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舞台「アマデウス」

10/25に久留米で無事に全39公演を
終えることができました。

応援してくださった皆様
観劇してくださった皆様に心から感謝します。


完全にアマデウスロスです。
大和田美帆です。
こんばんは!


(長くなるよ、今日のブログ、だいぶ長くなる予感がするわよ。いつもとは違うわよ、ちょっと真面目よ)


昨日、実は
いつものスーパーへ買い物へ行ったとき

入り口で買い物カゴを手にした瞬間に
身体が固まってしまったんです。

「今から私は今夜の献立を考えながら
これまでと変わらない日常へ戻って行くんだな。」

そう思うと

突然、言葉にできない喪失感に襲われました。

私の中にもう
私が2ヶ月半の間、24時間、脳と心を共にしたコンスタンツェはいないんだ。愛するヴォルフィとの会話も憎たらしいサリエリとのやり取りも、しっかりと過去のものになってしまったんだ。。。

大千秋楽から2日間経って初めて実感して、
涙が止まらなくなってしまったのです。

帽子で泣き顔を隠しながら
変わらずに野菜を選んで日常に溶けていく中
ブログにこの今の想いを綴ろうと決めました。


〜コンスタンツェとして
〜大和田美帆として
〜母として


今回は思い入れが強すぎるので三部作です。(笑)

長っ(笑)
うん。長いよね。

誰が読むんだって感じよね、、、。

インタビューか!って感じよね、、、。


とりあえず今日の第一部は私が演じた、モーツァルトの妻、コンスタンツェという女性についてです。
(何日かかるんだw)



今日のはきっと長くなるし
観てない方にとっては
なんのこっちゃ分からないことばかり
綴るかもしれないけれど
想いが止まらないので書き進めちゃうぞ。



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(登場の時の衣装。チュウチュウフェイスと共に)




コンスタンツェは役をいただく前から
正確にはミュージカル「モーツァルト!」を見た20代前半のあの日から私の中でとても魅力的な注目すべき女性でした。

ミュージカル版のコンスタンツェは、

家族や生活のしがらみの中で懸命に美しい花を咲かせようともがき、モーツァルトをその花を咲かせるための水と信じているような脆くて不安定な女性。というイメージ。


いつか演じてみたい役。

いつもそう思っていました。

そこで頂いた、松本幸四郎版「アマデウス」でのコンスタンツェ役。


あのコンスタンツェを演じられるなんて。
コンスタンツェで復帰できるなんて。
あの喜びは今もはっきりと覚えています。

台本をいただき、資料として何冊か本を読み
史実と照らし合わせながら映画も見ました。
映画は学生時代に見た時よりも深く感動しました。

顔は眉毛が太くミスタービーンのような個性的な顔で決して美人とは言えない女性。(と資料や写真にあります)


アマデウス版では

ミュージカル版とはまた違う角度でモーツァルトとコンスタンツェを描いています。

実は「アマデウス」ではコンスタンツェについて語られる台詞は決して多くありません。
サリエリとモーツァルトの物語だからです。

サリエリやモーツァルトがどんな男性だったか説明がある中、コンスタンツェに関してはあまりない。

読んだ資料の中で印象的だったのは

「彼女が結婚したのは天才ではない。小柄で細身の男だった。彼は彼女をよく笑わせてくれた。それまでの彼女の人生には、笑いというものが欠けていた」という言葉でした。

もっと愛されたくて
もっと笑いたい。そう思っていたのかな。

その言葉はコンスタンツェの軸になりました。





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(1幕とは対照的な2幕最後の衣装)






モーツァルトが動き、コンスタンツェがそれをどう受けるかによってコンスタンツェという人間がお客様に伝わる。そんな構図がなんとなく見えた時、モーツァルト役の桐山さんとどんなお芝居ができるのかとても楽しみでした。

逆にサリエリとのシーンでは受け身ではなく動き出す方です。彼を翻弄し、彼の心を揺さぶらなければならない。幸四郎さんという大先輩を前にこの台詞が言えるのかどうか、、お稽古が始まる前の私は自信がなくて不安で仕方がなかったのを覚えています。


全ての公演が終わった今言えるのは


私の演じたコンスタンツェは
幸四郎さんのサリエリ
桐山くんのモーツァルトでなければ
生まれなかったコンスタンツェだということ。


お芝居は自分でするものじゃない
相手とするものだ。

とよく聞くけれど

今回ほどそれを実感したことは
なかったかもしれません。

特に今回
私はほぼこのお2人とのシーンだったので
 
資料で史実を調べたり
コンスタンツェの背景を調べたことの何倍も、

「目の前にいる相手と生で会話する」

ということがコンスタンツェを生み出す上で大きく影響しました。お二人のおかげでコンスタンツェは生まれたのです。

お稽古の段階からいろんなことを試して
それも、打ち合わせするときもあるけれど
打ち合わせなしで即興でやってみても
それを楽しんでくれる桐山くんと、私たちのそれを良しとしてくださる演出家としての幸四郎さんがいらしたから、、、(たまにはっきり却下もされたけどw)

毎回新鮮な気持ちで演じることができました。


だからこそ

私は舞台上でただコンスタンツェとして存在することができました。私は「役になる」ということはできないと思ってる人間なので、私自身がコンスタンツェになるということはないけれど、せめて私の脳や心がコンスタンツェに寄り添うというか、共感して共存して代わりに表現するようなそんな感覚でした。


モーツァルトとの終盤のお芝居は桐山くんのお芝居が毎回違うということもあって(私に気づく日があれば気づかない日も。私を求める日があれば求めない日も。楽譜を持つ日もあれば持たない日も。などなど)

受けるこちらの感じ方も毎回違って、だから言い方や立ち方も変わって、想いが変わって、、、(きっとそれも幸四郎さんが違うから桐山くんのお芝居が変わるという連鎖もある思うのですが)自分でも想像できない結果になることが多々ありました。

救えなくて支えてあげられなくてごめんなさい。という想いが強い日もあれば、最後まで音楽には勝てなかったと寂しい気持ちになる日も。息子のように見える日もあれば、他人のように見える日もありました。 

「音楽になりたい」と思った日もありました。彼の見つめる楽譜になりたい。彼の人生が1つのオペラだとしたら、私は休符になりたい。次の音を生み出すまでの休み所。ホッとする存在、次へのパワーを養う存在。そんなことを思った日もありました。


同じように「パパパパっ」と寒さに耐えながら、気持ちが離れつつある2人が再び音楽で繋がるシーンも本番に入ってからどんどん変化していって、初めて稽古した日の表現とは全く別のものが出来上がって行きました。

1幕から笑い続けてきた2人が笑えなくなった時、ふと訪れる最後の笑顔の場面です。私が1番好きなシーンかもしれません。


舞台はナマモノとよく言うけれどまさにそうで、
どんなに稽古しても考えても
その時の体調や声の調子や気温や、そしてお客様によっても変化していきます。誰かのミスがあってもそれはミスではなくなるし、今までなかった感情が突然生まれたりする。

だから舞台って面白い。そう思う日々でした。



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今回はストーリーも含めて、人の想いがどれほど多面的で複雑なのかを知りました。

そう言った意味で、コンスタンツェの最後の台詞は
本当に興味深かったです。

愛する夫を号泣しながら看取り
立ち上がれないほど泣き尽くした後

コンスタンツェは
モーツァルト学の最高権威として
突然、聴衆に向かって嘘をつきます。

モーツァルトが下品でもなく
純粋で素晴らしい人間だったと伝えるのです。
女好きだったことも、浪費家だったことも隠します。

そして楽譜をなるべく高い値段で全て売ったことを報告して去っていくのです。

完璧にしたたかな女なのか?

それとも
心から愛した人のことを他人には悪く伝えたくなかったのか?


幸四郎さんから「コンスタンツェが一面的ではつまらない」と助言をいただき、なるほどなと思いました。

結局人にはいろんな顔があるし、一面的では描ききれない。自分でさえ自分のことがよく分からないのだから。

子供二人と借金を残されて
コンスタンツェが苦労したことは想像できます。

そして結果的に、
コンスタンツェが楽譜を売ったことでモーツァルトの音楽は再び注目されて世界的に有名になりました。そして殆どの人が、彼が変態で下品でひどい男だったことは知りません。ただあの美しい音楽だけが人々を魅了しています。
そこにコンスタンツェの働きが影響していたことは言うまでもありません。


本当に悪妻だったのか否か

本当のコンスタンツェはどんな人間なのか

分からないから人間って面白い。

観た方が感じたことがすべでです。



ただ、賞賛され続けているモーツァルトとは真逆に非難され妬まれ世界三大悪妻とまで言われるようになった彼女の人生を想わずにはいられません。


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コンスタンツェさん。
天才を愛し天才に翻弄され、
周りに妬まれ羨ましがられ、
6度の出産と4度の死別を経験し、
貧乏になり夫に狂われ、一度は離れたものの
それでも愛し続けてそばにいたあなた。
2人目の旦那様とモーツァルトのことを
伝え続けたあなた。

幸せでしたか?


モーツァルトは結婚していた当時、コンスタンツェと離れるとすぐに寂しくなって手紙を送ったといわれています。残された手紙には下品で卑猥な言葉だけでなく必ず愛の言葉が綴ってあります。

そして手紙の最後には必ずこう書いてたそうです。


「愛する君に100万回のキスを」







最高っ!!!



実在の人物、コンスタンツェに
心からの敬意と愛と感謝をこめて。



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