午前中、日比谷に用がありまして空模様を気にしながら出掛けて参りました。

 用事が早く終わり、雨が降る様子もないようなので日比谷公園に寄ってみることにしました。

 東京ミッドタウン日比谷を背景にすくっとアカンサスの花径が伸びておりました。

 昨年まで、友人が勤めていたミッドタウン…定年退職した今は呼び出すことも叶いません。

 キャリアウーマンとして、あんなに忙しくも颯爽と働いていた彼女…今ごろどうしてるかな?

 相変わらず映画三昧の日々を送っていることでしょう。

 日比谷公園の心字池にアメンボが飛んできておりまして、あちこちでスィスィと水面を気持ち良さそうに滑っておりました。

 1匹だけ水面に浮いています。

「うん?」…このアメンボって脚が多くない?

「ひぃふうみよいつむ…えーっ!ムカデかゲジゲジみたいな脚の数!」

 アメンボって翅を持つ昆虫ですから、脚は6本であります。

 ところがこのアメンボは水面に映っている影を差し引いても10本以上あるような…?

 なんじゃこれ!

「いや…ちょっと複雑な話になりますけどね、今わたしどもは、繁殖期を迎えておるんですわ」

アメンボの囁きが聞こえて参りました。

 ははぁ~なるほど…掻い摘んで言うと交尾をしている…ってぇことですね?

「そんな…あからさまに言わんといて下さい。もう少しで終わりますから、あっちを向いて頂けると有難いんですけど」

 よくよく見ると…確かに2匹重なっているようにみえますね。

 上になっているのがオスでしょうねぇ~

 まぁ~見ているこちらも何んですか、恥ずかしくなって来ちゃいました。

「大変、貴重な姿を見ることができて、深く感銘を受けました。失礼いたします」

 足音を立てぬよう心字池の縁を離れました。

 雨に降られることなく家に帰ることができてひと安心…アメンボの交尾を見せつけられて、なんか妙に疲れてしまったような気が致します?

 ミッドタウン日比谷の地下で出来合いのお惣菜を買って、今夜は簡単に済ませようと思います。

 ニンジンと紫キャベツのラぺと油淋鶏(ユーリンチー)を選んで来ました。

 近ごろではパクチーが食べられるようになったので、東南アジア系の食事も楽しめるようになり、選べるメニューも広がり嬉しい限りです。

 ひと口食べて…レモンを掛けたらもっと美味しいかも…で、レモンをギュッ!

 もうちょっと辛味が欲しい…で、ラー油をタラッ!

 小口のネギがあったらアクセントになるかも…で、まな板と包丁で小ネギをトントン!

「うん!旨い!」…これはビールでしょう!

 今夜はアメンボのおかげで楽が出来ました。

 アメンボの別名は水すましとも呼ばれいます。

 俳句の世界では「水馬」の字を当てております。

 長い脚が馬の脚に似ているからでしょうか?

 今ごろ、もう離れ離れになったアメンボ…この先2度と会うことはないでしょうねぇ~

 無事に子孫繁栄につながることを祈ってカンパイ!

 

『あめんぼの雨くる前の一滑り』

(あめんぼのあめくるまえのひとすべり)

星野麥丘人(ほしのばくきゅうじん)