しかし、この地域―病院が位置している辺りや昔村があった場所―では、数十年前から行方不明者や神隠しなるものが起こっている。

市という範囲で見る数字と例の地域で見る数字で話は変わってくる。

市のおよそ9割に当たる失踪があそこで起こっているのだ。

あの場所に何かあるのは間違いない。


私は別の本から、つまり史実とされている本から何か手掛かりになりそうなものがないか調べてみることにした。

「わがまちの歴史」


江戸時代中期、当時の△藩の領地内であった○○でも飢饉が発生し大勢の人々が餓死した。
当時から中規模な町として機能していた当市では飢餓による死者は少なかったものの、現在市として合併された××村、△町、×○町、□郡では大勢の死者が出た。

天災を鎮めるために様々な儀式が行われたとされるが、資料はあまり残されていない。
幕府へ提出されたとされる餓死者や石高の信ぴょう性は低いとされている。
それだけ当時この辺りの混乱がすさまじいものだったということである。

×○寺には貴重な当時の様子を描いた「○○餓死不食地獄絵図」が残されている。

また××町(旧××村)では慰霊塔が建てられている。



歴史の授業で習ったようなことを今更目にするとは思わなかった。
しかし、私にはこの話が何か謎を解くカギになりそうな気がした。

私の足は自然と×○寺に向けて歩き出していた。

日は傾きはじめていたが、私の車は止まることなく目的地を目指していた。