前回の続き
今現在、ウシクが1位で井上が2位。この二人に共通する事がある。
2つの階級で完全統一。誰でも思う事だが、それならもう一人テレンス・クロフォードもそうだろう。
だが、他にも共通する事がある。
それはボクシングの本場アメリカにおいて不人気階級のバンタムとクルーザーで完全統一している事。
そしてその偉業はその過程においてWBSS(World Boxing Super Series ワールドボクシング・スーパーシリーズ)
の存在なくしては語れない事だ。二人とも優勝している。
優勝したから、ではない。WBSSがあったから。でその怪しくも華々しい舞台で優勝したのだ。
WBSSは2回行われた。3回目も発表だけされて終わった。
1回目はクルーザー級とスーパーミドル級。2回目はバンタム級とSライト級とクルーザー級。
このWBSSで井上は2団体王者になる。既に2団体王者だったウシクは4団体王者になる。
そして一気に複数階級制覇路線から4団体統一路線に舵が切られた。。いや両方狙うように(プロモーターが)なったと思う。
団体の権威は、、、まぁ儲かれば良いのだろう。
WBSSはコモサAGだかなんだかと、、、とにかくイベント企画会社数社の企画だったと思う。資金集めに成功しそして
空中分解した。詳しくは長くなるし間違いもあるだろうから割愛。
勝手な妄想、というか思ってた事。
その後、というかそのさなかリチャード・シェイファーが暗躍する。14年にGBPを追われ、WBSSは16年から開催。
GBPの後にメイウェザーと組むはずが実現せず、本場とされるアメリカ以外の国でボクシングブームを作ろうとしたと思う。
当時は中国が大きなターゲットだった。16年にリングスタースポーツ設立をした後、プロベラムを設立。
ドネアとも契約した。他にも世界ランカーや王者、レジス・プログレイス、バドゥ・ジャック、リッキー・バーンズ、エドワーズ兄弟、ドニー・ニエテスなどと契約していったと報道されていたし、カシメロvsバトラーの興行権も落としていた。開催地候補は英国と中東だったと思う。
特に軽量級のボクサーを集めていたのは明白だった。
軽量級において日本の市場は今更井上が言うまでも無く世界でも大きな市場だった、というか他に無かったとでも言うべきか。
ただここ十数年、日本経済が停滞し市場が大きくならなかった。他国で軽量級市場が無いので流出していく事は無かったが。。
階級を細分化して団体を乱立して王者を乱立して、、、頭打ちで。。改めて軽量級市場を開拓したい狙いはあった。
アプローチは様々。
2010年には長谷川ーモンティエルでJBC未公認ながら統一戦のみ認めつつ長谷川が勝てばWBO王者は空位になるとか何とか。。。その後12年には正式にJBCがIBFとWBOを認可団体にして4団体乱立が日本でも認められた感じ。
WBOはその後もWBOアジアパシフィックも認めるように働きかけたしJPBAが無理矢理?JBCに認めさせた。
日本に大きな魅力があるというよりもこの頃は中国進出を狙っての足掛かり、、ボクシングに限らず世界中の企業が進出していたからだと思う。
結果的に中国進出はその後のコロナなんかで棚上げ状態になっているが。。。
習近平さんはボクシングが好きだとか聞いたがどうなのだろう?
話しはやや逸れたけれど、色んな思惑が絡みあって本場アメリカ以外の市場を呼び覚まそうとしていたわけだ。
本来は人口と経済バブルの中国、オイルマネーの中東。それから下地のある日本。日本以外の国々はボクシングという競技を
というよりも別の意図があったとしても。。
この動きに私は凄く期待した。中東や中国や英国でアメリカ以上の規模の興行を行う。そして今までスポットライトを浴びなかった階級を。。。だが、それはあっという間に終わってしまった。プロベラムに犯罪組織との関係が明るみになったから。
間違いなくリチャード・シェイファーは有能だったと思う。スイス銀行から転身してカネの集め方・使い方を知っていたと思う。
でもやり過ぎた。利益を追求し過ぎた。
だけどこの様々な怪しい?動きがあったからこそ不人気階級で統一王者が生まれたし生まれるきっかけになったと思う。
井上はWBSSでNHKニュースに取り上げられスターダムにのし上がっていった。
一般的にはテレビからネット配信の波に乗ったと思われるだろう。
当たり前だが、ウシクも井上も両者の圧倒的な実力があっての事だ。
だが、エンターテイメント要素が大きいボクシングにおいてアメリカ以外のボクサーがアメリカを本拠地にして大きな評価を得るためには選手本人ではどうにも出来ない大きな力と思惑があって初めて成し遂げられる。
そしてたとえ王者になろうとも評価されようとも決して主役にはなれない。ロマゴンがいくらPFPの座を長く維持しようとも
それにふさわしいほどのメインにはなれないし100万ドルのファイトマネーを得ることすら中々出来なかった。GGGがいくらKOの山を築こうともカネロとのビッグマッチを手に入れた時はBサイドのままだった。そんなもんだった。
ウシクはクルーザー級王者の時代、2団体統一王者でも防衛戦はメインでもなくファイトマネーも10万ドルいくかいかないか
だった。
井上はバンタム時代にアメリカ進出を試みたが日本で報じられているような扱いでは無かった。
だが、二人にはWBSSで確かな足がかりを得ていたと思う。あとは導火線に火をつけるだけ。
火をつけるに値するボクサーなら。
火はついた。そして大きく燃え上がったのは奇しくも同じ5月。アメリカで試合をしなくても世界中から注目される試合がアメリカ人以外同士で行われたしアメリカなら絶対に実現しなかった観客を動員し巨額のファイトマネーが軽量級で支払われた。
己の拳を信じ、リングで結果を出し続け誰にも文句を言わせない まぁアイツなら仕方ないな と思わせた
ウシク。
対抗馬の井上も未だに底を見せずに圧倒的な勝ちを見せつけている。
背後にどんな思惑があれど、ここまで来たらもうAサイドだ。
井上には自国開催ながら圧倒的にAサイドだ。ウシクは、、残念ながらあらゆる意味でAサイドにはなっていないかもしれないが
それでも今までのような扱いを受ける事は無い。
頂点になった彼らの挑戦・モチベーションとは何だろう?
彼らが勝つか負けるか分からない選手が現れるのが楽しみだ。
有能な世界中のプロモーターさん、一極集中はどんな業界でもつまらない。新たな仕掛けを楽しみにしています。
そして仕掛けるには新たな強いボクサーが必要だ。
どんなに強いボクサーでも相手がいないと始まらない。
スポーツは常に相手次第であり、どれだけ強い勝ち方をしても、対戦相手の質が伴わなければ基本的に高評価はされない。
ここはリング誌に共感する。
ウシクは再戦の可能性がある。再戦でもまた見たいと思わせる戦いだった。
井上には新たなライバルの出現を期待する。ネリのような安っぽい無理矢理作られた因縁は要らない。
私はもう数試合も井上の試合を観ていない。日本人として勿体無いと思われるかもしれないが観たい相手が現れないのだから
仕方ない。ボクシングの試合で特に絶対王者の結果の分かっている試合、つまりは水戸黄門的試合は私は要らない。
どっちが勝つのか分からない、どっちが勝っても終わった後フゥーっとため息が出る試合が観たいだけだ。
過去の試合や選手と比べるのもナンセンスだ。取り巻く時代が違う。
ジョー・ルイスとマックス・シュメリングの時のように民主主義とナチスが背景に見られた時とは違う。
7~8千万人がラジオに耳を傾けて最強の男たちの戦いを音で感じた時代とは違う。
今の時代は誰もが知らなくても良い。どんなにトップニュースでボクシングの記事が上がってきてもそれはあなたのPCやスマホ
だけだ。それでも全然構わない。受動的ではなく能動的に自分の興味を探す事が出来る時代。
私はボクサーファンの気持ちは知らないが、いつだってボクシングファンは身勝手で欲求のカタマリだ。
どんなに良い試合を観ても、もっと観たい試合が出てくる。
PFPはいつだってその瞬間ごとに変わる。変わる事を恐れず楽しめればボクシングがもっと楽しくなる。
ありきたりだが強いものが常に勝つのではなく勝ったものが強いのだ。だけど、その瞬間でも強いヤツはやっぱり勝つ。
そして今日も皆さん独自のPFPに名を連ねている。
間違いだらけかもしれないがただの戯言とご容赦を。