【書籍紹介】2050日本復活、新・所得倍増論 | 三原朝彦 ~あさやんブログ~

三原朝彦 ~あさやんブログ~

前衆議院議員
自由民主党福岡県第九選挙区支部長のブログです。

 

 新年お目出度うございます。本年も何卒よろしく御指導下さい。


 正月20日には世界に多大な影響をもたらすアメリカ大統領就任式がありトランプ新大統領が誕生します。氏が常識を持って国政外交を行うことを世界が望んでいます。
 一方安倍首相は早々に東南アジアの国々を訪ね平和と安定を各国の首脳と話合っています。
 本年も我国のそして世界の人々が安寧な日々を過ごせることを心から望んでいますし、私もその一旦を担う覚悟で国政に汗を流します。
 

 正月休みの少しの時間を活用して友人に薦められた日本再生を論ずる2冊を読んでの感想を述べましょう。1冊は「2050日本復活」(クライド・プレストウィッツ、東洋経済新報社)、他の1冊は「新・所得倍増論」(デービット・アトキンソン、東洋経済新報社)です。どちらも書名が示す通り我国が失われた20年、停滞の20年から如何に再起すべきかを知日派の外国人が綴ったもので、両名共に日本での実務経験をして、只々机上の議論を示すのではなく現場の実態をも批判しながら問題提起をして行きます。
 我国経済が右肩上がりの成長をしている時そのエネルギーの基本として肯定的に説明された3つの要因は皆が熟知している日本型企業制度の特徴である(一)終身雇用、(二)年功序列賃金、(三)企業内組合でした。この3つが80年代から92年のバブル崩壊の頃迄は確かに我国産業の力強の源泉でした。これらのお陰で企業労働者達は安定した生活の向上を得て来ました。あの当時は1つには東西冷戦時代で世界の市場が今日のように全て開かれた状況でなかったし、又そのお陰で我国こそが製造産業を一手に引受ける立場にあり、既存の生産物をより安く、より良く生産する事に関しては日本が一番の時でした。つまり企業に守られた労働者達は働けばそれだけ収入も得られ、であるが故にワークホリックとまで揶揄されました。
 今一つの我国発展の焦点は労働人口の市場への参入の安定的拡大で、この点を特に強調しているのがアトキンス氏の方です。質量共に潤沢な我国の労働の存在が歴史的な経済成長の押上げに寄与したのです。
90年代に入って自由化が急激に進み、旧ソビエト(現在のロシア)、中国、インド等大きな人口と経済力を持つ国々が世界市場に積極的に参入し、日本の独壇場であった安く良い品の生産を日本の10倍の人口を持つ中国を中心とする後発諸国がどんどんと押し進め始めました。日本が「坂の上の雲」と見上げて来て、何時か追い付き、追い越そうと努力して来た西欧諸国に肩を並べた時、今度は後発諸国の目標に自らがなり、今日ではこれ迄築いて来た地歩をどんどん奪われて来ています。
 世界の自由経済化、即ち人、物、金が自由に動いてより利益の得やすい場所を見つけて事業が開かれるこの現実の下で残念ながら物作り国家日本は徐々に競争で敗北を味わって来ています。この現実を打破する方法を前記の2冊の著者は色々な角度から提示しています。
 先ずプレストウィッチ氏ですが、我国の個々のこれ迄の特長を表示しながらそれらの何処がグローバリゼーション下の経済の競争に適合しないのかを説明します。常に問題となる女性進出の必要性、国際化の絶対条件の英語能力の改善、古きを捨て新しきに挑むイノベーションの重要性、官主導の規制社会を民指導の自由社会へ等々多岐にわたって著者は議論を進めます。氏の議論には対立しようと思えば常に反対の軸に立つことが出来ます。つまりこれ迄の我国が連綿として活用して来た旧来の組織や意識に対し、氏は疑問を投げかけて行きます。氏の考えに対する私の印象を簡略化して言えば今有るものがグローバリゼーションに合うか合わないかの観点で見、聞き、適わないとなれば変える勇気を持って前に進もうと言うものです。
 私は変えようと考える氏の発言には賛成を惜しみません。しかしそこには常に痛みが伴う事もこれ事実ですからそこの所を認識し、国民に説得する勇気と粘りが必要です。
 次にアトキンソンの主張ですが、簡単に言えばGDP(国内総生産)を増やして国民の生活をより豊かにする方法で、つまりGDPは人口×生産性なので人口減少社会の日本では生産性を拡大する事によってこそ国が豊かになるのだからこれに焦点を当てて努力しようとなります。何だか簡単な掛算のようでありますが実際そうなのでしょうか。
 著者は数々の統計に依りながら日本の経済の成長可能性を解説します。それも1人当たりの労働者の働く能力、成長可能性を具体化すれば国民の所得は大きく増えるし、人口の減少の心配を考慮する必要性は問題にしません。
 ではどうすれば現在苦労しているアベノミクスの成功を得る事が出来るかですが、氏は今日の政府の行っている金融緩和政策には言及せず、過去の成長は人口増加に頼っての事で、民間の活躍、民間の挑戦にこそ成長の鍵があると言います。
 やるべき事は先ずこれ迄の慣習の見直し、つまり現状維持の打破、次には新産業を生む土壌を持つこと(確かに世界の新産業の企業はほとんどアメリカ製。アップル、マイクロソフト、グーグル、アマゾン、フェイスブック等々)を説き、アメリカ政府の新産業誕生への助成、ベンチャービジネスへの思い入れの重要性から学ぶべきと説きます。
 確かに我国でもこの重要性を誰もが判ってはいるのですが国も民間も失敗を恐れ二の足を踏み、アメリカのように華々しく世界市場へ打ってでる企業が生まれません。
 著者はアメリカ系金融会社の調査部にいた経験から企業のトップから一従業員まで企業利益に対する意識が足りないと解釈しています。この言に対して日本側の弁解にある日本的経営と合い入れないとの常套句には氏は厳しい批判をしています。氏の反論は常に統計や事実に基づいて行っていて、基本の所グローバリゼーションの中で日本がかつてのように堂々と成長を求めるのならそれに負の影響を与えるものは勇気を持って断つなり変えるなりすべしと、主張します。
 この所国内でも内向きの意見の人も可成りおり、「そんなにもうアクセクする事なく、ノンビリ行こう」と言います。勿論これも一つの意見ではありますが、私はこの2冊の本の著者のように日本の未来に賭けて、努力して行く事に賛成ですが、国民一般はどうなのでしょう。どうもこの所若者に覇気が無くなって来たとも言われています。心配ではあります。