクがないのかというと…、とんでもありません。当然ですが、美肌治療にもきちんとした知識と経験が必要ですし、美肌治療の施術にも一定のリスクを伴っているものです。いちだクリニックでも美肌の治療は行っていましたが、木沢記念病院に移る際、私は明らかにその経験と勉強が足りないと感じていました。
そんな時、私を助けてくれたのが、福岡の形成外科医であり大学時代からの親友でした。彼女は、形成外科の専門医を取得した後、総合病院の形成外科部長を経て、福岡でも有名な美容皮膚科・形成外科に就職していました。総合病院の形成外科を切り盛りした経験のある彼女は、私がゼロから形成外科を立ち上げ軌道に乗せるということの大変さをよく分かってくれていたのだと思います。勤務先のクリニックの院長先生に私を紹介してくれて、その有名クリニックを見学する道筋を作ってくれました。初めてお会いさせて頂いた院長のM先生(女性の先生)はとにかく懐の深い豪快な大先生で、いきなり飛び込んできたにもかかわらず、私が置かれている状況を聞くと、次から次へと惜しげもなく色々なことを教えて下さいました。有名クリニックだけあって患者さんの数が非常に多く、症例も幅広くありましたので、私は可能な限り週末などを利用して岐阜から福岡に日帰りで通い、その度に、治療法はもちろんのこと、トラブル時の対処法や収益性の面でのアドバイスなどなど、本当にたくさんのことを勉強させて頂きました。今、私が木沢記念病院で美容診療をやっていけているのは、市田先生が基礎を与えて下さったのはもちろんのことですが、福岡のM院長先生のおかげなのです。この場を借りまして、改めて感謝の気持ちを表し、あつく御礼申し上げます。本当にありがとうございました。(また、副院長先生にも優しく親切にいろいろ教えて頂きました。副院長先生にもここで御礼申し上げます。それと親友にも…、親友はまあ今度会ったときでいっか。)
さて、明日から参加する美容外科学会は、そのクリニックの大好きな先生方と再会する年に一度のチャンスでもあり、またその先生方を通じて知り合った(特に美容皮膚科の)先生方とお会いするチャンスでもあります。時には(学会夜の部として)女医会が開かれることもあるのですが、その女医のネットワークと情報量、これはすごいものがあります。「どこの化粧品がどうだ」、「あそこの会社の新しい複合機、使ってみたけどふれこみと違って良くないわよ」とか、果ては業界の人間関係にまつわる裏話まで。私が一人では決して知ることの出来ない貴重な情報の数々を得ることが出来るのも、この素晴らしき女医ネットワークのおかげなのです。
もちろん、学術的な最新情報の数々を学んでくるというのが学会参加の一番の目的ではありますが、その他にも学会に参加する裏の意義があることについては、このブログでも何度か書きましたので、ここでは敢えて書きません。ですが、(昼の部、夜の部を問わず)学会に参加して学んだことは、実際の診療の即戦力となることが多々あることは皆さんもうご存知の通りです。
というわけで、金曜日までちょっと休診します。
決してスカイツリーになんて登って来ませんから!