今日は台風1号の影響か…朝から雨が降っております。

 九州、四国、東海に出されている線状降水帯・注意報…心配であります。 

 スズランに掛かるひと粒の雨が集まると大きな水害となる…まさに大河の一滴と化してしまいます。

 さて5日間に亘って東京へ来ていた兄夫婦が北海道へと帰る日でございます。

「帰る前に、もう1度、美味いもん食べに行こう」と兄が声を掛けてくれ、兄の好物である蕎麦を日本橋・室町にある「砂場」で落ち合うことに致しました。

 

 砂場ののれんをくぐって席に着くなり注文するのは…茶碗蒸しまたは小田巻蒸しでございます。

 仕上がるまで20分ほど要するので、早めに頼むに限ります。

 今日はうどんが入った小田巻蒸しに致しました。

「女・子どもってぇのは茶碗蒸しが好きだねぇ~」と言いつつも自分の分も頼んでいる兄…「ジィ様も好きなんだよね、茶碗蒸し!」と友ちゃんに言われております。

 

「俺んとこの畑、今年はソラマメ全滅だったなぁ~枝豆は順調だけど、留守してる間にシカに食べられちゃってるかもな。ソラマメ頼んでくれぃ」

「そんなに普通にシカとかキツネが出てくるの?」
「普通に出て来るんだよぉ~なんか背中に視線って言うかサ、気配を感じるんだよ。もうね、だるまさん転んだの世界なんだよ!シャッと振り向くと…そこでキツネと目が合うんだけど、シカは目線が上なんだよ。何しろオスジカてぇのはデカいんだよ。シカは草食だけどもサ、喰われるかと思っちゃったよ」
「お兄ちゃん、ソラマメ全部食べていいよ」
「焼き鳥は…塩にしよう!久美ちゃんがサ、佃煮持って来てくれたって聞いて嬉しかったよ。夏の花火、屋形船の予約がどんどん入ってるって聞いて安心したよ」

 中央区・佃島で船宿をやっている従兄妹たちも父の十七回忌に来てくれました。

 兄へのお土産として近所の佃煮屋・丸久さんの佃煮の詰め合わせを持って来てくれ、兄は「東京・下町の味だ」と大喜び。

「バッグの中に佃煮が入ってるから、ちょっと出して摘まむか?」

 天下の砂場で佃煮を持ち込んでいるのも兄だけでありましょう。

 船宿の経営もコロナ禍で難しくなっておりましたが、ここに来てガマンのし甲斐があったと言うことで、隅田川花火大会の予約がいっぱいとのこと…嬉しい限りです。

「〆は天もりか、せいろだな」

「天ぷらはね、札幌にも旨い店があるんだよ。なっ、友ちゃん!」

「ふ~ん…札幌なんてラーメンしかないと思ってたよ」

「お前ね、札幌のみんなにドヤされるぞ!待てよ、札幌って言ってラーメンがすぐに出て来るってことは、それだけ旨いって有名なことか?」

 みんな「せいろ」にしてお会計!

 兄はこのまま羽田空港へ直行…夕方には北海道・札幌に着くでしょう。

 ペットホテルに預けてあるペルシャ猫の「ルナ&ボニータ」に頬ずりして自宅へと向かうかと思います。

 車の運転は友ちゃん…どこまでも、お気楽な兄であります。 

 スズランの花言葉に「再び幸せが訪れる」があります。

 77歳の兄と、69歳の妹…また会えると言う保証はございません。

 それでも「また会えることを祈って」蕎麦を啜りました。

 両親が亡くなり、一番近い肉親は兄ひとりと娘だけになってしまいました。

 お兄ちゃん、なんで遠い北海道に行っちゃったんだろか?

 タクシーに乗り込む兄が、右手を差し出し握手を求めています。

「おみえ、北海道へ遊びに来い!またな」

「お兄ちゃん、友ちゃん、元気でね」

 お兄ちゃんの手…図面を引いていころの手とは違って、硬くて分厚い手になっておりました。

「あぁ~これが今のお兄ちゃんの手なんだ」…胸が熱くなってきちゃった。

 タクシーを見送ったら…またあの寂寥感がこみ上げてきて、少し参っってしまいました。

 きっと、また会える…深呼吸して帰って参りました。