冬至を越すと少しづつではありますが日あしが伸びて参りまして、本日の日の入りは16時43分でございました。

 5時を過ぎましても辺りはほんのりと明るい…然しながら夕方の冷え込みは厳しく、エアコンのリモコンを持って点けるかどうしようか迷ってしまいます。

「エアコンってね、冷房よりも暖房の方が電気代が掛かるんだよ」と友人に言われてから、スィッチを入れるのをためらってしまうようになりました。

「寒いよぉ~」

 ここで風邪をひくわけにはいきませんから、家の中でマフラーを巻きました。

 もし喉をやられて痰が切れにくくなったら…黒く熟したタンキリマメを食べると、あら不思議!

 痰がすっきりと切れると習いました。

 黒い実を食すとなると、チョィとばかり勇気が要りますが、多年草の実にこれだけしっかりとした効用の名前が付けられているのですから確かなことと思います。

 口の中が真っ黒になって、お歯黒のようになってしまうかも!

 

 今日は予てから観たかった映画…『PERFECT DAYS(パーフェクト・ディズ)』を友人と一緒に鑑賞!

 カンヌ国際映画祭・最優秀男優賞を受賞した役所広司・主演の日本映画です。

 監督は「パリ、テキサス」や「ベルリン・天使の詩」などの傑作を作り続けているドイツの名匠、ヴィム・ヴェンダース。

 公共トイレの清掃を仕事としている平山の淡々とした日常を描いている…のだそうです。

「とにかくセリフが極端に少ないから、登場する役者の一挙一動を見逃さないようにしなきゃダメよ!」

「うん!無口な役なんだね?あちしと一緒だわ」

 本当に極端にセリフがなく、日々の暮らしが静かに描かれていました。

 まるでドキュメンタリー映画を観ているよう…あまりに変わりのない場面に既視感を覚えてしまいます。

 日の出前に神社の落ち葉を掃く竹ぼうきの音で目覚め、歯を磨き、小さな鉢植えに水遣りし、渋谷区に点在する公共トイレへと向かう…銭湯へ行き、行き付けの飲み屋で一杯、夜は文庫本を読みながら眠りに就く。

 その文庫本はフォークナーであったり、幸田文だったりと部屋に並べれている文庫本の数は平山のインテリが垣間見えるかと思われます。

 平山が運転する車内に流れる音楽は1970年代から80年代のカセットテープ…その選曲の素晴らしさには感激しちゃうほどであります。

 役所演じる・平山は木漏れ日をこよなく愛し、穏やかで内海のように感じます。

 わたくしたちはそれらを、役所広司の眉や唇、頬の緊張や弛み、瞳の深さ、微かな瞬きなどの表情と肩の線、後ろ姿、手指の動き、脚の運びに魅入られてしまいます。

 映画に登場するトイレは実在する渋谷区の17ヶ所の公共トイレの中7ヶ所のトイレが舞台となっております。

 キノコの形をしたスリーマッシュールームトイレ、折り紙をイメージした真っ赤なトイレ、外から見ると透けているのに人が中に入り、閉めるを押すとスクリーンが曇るトイレ、木の年輪を張り付けたトイレ、格子模様のトイレ、イカのエンペラをイメージした屋根を持つトイレなど、それはもう個性的!

 設計図を引いたり、プロデュースしたのは安藤忠雄、隈研吾、槙文彦、佐藤可士和など超一流の建築家たちとデザイナーです。

 主人公・平山は、そのトイレをひとつひとつ丁寧に隅々まで手で清めるように清掃を進めていきます。

 そんな平穏は日々にも淋しさが漂ったり、怒りがあったり、切なさが押し寄せてきたり、喜びを得たり、驚きを感じたりと小さな出来事がさざ波のように起こります。

 日の出や夕焼けの太陽のなんとも荘厳で澄んでいること!

 あっ!清掃員のスタッフが来ているユニフォーム…背中には「The TОKYО TОILET」の文字が書かれています。

 デザインはNIGО(ニゴ)、ストリートカルチャーデザイナーだそうです。

 この渋谷区の公共トイレを再生する発起人はユニクロの代表者・柳井康治氏とのこと!

 なるほど…清潔で個性的なトイレを見るだけでも価値があります。

 映画が終わって…ふたりして館内のトイレへ駆け込みました!

 ここコレド室町2のトイレも明るくきれいであります。

 お互いスッキリとして…「なんかサ、美味しいモン食べて行こ!」

 老い先短い人生ではあるけれど、こうして淡々と、それとほんの少しだけ喜びを見つけ楽しんで暮らして行けたらいいなぁ~と思わせてくれた映画でした。