奈緒(松雪泰子)は紙飛行機の折り方が母親と同じで、葉菜(田中裕子)が自分を捨てた母親であることに気づき、葉菜が差し出す役所からの書類を払いのけ紙飛行機を握りつぶすと、黙って葉菜のもとを去る。
だが奈緒は駿輔(山本耕史)から、継美(芦田愛菜)を誘拐した事実を公表しない代わりにお金を1000万円用意するよう脅迫されていた。
お金に困っているのを知った継美が、もう他人だから会っちゃいけないといわれていたうっかりさんに、お金を貸して欲しいと頼みに来る。
葉菜は奈緒に自分の通帳と印鑑を差し出すが、奈緒は「必要ない」とこばむ。葉菜はごみ箱に通帳を捨てると、二人のやり取りを見ていた駿輔に盗られてしまう。
追いかけて返すように言う奈緒は、駿輔にその通帳の中身を見られてしまうが、一千万円を母親の藤子(高畑淳子)に頼めないならこれでいいという。
定期預金で毎月1万円ずつ17年間。204万円の預金に、積み立てられたお金の意味を察した奈緒は通帳を返してほしいと駿輔に詰め寄る。もみ合って奈緒は気づくと鈍器を振りかざし、今にも駿輔に振り下ろそうとする。
「やってみろ!今度は人殺しだよ、お母さん。」そう駿輔に言われて、我に返った奈緒は、鈍器を置いた。
あのおばさんは誰か?と駿輔が聞くと、奈緒はそのお金を使うくらいなら死んだほうがマシだという。
駿輔はもういいと言って、自分のことを話し出す。
以前、駿輔は児童虐待の取材をしていてその中の1件に彼に妙になついた子供がいた。
その子にヒーローのおもちゃを駿輔はもらった。それが僕のヒーローだって。
明らかに虐待を受けていた。
親にその事を問いただしたら親はこう言った。
だったら子供を1千万円で売ってやるって。
その子・・・死んだよ。父親に腹蹴られて
内臓・・・・・
その子が眠っている場所に駆けつけた時、駿輔以外誰もいなかった。
俺はさ、あいつのヒーローにはなってやれなかった。あいつを見殺しにした。あんたが歩いている道は俺が逃げた道なんだ。俺はその先に何があるのか見てみたい。
その先にはあり得たかもしれない景色があって、そこには俺はあいつを連れてさ。
いつか、あんたとあの子を書ける時がきたら、金は印税としてその時にもらうわ。
結局、駿輔のお金の話は無くなり、母親としての覚悟を試したに過ぎなかった。
奈緒は通帳を返しに葉菜の家を訪れた。
葉菜は病院へ来ないと心配する医師袖川(市川実和子)の前で倒れた。
奈緒が葉菜を訪ねると寝室で寝ていた。
奈緒は眠っている母の手に触れ、「どうして?どうして捨てたの?」と語りかける。
目を覚ました葉菜は、枕元の通帳を返しに来たのだと知る。その横には奈緒が街でもらった母の日のカーネーションがあった。
お金を受け取って欲しいという葉菜に奈緒は、カーネーションは一番嫌いな花だという。
毎年この季節に目を背けていた花。どうしてかはこの間話したから、全部分かるはずだと言って奈緒が帰ろうとすると、そこには藤子がいた。
「そんなお金で母親になったつもり?私と奈緒の30年を壊さないで!」と葉菜につかみ掛かる藤子を制して、「知らない人だから」と泣き崩れる藤子を連れて奈緒は葉菜の家を出た。
それから藤子と奈緒は、藤子が行きつけの居酒屋で酒を酌み交わした。
奈緒を施設から引き取ってしばらくして葉菜が藤子の元へ訪ねてきたが、奈緒が幸せだという証拠の写真を見せたが、奈緒は笑わない子供だったため、笑っている写真を探すのに苦労をしたことを話し、脱走癖があって、家出をして東京タワーの展望台の双眼鏡でずっと母親を探していたこと。そして、一緒に東京タワーで母親を探して、見つけたと街中を一緒に走った。
その時転んで足に怪我をしたとき、奈緒は小銭で絆創膏を買ってきてくれた。
そして、その日初めて家に帰ったとき、奈緒が「ただいま」と言った。
その時、たとえ心の中の母親が誰であっても、世界中でこの子の母親は私一人なんだと思った。
奈緒は「私のお母さんはお母さんだよ。ありがとう」と言った。
一方、継美(怜南)の母親・道木仁美(尾野真千子)は玲南の葬儀を終えて、ほっとしている。
児童相談所は更告発したりしないだろうと浦上真人(綾野剛)は言うと、警察から送られたダンボールの中の、怜南の遺品の水色のマフラーを手に取る。浦上の手は震えていた。
仁美はダンボールの中から怜南の"すきなものノート"を取り出し、ページをめくっていく。手帳に書いてある番号をかける仁美は、鈴原家に無言で電話を切っていた。
一方、鈴原家には継美の記事が掲載されている新聞が何者かに投函される。
ある時たまたま継美が電話に出て、仁美は声で玲南だと認識し、継美はママと話してしまう。
その電話を聞いた藤子は不審に思う。
うっかりさんが自分の実の母親だと知った奈緒は、今まで親切にしてもらったが許せなくて拒絶するが、継美は分からないので、奈緒がお金に困っているのは、継美がトイレに行ってお金を盗られたからだと思って、うっかりさんに相談してしまい、うっかりさんは奈緒に定期預金を渡そうとする。
奈緒がなんとか工面しようと悩んでいた1000万円は、虐待されていた子供の父親が駿輔に言った子供の値段だったんですね。
その子を助けられなかったことをずっと悔やんでいたのか。
違法だけどそれを承知で、駿輔の出来なかったことをしている奈緒は、ヒーローで応援する気持ちはあったけど、後悔するんじゃないかと思って、奈緒を試したんだね。
たくさん取材で虐待する親に会ってきた雑誌記者は、継美の母親が虐待していたのをすぐに分かって、失踪した奈緒が関係しているとすぐに気づいたのか。でも、屈折しているな。
継美に怜南だろうなんて問い詰めなくてもいいのに。やっとおばあちゃんにも紹介されて、小学校も行けるようになって、安心していたらまた逃げなくなるかもしれないって不安になるよね。
実の母親に会って、ずっと育ての親に気を使っていた奈緒が、忘れていたことを藤子に聞かされて、他人の子の母親になるということを、自分の状況と重ねて、やっと藤子の気持ちが分かった。
母親にいらない子供の継美は、奈緒にとってもう一人の自分。他人の子供を育てようとするのは、藤子と同じ気持ちで、それは意味も無く、選択肢もなく、出会ってしまったから。
駿輔の登場で奈緒がどんな状況でも、何が起こっても決して継美を見捨てず守ろうとする決意の分かる、よく出来た脚本だね。
奈緒は本当の母親を憎む気持ちと恋しい気持ちが交錯するように、継美も同じかもしれません。
虐待していたことがバレるのを怖れていたのは、仁美だけでなくマー君もだったんだね。
彼女の子供を自殺まで追い詰めたのは、自分かもしれないと後悔していたのかもしれません。
死んではいないけど、自分が別人になって別の暮らしがしたいと思ったのは、それまでの自分を消し去りたいと思ったからで、自殺と変わらないよね。
新しい家族とともに育った奈緒は、継美と同じだから母親になって新しい家族として生きようとする。急に母親には成れないし、失敗もあるけど、継美の成長が奈緒の母親としての成長で、子供の頃を思い出したり、一緒に新しい発見があったりするんだね。子育てをするお母さんだって、初運転と同じで、ぶつかったり、事故ったり、急ブレーキかけたり、地図を見たり、休憩をとったりして当たり前だと思う。
虐待は絶対良くないけど、自分と一緒だと不幸になると思って子供を捨てる母親の気持ちを、自分が母親になると分かってあげられるようになるのかな。
葉菜が重病で余命1年あるか無いかの時に、身内も生きがいも無かったけど、子供が幸せではなく、教え子と逃亡生活をしているなんて知ったら、死に切れないよね。
怜南が鈴原家にいると知った仁美はどうするのか。
ママに怜南のいるところがバレたことを知った怜南は、どうするのかがこれからの見どころだな。
そして、気になるのは鈴原芽衣と、ほとんど出てこない彼氏の婚約者が、まだ生まれていない子供の病気をどう思っているのかも気になるところです。
坂元裕二さん脚本の「Mother」と「チェイス」のドラマ二本をおさらいしてみました。
「太陽と海の教室」より良いので、暗くて重いドラマの方が合っているようですね。
女優の森口瑤子さんの旦那さんです。
