お父さんは小さい頃からよく僕に言っていた。



「大地は男の子なんだから、何かあった時はお母さんを守るんだよ」



なんで?そう僕が聞くと、お父さんはいつも同じ答えを僕に返してくれたのを覚えてる。



「お母さんはとっても弱いんだから。お父さんと大地で守るんだ。」


そう話すお父さんはいつも以上に優しい目で僕を見つめて頭を撫でてくれた。






そんな優しくて強かったお父さんは、もう3年も前に死んでしまっていた。


いつもの会社帰り。

最終電車に乗り、最寄の駅を出たところがお父さんの最後の場所になってしまった。



「今駅に着いたよ、今、家に向かって歩いているよ」



とお母さんに電話をしてきていた。


それはあまりにいつも通りの夜だった。


梅雨明けを待つ季節で、蒸し蒸ししていて暑かった。


お父さんの帰るコールは二人が恋人時代から欠かさずあるらしい。


いつだったかは忘れてしまったけど、お母さんが若い女の子みたいな顔をして僕に話してくれたのを覚えている。


たまに電話がない時は、お父さんが体調が良くない時や仕事の付き合いで朝帰りになる時くらいだと言っていた。


いつも通りお父さんの電話に嬉しそうに出て話してるお母さんの横で僕は風呂上がりのアイスを食べていた。


その時僕は小学6年生で12歳だった。


お父さんに薦められて入ったサッカークラブで毎日鍛えていた僕はその日もクタクタだったのだけど、


お父さんが直に帰ってくると知ったら今日あった事、あれもこれも話そうと胸が踊っていた。