タイトルにもした「必要は発明の母」。

誰もがご存知の、有名な言葉ですよね。

この「発明」に当たるのが簿記〈Book Keeping〉です。

そして、「必要」に当たるのが、会計〈Account〉なのです。


「必要」を感じた時に初めて「発明」は意味を持ちます。

空を飛びたいと思う人にしか、飛行機は、ありがたいもの、

便利なものにはなり得ないのです。


Account〉は、一般に「会計」と和訳されますが、

英語では「報告」「説明」といった意味も持っています。

「会計」というと漠然としていますが、「報告」や「説明」なら

少し身近に感じられるのではないでしょうか?


「報告」したいこと、「説明」したいことがある方にしか、

「簿記」は意味を持ちません。

それをまずは頭に入れてください。


たとえば、家計簿でも構いません。

「私のお小遣いを何に使っているのか、具体的に把握したい」

「お父さんのお給料をどう使ったのか、家族みんなに報告したい」

こういった「必要」があって初めて、「発明」(お小遣帳や家計簿)を

しっかり使いこなせるのでしょうし、楽しむことが出来るのです。


これを忘れて、簿記のテクニックに走ると、

いずれ飽きたりうんざりしたりすることになるでしょう。

もしくは、「これなら絶対大丈夫!黄金家計簿決定版」

という本やソフトを次々購入する羽目になるのです。


人が100人いれば、100個の「必要」がある。

100個の「必要」があれば、100個の「発明」が生まれる。

これを忘れないでください。

家計であれ、企業会計であれ、同じことです。

人の真似だけをしても、自分の「必要」を満たすことは出来ません。

簿記を学ぶことは、自分の「必要」を満たすことが出来る

「発明」を生み出す技術を身に付けることなのです。


これから私が話そうとしている「複式簿記」と呼ばれるものは、

20世紀最大の発明』とも言われるものです。

ほらね、まさに「発明」なのです!


私が持っている資格でもある「公認会計士」は、

英語では〈Certified Public Accountant〉と言います。

何を隠そう、上記の〈Account〉の2つの意味の話は、

私の父が教えてくれたものなのです。

私が会計士になったばかりの頃、父がお酒を飲みながら

「会計、という言葉にとらわれず、説明するということが

自分の仕事だと思って働きなさい」

というアドバイスをくれました。

私はそれを心に刻んで、その後の仕事をしてきたつもりです。


父は、アメリカのコロンビア大学でMBAを取得しています。

ただ、だから父がこのアドバイスをしてくれたという訳では

ないのかもしれません。

アメリカでは、こういったことはおそらく常識なのでしょう。

だって、言葉の意味からなんとなく分かってしまうのですから。

日本語の「会計」からは、「説明」という意味が失われてしまっています。

これだけでも、マネーに関して日本はアメリカに

遅れをとってしまうような気がするのは私だけでしょうか?


さて、一番大事な話は終わりました。

次回からは、『20世紀最大の発明』~複式簿記

について、少しずつ話して行きます。