夜更けから朝まで降っていた雨も上がったと思ったら、いきなり夏を思わせる強い陽射しが照りつけて参りました。
今日の予想最高気温は30度に達するという10月として驚くばかりの天気予報です。
我が実家は深川・門前仲町にあります。
2週間ぶり…風通しにやって参りました。
8つ違いの兄が愛する友ちゃんを追っかけ、はるか北海道に移り住んでから早や20年近くが過ぎようとしています。
それまでは兄がひとりで住んでいたのですが、押し入れの布団やら座布団、台所の食器棚にぎゅうぎゅう詰めにしてあった食器類、流しの下の細々(こまごま)とした鍋やフライパンの調理器具、納戸の雑貨や庭の植木鉢などなど…兄はさっぱりと断ち切って処分を致しました。
わたくしは母親の形見として思い出のある食器やアルバムに収まっている写真を貰いましたが、こちらもいずれは身辺整理をしなければなりませんからね、欲張る気持ちにフタをしてすべてを兄に任せました。
仏壇一式と神棚は丁寧に梱包され北海道へ送られ(先祖代々の位牌と両親の位牌、神棚のお札は兄が胸に抱いて持って行きました)、わたくしが密かに狙っていた兄の書物やレコードなどもきれいさっぱりと段ボールに片付けられておりました。
「みんな持って行っちゃうのぉ~?」と不満そうに尋ねると…「俺はね、北海道は旅したことはあるけどもサ、蝦夷(えぞ)の地に住むなんぞとは、これっぽちも思ってもいなかったんだぜ!何を楽しみ生きて行ったらいいんだ!」
「いいんだって…愛する友ちゃんがいるんだから、他は何も要らないじゃん!三島由紀夫や司馬遼太郎の全集も持って行っちゃうことないでしょ!松本清張も夏目漱石も詰めちゃって…がっくりだわ」
こんなですからね、実家はガラ~ンとしたもんです。
電気もガスも止めてありますし、出るのは庭の水遣り用の水道だけですわ!
おかげさまでトイレは使えますので。頻尿のわたくしでもゆっくりと水遣りができます。
実家は八幡宮の裏手にございますので、お参りは欠かせません。
と…何んとなく八幡様の境内の様子が変わったような気が致します。
「あーっ!資料館が消えているぅ?」
本殿に向かって左側に建てられていた資料館と樹木がなくなっておりまして、何んとも眺めのよいこと!
コンクリート2階建てが建っていましたから、その先の景色なんぞ見るのは何十年ぶりかでございますし、その時はまだこんな風景ではありませんで、平屋かせいぜいが2階建ての普通の住居でしてビルなど建ってはおりませんでした。
「う~ん…不思議な眺めだ!」
左側は永代通りでありますし、成田山深川不動尊の参道もすぐ脇にございます。
立派なクスノキもイチョウ、モミジの樹も切られちゃったのかな?
建物があったところには『令和9年 富岡八幡宮は御鎮座四百年を迎えます』の横断幕が張られていました。
「だからってあんなに茂っていた樹を切っていいのかっ!」と、明治神宮外苑の樹木伐採を思ってしまいます。
3年後の令和9年には新しく客殿が建てられるとのこと…他にも本殿の耐震補強工事、銅板屋根の葺き替え工事、末社や神輿庫などの改修工事も行われるそうです。
客殿は平成7年には完成予定で建設費は約27億円の予定をしているとか…うち7億円は企業や氏子からの募金、奉納金で賄う計画を立てていると聞きました。
「えっ?うちは紛れもない氏子…そう言えば門仲の町内説明会の案内が来ていたような?」
これは実家の世帯主である兄に連絡を入れなければなりません。
「もしもし?お兄ちゃん!八幡宮の客殿建設の話、聞いた?うちって氏子だからサ、寄付しなきゃならないんじゃないの?」
『こっちまでパンフが送られて来たよ!まぁ~地元だし仕方がないやね。八幡宮でもクラウドファンディングで募金を集めるって書いてあったよ。あとは本殿の屋根の葺き替えに使う銅板を奉納してもらうことで落ち着くんじゃないの?俺と友ちゃん、それにおみえちゃんの3枚ってとこか…あとは少し足して協力ってことになるかなぁ~何しろ俺らの氏神様だからな!知らんぷりはできないぜ』
「3年後の完成なんてサ、生きてるかなぁ~」
『おみえちゃんよ、そういう淋しいことを言うんじゃないよ!完成を楽しみにしようぜ』
余計な話をすると長くなって電話代が嵩みますからね、さっさと切ってしまいましょう。
「じゃね!」
『あっ!おい、待て…』…ガチャン!
そうか…工事が本格的に始まるとなると…年末年始の神事にも影響が出てくるのでしょうか?
しばらくは境内が槌音(つちおと)で騒がしくなるかと思います。
どんな景色になるか…あと3年、息災でいられることを先ずは氏神様に祈ると致しますか。
『棟上げの槌音一気に秋ぞ立つ』
(むねあげのつちおといっきにあきぞたつ)
高澤良一