【書籍紹介】「チャイナ2049」(マイケル・ピルズベリー、日経BP社) | 三原朝彦 ~あさやんブログ~

三原朝彦 ~あさやんブログ~

前衆議院議員
自由民主党福岡県第九選挙区支部長のブログです。

 一月程前、偶然テレビで永年中国問題を研究していた学者で米国のお役人のインタビューを見る機会がありました。なかなか画期的な議論の展開だったので、もっと詳しく彼の考えを知りたいと思い早速書店に足を運び買求めたのが今回の一冊「チャイナ2049」(マイケル・ピルズベリー、日経BP社)です。

 書名が暗示するようにこの本は時の流れに沿って中国の政策を解き明かし、対中国政策構築の助言になるべく綴られたものです。前記の年代は何を隠そう1949年に中華人民共和国が中国共産党によって建国されて100年後を示しています。つまり著者は現共産中国の始まりから70年経った今日迄の中国共産党主導の内政外交政策を分析し、30年後の2049年迄に中国は何を目論んでいるかを示そうとしています。

 中国の歴史や哲学に造詣の深い著者は中国の古典から現代までの書籍を繙き、中国指導部の思考を説明して行きます。彼等の思考の中心は著者曰く「勢」で表現出来ると言います。著者自身も言う如くこの一字を説明するのは大層難しいのですが、氏の言を借りれば「物事が進む成り行き」で、更にはこの「勢」の基本は老子の「無為」に通じ、「無為」とは自らは動かずとも他者を動かす能力の発揮と説きます。何だか禅問答のようになって来ましたが、著者の説明を現実の中国がこれまで執ってきた政策に照らして理解して行けばだんだん判って来ます。

 習近平主席は「中国の夢」を説きます。この表題が実は中国百年の計なのです。その夢はかつての唐の時代のような中国文明の世界中への拡がりを中国は求めているのです。この70年中国は強い指導者の下で国造りをして来ました。毛沢東、周恩来、鄧小平、江沢民、そして今日の習近平等々、途中で指導力に欠ける指導者も存在しましたが、前記の彼等は常に「中国こそ世界の中心であるべき」の信念を持っていたと著者は言います。 これから先の著者の分析が面白いものです。中国の指導者達は「勢」の理念を基本にして、経済・政治の力の無い時には強い者に面従腹背でついて行き(米国や日本の経済力を借りて成長)、鄧小平言う所の韜光養晦(とうこうようかい)、つまり能ある鷹は爪を隠す戦法を行使し、何時の間にか自力を増大させて、かつての強者に堂々と対抗出来るようになって始めて猫被りを止めるのです。こう説く著者の説を百年の歴史に沿って眺めるとどうも当たっているのです。

 「孫子の兵法」を中心に数々の中国古典を渉猟して中国百年を説明する著者の博学はこの本に読者を引付けます。これから30年著者の言のようにあらゆる意味で中国が世界の中心になれるのか否か、米国を中心とする各国の対応如何です。いづれにしろ平和の秩序の下での中華思想の伝播は認められても軍事力による実力行使は絶対にあってはなりませんから、この本から学びつつ平和的中心であるべき中国の台頭に我国も準備をする事が重要かもしれません。