ジメジメ・ジトジト…気が滅入っちゃいます。

 梅雨らしい梅雨と言えますが、いやいや、この湿気、老体には堪えます。

「参っちゃうなぁ~」とため息を吐いていたら、先日映画に誘ってくれた友人から「こんな日こそ映画を観に行こうよ」と電話をくれました。

 友人・今年上半期の一番のお薦めのアメリカ映画『ホールドオーバーズ』です。

 『シニア料金が値上がりしたとは言えサ、1300円で2時間ちょっと涼しい映画館で秀作を観て過ごせるのはお得だと思うのよ。足元悪いけど日比谷シャンテまで出ておいでよ」

 わたくし、一もニもなく「行く!」と返事をして、日比谷・東京ミッドタウン前にあるゴジラ像で待ち合わせを致しました。

 怪しい空模様ですが、雨に濡れることなく映画館へ到着!

 フューマンドラマの名手と言われるアレクサンダー・ペイン監督の最新作であります。

 本作でダヴァイン・ジョイ・ランドルフがアカデミー助演女優賞に輝き、作品賞など4部門にもノミネートされた映画となります。

 映画ファンにとっては公開を心待ちにしていた人も多かったろうと思います

 新聞のコラムや雑誌の書評でも「心温まる傑作。笑って泣ける秀作。余韻が残る佳い作品」となかなかの評を得ているようです。

 舞台背景は1970年…冬のボストン郊外にある全寮制の男子校・バートン高での2週間を描いています。

 母親の都合でクリスマス休暇を寮で過ごすことになった嫌われ者の教師・ハナム(ポール・ジアマッティ)、反抗的な生徒・アンガス(ドミニク・セッサ)、ベトナム戦争で息子を失った料理長・メアリー(ランドルフ)…初めは反発しあう3人でしたが、閉鎖された寮の中で特別な絆が生まれて参ります。

. アンガス役のセッサはこの作品がデビューとなるとのこと…とてもそうは思えぬ演技をみせてくれました。 

 思春期の心の繊細な動きを見事に演じていて、感激!

 ジアマッティはさすがの表現力でラストは涙を堪えきれませんでした。

 それぞれに孤独を抱え、世代や性格の違いに戸惑いながらも心を開いていくランドルフの演技にも魅了されました。

 温かな余韻がいつまでも残る、本当に秀作であります。

 友人が薦めてくれなければ、暑さに負けて観に行かなかったことと思います。

 映画通の友人に感謝・感謝であります。

 あまりにも佳い映画だったので、その余韻を楽しもうとシャンテ別館にある「添好運(ティム・オー・ワン)」で遅いランチ、早すぎるディナーを取ることにしました。

「あらぁ~珍しい!ひとりも並んでない!こんなことって滅多にないのよ。ラッキー!」

 けれども店内はほぼ満席でありました。

 

「お勧めはね…お粥なんだけど、これはあとでシェアしよう!先ずは映画に乾杯しよう」

 友人はキリン一番搾り、わたくしノンアルコールで「ホールドオーバーズ」に乾杯!

「ねっ?上半期一押しの1本だと思うんだ。3人の配役がピッタシでしょ?」

「うん!佳い作品だった!あの高校生を演じたヘッセって幾つなの?」

「今年22歳になるのかな?ロケした学校に在学中にスカウトされたってコラム誌に書いてあった。この映画でデビューして…なんかの新人賞を取ったんだよねぇ」

「なんかのねぇ~ホントなの?」

「ホントホント!クリティックス・チョイス・アワードだったかな?それでいきなり新人俳優賞獲得よ」

「確かにクセはあるけど高校生の複雑な心境を上手く表していたね」

  

 点心ですからそれほど時間が掛からずに次々にテーブルに並べられました。

 海老と黄ニラのチョンファン…思った以上の甘いタレで最初は「うわっ!」となりましたが、舌に馴染んでしまうとトロッとして美味しい!

 キノコと筍の揚げ春巻きもパリッパリで香ばしいこと!

 ノンアルコールだけど、ほろ酔い気分です。

  

 こちらは7種類の野菜の蒸し餃子…このモッチモチの皮が何んとも言えない触感!

 わたくし3つのうち、友人がビールを飲み干している間に2つ頂いちゃいました。

 空っぽのセイロを見た友人…「美味いだろぉ~?」と言わんばかりの顔をしておりました。

 わたくしは初めての店だったので、メニュー選びはすべて彼女に任せました。

 いろいろなバリエーションを考えてチョイスしてくれました。

「これも店自慢のポークワンタンの黒酢掛け…美味しいわよ」

 赤い輪切りの唐辛子と一緒に食べるとピリッとして味変になります。

 こちらもあっという間に平らげてしまいました。

「ペイン監督ってね、小津安二郎や黒沢明の古き良き時代の映画を愛する人なのね。この映画、登場する人がいい人であることを前提に撮った作品なんだってサ」

「今さらだけど、日本映画の巨匠って言われている2人ってスゴイ影響を与えているんだねぇ~」

 わたくしの〆は一番人気の「ピータン入りお粥」を注文…鶏肉とピータンで親子粥のようでした。

 お米の甘さが残っていて、微かな塩味と合い、とても胃腸にやさしいお粥です。

 友人と半分こ。

  

 友人は蓮の葉で巻いたチマキをチョイス!

 こちらも半分こ。

 蓮の葉っぱの匂いもして食欲増進…中から腸詰め、シイタケ、チャーシューや筍など具沢山でびっくりしました。

「これは食べ応えあるねぇ~」

「そうなのよ。ひとりの時はこれだけでお腹いっぱいになっちゃうから頼めないの。今日は久しぶりに食べられて嬉しいわ」

 映画も満足!

 食事も満足!

 幸せってこんなかな?

 長い付き合いの友人から細やかでありながら、とてつもなく大きな喜びを頂きました。

 元気でいてね、ありがと!