まだまだ猛暑が続いていた9月初め、令和7年度のおせち料理のカタログ本が届きました。

 スッと指の皮膚が切れるような上質な紙を使ったカタログは和洋中華のおせちの写真が満載されおります。

    

 ここ数年は日本橋・高島屋が紹介するおせち料理から選んでおります。

 どのページを捲っても捲っても老舗・名店・伝統を持つ割烹料理屋さん、本場顔負けの中国料理店、一流ホテルに予約を取れないお店などの工夫を凝らしたおせち料理が記載されていて、見ているだけでお腹いっぱい!

 あれこれと選ぶ楽しみは酒の肴にもなって楽しゅうございます。

 娘にも相談したのですが…「食べたいと思うのを注文すれば?」と実にそっけない返事が返ってきました。

 それは今まで娘の提案やら忠告を一切無視し、けっきょく娘とは真逆のおせち料理を選んだ結果だったからです…「勝手にせい!」と言われたのも同然汗

 仕方ないか…高島屋が案内するおせち料理は和洋中華にもよりますが9月20日から12月20日までの注文となっています。

 それも10月の中頃にはコレ!と言った老舗・名店、一流店のおせちは完売となってしまいますので、できるだけ早い注文をしなければなりません。

 近くに住む幼馴染みも毎年高島屋に頼むので一緒に行こうと言うことになり、本日空模様が怪しい中、出掛けて参りました。

「帰りにサ、吉野鮨でお寿司、食べて行かない?」

「いいねぇ~握りなんて久しぶりだわ」

「心療内科の先生も出来るだけ家にこもらないで外に出掛けるようにって言ってたしね」

 わたくしと幼馴染みはコロナ禍の中、閉塞感や孤独感を募らせ、軽いうつとの診断を受け薬を飲みながら通院しております。

 それも同じ心療内科・同じ先生にかかっていまして、暮らしの工夫と少しの頑張りで日々を過ごしている仲間でございます。

 さて…高島屋に到着!8階のおせち料理承り所は結構な人が順番を待っておりました。

「これじゃサ、吉野鮨、ランチタイムが終わっちゃうよ。仕方ない!外商に頼んじゃおう!」

「えっ?こんなのも外商が請け負ってくれるの?」

「請け負うって…カタログもわざわざ届けてくれたんだもん、注文ぐらい受けてくれるわよ。担当の人がいてくれると良いんだけどね。高島屋の外商って2階だったかな?3階だったかな?」

 で…フカフカの椅子に迎え入れられ、スムーズに注文ができました。

 これも幼馴染みのおかげであります。

 余裕で高島屋の裏手にあります吉野鮨・ランチタイムに間に合いました。

 サラリーマンのランチタイムが去った直後で並ぶことなく席に着くことが出来まして、ホッ!

 わたくしと幼馴染み、8貫のお鮨と細巻きのセットを頼みました。

 ポツポツと雨が降ってきたようで、熱い粉茶が美味しい。

 1時を過ぎると買い物帰りのお客さんが多くなって参ります。

「外商の人って手際がいいのねぇ~」

「担当のお客さんの好みは全部、頭に入っているからサ、おせち料理も今年のお勧めはこちらとか、この店は初お目見えですとか、いろんな情報を教えてくれるのよ」

「で?お宅は今年、どこのおせちにしたの?」

「京都の瓢亭(ひょうてい)を勧められたから、それにしてみた。あーたは?」

「2年連続で京都のたん熊・北店のだったからサ、今年はね思い切って中華の維新號(いしんごう)にした!小っちゃいサイズがあったからね、お値段的にもちょうど良いのがあったのよ」

「ひとりだと食べきれないと困っちゃうもんね!この中トロ、美味しい!あーた、中トロ食べられなかったよね?ちょうだい!」

「代わりに赤身くれるんだったら、いいよ!」

「赤身はイヤだ!ガリかかっぱ巻きならいいよ!」

 コイツの根性悪は今になって始まったわけじゃないけどもサ、イヤになるねぇ~ケチ!

「ねぇ?1時半過ぎてる!薬飲まなきゃっ!」

 わたくしも幼馴染みも心療内科で処方されている薬「ドグマチール細粒」…日に3回飲まなければなりません。

 慌てて水を頂いて服用!

 うつも大変であります。

「でもサ、おせち料理を注文して、帰りにお鮨を食べられて幸せなうつ病患者だね」

「そう言われればねぇ…これで家に帰って夕方から訳もなくドッと落ち込むこともあるからね。うつって解んないわぁ」

 うつを改善する薬と処方されているドグマチール細粒はヤル気を起こさせる成分が含まれておりますが、もともとは胃の働きを良くする薬であると聞いています。

「ねぇ~セットの中に青魚・光物が入ってなかったからサ、別に注文しない?」

 今日の青魚を訊ねてからコハダ・シメサバ・アジ…おまけにイカを注文しました。

 これでひとり12貫頂いたことになります。

「これだけ食欲があればサ、もう少しでうつも良くなるんじゃない?お正月におせち料理も食べなきゃならないし、長生きしなきゃね」

「おせちを食べないと死んでも死にきれないわ!そのあと死んでもいいかって訊かれたら困っちゃうけどねぇ~」

「まぁ~お互い死ぬまで生きよう!」

 何んともお気楽なふたりでございます。

 人は何んのために生きるのか…当分は「おせち料理を食べるため」が目標となります。

 志が高いのか…低いのか…もう幾つ寝るとお正月って、ずい分と寝なきゃなりません。

 きちんと毎朝目が覚めるよう、頑張ります。