まるで映画の中の世界だった。
ううん、映画でなくてもいい。
漫画でも、小説でも、ドラマでも、とにかく何でもいい。
現実とは思えない光景を。
その時まさに、僕は目にした。
しんと静まっているはずの見慣れた住宅街は既に沢山の人で溢れ返っていた。
パトカーの赤い光が住宅街を照らして異様な光景だった。
幼馴染の香織のお母さんが僕の姿を見つけて、
「大地君、来たらダメよ!見たら、ダメよ!」
と泣き叫びながら走り寄り、僕を強く抱きしめた。
お母さんよりもふっくらしてる香織のお母さんの腕の中は柔らかくて温かく、
すっかり湯ざめした僕の体を強く締め付けた。
おばさんの腕の中。
泣き崩れ力を弱めるおばさんの腕の中で僕は確かに見た。
それはこの世の中で一番見てはいけないもの。
それは、この世の中で一番見てはいけないもの。
公園へと走りながら強く僕は願っていた。
神様なんて心から信じたことはなかった。
だけど神様、
どうか、どうか、
僕からお父さんとお母さんを奪わないでください。
明日から、ううん、今すぐ、今から、僕は良い子になります。
だからどうか、僕から2人を奪わないでください。
僕のこの、不安な何かを感じる気持ちを勘違いだと笑ってください。