文科省のキャリア教育を深掘る-その61「キャリア・パスポートを書かない背景」 | 問題意識の教材化(MIK)ブログ

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今日の一日一読は第4章の最後までです。ここではキャリア・パスポートを踏まえたカウンセリングが取り上げられていたのですが、高校生がキャリア・パスポートを書こうとしないという事例が取り上げられていました。ここでは小中学校では書けていたものが高校生になってあえて書かない心理的な背景に言及していましたが、その問題は本当に学生当人にだけあるのかが疑問でした。


「高校入学から在学期間半ば頃までは思春期のただ中にある生徒も多く,自己に不安をもち 自己を見失っていたり、挫折や失敗にこだわって自信のない生き方をしていたりする生徒も少なくない。 例えば、「体育祭を振り返って」 「1学期を振り返って」 等のワークシートを作成する場合、ほとんど記入しない、あるいは 「わからない」 「特にない」等のみを記入して、机に突っ伏すような生徒もいるだろう。ここで重要となるのは、そのような生徒が不真面目な態度で 「キャリア・パスポート」に対峙しているとは限らないこと、むしろ、そうでない場合が多いことに気づくことである。思春期を迎える前、 例えば小学校中学年くらいまでであれば、自らの学習状況を振り返ることを目的としたシートには、「○○を頑張った」 「○○ができるようになった」 等々を躊躇なく記載できるケースが多い。しかし、そのような児童期の安定した (幼い) 自己理解・社会理解から脱し思春期を迎えると、不安定な自分自身や不透明な将来展望などから来る不安や、高校入学後に得た幅広い層の友人等との比較から生じる劣等感や羨望,既存の社会を代表するかのように見える学校生活そのものへの批判的・ 否定的感情などが入り交 じり,肯定的な自己理解を基にした振り返りが困難となるケースが増える。これは、成長の証とも言うべきものであろう。」(113ページ)


この説明は思春期を迎えた高校生の心理を踏まえたという意味では妥当かもしれませんが、そもそも小中学校での蓄積を踏まえた高校生がなぜキャリア教育に適応できないのかという現実をもっと直視した方がいいと思えました。明らかにここで示されている高校生のシグナルは思春期の葛藤を乗り越える成長という単純な話で済まされないと感じています。