【アニメ感想】『新世界より』見直し(3~4話) | 雪花の風、月日の独奏

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先日の1~2話に続き、3~4話を視聴。

 

 

冒頭の回想。サクラ王朝転覆を図る者たちによる戦闘シーンは、

『キルラキル』を思わせるようなオーバーアクションと色彩鮮やかな陰影。

正直、番組を名間違えたかと思った。

 

謎の回想が終わると、いつもの『新世界より』。

3話は特段作画が良い。のっぺりとした平面的なデザインではなく、

やや丸みを帯びた愛らしい面立ちで、子供たちの表情もいつもより豊かに見えた。

今回、一班の子供たちは、夏季最大のイベント、

七日間にわたる利根川下りとキャンプに挑む。

以後の展開を考えると、3話は、本作で最も平和な回かもしれない。

消えた子供たちのことはすぐに忘れ去られる仕組みになっているのか、

早季をはじめとする一班のメンバーはみんな屈託なく笑っている。

 

まずは、キャンプの様子を通して、カヤノスヅクリ、ミノシロ、フウセンイヌの噂など、

現代とは大きく異なる生態系を視聴者に示す。

精緻な背景美術も『新世界より」の見どころの一つ。

水面に映し出された利根川の風景の鮮やかさたるや、見事なものである。

生態系に関する細かな描写は、貴志先生の十八番だけど、

アニメーションではそれが活かせないのが残念。

 

併せて、この話数では、早季と覚、早季と瞬、真里亜と守など、

一班のそれぞれの人間関係に焦点が当てられている。

 

喧嘩が絶えない早季と覚。

早季を賛辞する瞬と歓喜する早季。

それが面白くない覚。

真里亜のペースに合わせることが板についている守。

「アンタは早季を誉めなくていいの!」と親友に軽く嫉妬する真里亜。

 

5人のやり取りと距離感が心地よく、

14歳編につながる関係性はこの時点ですでに出来上がっている。

ナイトカヌーで、早季のために夜空を水面に移してみせる瞬のシーンは、

本作の数多い名場面の一つではないだろうか。

(名場面第1位は、23話の「顔のない少年」のシーン。これは譲らない)

初見の時点では、「初々しいなあ。可愛いなあ」と感じ入るだけだったが、

今後の展開を知っている今となっては、

5人の仲睦まじい様子は、ただ切なさを煽るだけ。

 

ミノシロモドキとの遭遇シーンでは、早季の負けん気の強さが目立つ。

12歳ならではの無謀な行動ととれなくもないけど、

原作の早季(特に思春期以降)は、自意識が高かったり、露骨に守を見下したりと、

結構イヤな女なので、彼女の勝気さはたぶん生来のものなんだろう。

貴志祐介作品の女性主人公、割と気が強いタイプが多いとはいえ、

瞬、なんで早季が良かったんだろう……教えて、瞬。

 

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4話は『新世界より』の肝、世界の成り立ちが明かされるターニングポイントとなる回。

1~2話までの漠然とした不安がはっきりと象られていき、

この話数で『新世界より』という作品の見方ががらりと変わる。

 

先史文明の崩壊、新たな文明の構築、教育の徹底、

ボノボの生態の導入、遺伝子の改良、危険因子の早期排除。

 

聞いているだけで眩暈がしそうな怒涛の真実。

本作のキーワード「愧死機構」は、ここで初めて登場する。

信じられない言葉を聞いたと言わんばかりに、

覚が「ありえねえだろ。人間が人間を、殺すのか?」とミノシロモドキに尋ねるのは、

この世界は「人が人を殺すことはあり得ない」という観念で成り立っていることを

示唆している。

主にボノボるせい。

 

今の世界は、PK(呪力)を持つ人々による新たな世界だが、

世界にはかつてPKを持たない人々も存在していた。

この話数での瞬による

 

「奴隷王朝の民や狩猟民族には呪力、PKがなかったんだろう?

その人達は一体どこに行ったんだ?」

 

の問いかけが明かされるのは、視聴した人は知っての通り、あの話数。

ああ、今見ても鳥肌もの。

 

悪鬼(ラーマン・クロギウス症候群)と降魔(橋本・アッペルバウム症候群の重篤患者)の

発生を抑制するために構築された文字通り血塗られた歴史を耳にして、

子供たちも視聴者も疲労困憊だが、

子供の脅迫に負けて手続きを簡素化するミノシロモドキの意外な人間臭さが

今回の癒しポイント。

 

だが、そんなミノシロモドキさん、

謎の僧侶にバーベキューにされる。

 

あ、貴重な国会図書館が!

つくば分館になんの恨みがあるんだ!焚書坑儒反対!!(落ち着け

 
 

閑話休題。

聞いてはならない歴史を知ってしまった早季一行。

神栖66町の上人に沙汰を伺うために、謎の僧侶に捕縛され寺まで連行される最中、

外来種のバケネズミに遭遇してさあピンチ。

しかし、あの僧侶は、上空からの探索役になぜ守を選んだんだろう。

気性のおとなしい彼がそういった役目に向かないのはすぐに分かりそうなものなのに。

原作ではどうだったろうか。

そして、僧侶がバケネズミを呪力で一掃したときに呟いた

「本当の敵は彼らではない」もどういう意図で放たれたものか。

これは、原作ももう一度読み直した方がいいかも。

 

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それにしも、楽曲もいいね。

OPなしで、メインテーマのインストだけなのは正解。世界観に合ってる。

EDは、2クール目の「雪に咲く花」の方が断然好きなんだけど、

「割れたリンゴ」も今見返してみるとなかなか。

 

 

特に映像が良い。

これは、きっと17話ラストで早季がつかの間に見た夢。

 

ある日の夏祭りの光景。

はしゃぐ真里亜、そっと立ち上がる守、腕を組んで花火を見上げる覚。

一人離れたところに座っていた早季は、3話のナイトカヌーの時のように

舟を漕ぐ瞬に手を伸ばすも、世界が反転。空へと落ちていく。

気づくと、成長した早季は涙を浮かべていた。

視線の先には重なる手。

彼女のそばに残っているのは、もう「彼」だけになってしまって―――。

 

うわあああ、やるせない!