今は誰も住んでいない実家…週に1,2回、防犯のためと風通しに通っております。

 歩いても行かれる距離にあるのですが、何せ電気もガスも止めてあるので、掃除機も掛けられません。 

 すべて手作業で掃き掃除、拭き掃除を行っておりますので、掃除の後にひと休みもままなりません。

 庭に植えてある草花・樹の水遣りとトイレ使用のために水道だけは通してあります。

 もちろん支払いは北海道へと移り住んだ兄の銀行口座から引き落とされます。

 まぁ~基本料金と少々の使用量ですからね、多寡が知れております。

 先日、その兄が法事のために上京し、実家へ寄ったのですが、布団も何もかも処分をしてしまったので泊まることができず「家があるのにホテルかよ」と文句を垂れておりました。

「おみえちゃんよ、マンションを人に貸して、ここに住めば良いんでないの?」と勧められましたが、もう一軒家の維持をして行くには歳を取り過ぎました。 

 空き家となった実家の面倒だけでも大変なのに住むとなったら、あちこちにひとりで暮らすために手を入れなければならず、地べたでのひとり暮らしは防犯の上からも怖い!

 あっちを直せばこっちが壊れ…その工事の手配やら支払いを考えたら、鍵ひとつで出かけられる集合住宅は気が楽でございます。

「もうサ、思い切って売っちゃおうよ!お兄ちゃんとあちしの共同名義になってるんだから、どっちかが先に死んじゃったら、あとの手続きが面倒だよ!」

「売却かぁ~ちょっと淋しい気もするなぁ~」

「まぁ~お兄ちゃんだって、いつ友ちゃんに捨てられて涙の帰郷となるかも知れないからねぇ~もう少し売らないでおく?」

「あのね!なんで俺が愛する友ちゃんに捨てられるんだよ!」

 人生、何が待ち受けているか見当もつきません。

 のちのち兄妹ふたりして住んでたりして…おぉ!怖っ!

 風入れをしている間に庭の水遣りを済ませ、しっかりと雨戸を閉めてから家に戻る途中、うっかり八百屋の店先を通ってしまい「よぉ!おみえちゃん!あきちゃんが北海道へ帰ったって?良かったなぁ~今度あきちゃんにいっついて(言って)くれよ。うちは八百屋だからね、あきちゃんが作ったどうしようもないジャガイモやカボチャ、送ってくんなくていいから!あんなの売れやしないよ!」

「おぃちゃんよ。それを言っちゃぁ~おしめいよ!お兄ちゃんが丹精込めて作った野菜をサ、売ろうなんて…そんなセコイことをよく言うわ!肥溜めの肥料で作った究極の逸品だよ!」

「今どき、肥溜めの肥料でよく作るわなぁ~まぁ~カボチャもホクホクして美味かったな。それよりね、今日は枝豆の良いのが入ってるから、買って行こう!」

 八百屋のおぃちゃんに見つかってしまいました。

 兄とおぃちゃんは幼馴染み…けっこうつるんで遊んだ悪友だったと聞いています。

「枝豆ぇ~?」

「千葉県産の早生の枝豆・玉すだれっていう品種でね、ひと莢(さや)に3粒入ってる上等な枝豆なんだよ」

「ひと束なんて、ひとりじゃ食べきれないよ」

「ひと束全部一緒に茹でたらサ、半分は莢から出して蕎麦つゆに浸しておくんだよ、浸し豆で味がしみて美味しいよ」

「ふ~ん」

 八百屋のおぃちゃんが唾を飛ばして勧める枝豆…買って参りました。

 口は悪いけど…まぁ、人のことはあまり言えたもんじゃありませんが…いつも実家の見回りもしてくれているので本当に有り難いことです。

 莢の中には、ご覧のようにはち切れんばかりの大粒の枝豆が詰まっておりました。

 塩で頂く枝豆も美味しいのですが、こうして莢から出して蕎麦つゆに浸しておくのも食べやすい工夫かと思います。

 梅雨入り前に頂いた枝豆、大変美味しゅうございました。

 早生の枝豆で初夏を満喫することができました。