路地裏に並んでいる玄関…下町・深川の町は1本・裏道に入りますと、どこの家の玄関先にもいろいろな鉢植えが置いてございます。
季節ごとの花もあれば、ミニ菜園もありまして、そのひとつ…この冬の時期にトマトの花が開花しております!
寒さに強い品種に改良されたトマトでありましょうか?
それとも…トマトの勘違い?
陽射しを浴びていますが、風は冷たい…「さみぃ~」何んとなく震えているような?
トマトの花は筒状になっていまして、この花弁の中にめしべ・おしべが収まっています。
受粉は昆虫にも頼りたいところですが、この筒状に上手く入っていく虫は、相当な勇気が必要とされるし、小さな体の虫しか入れません。
そうなると虫媒介は限られてしまうので、大ざっぱな風任せとなっております。
風で花弁が揺れて、めしべとおしべが自然交配をするのがトマト流!
それなのに…こんなに実を生らせております。
完熟したトマト、発見!
つい…摘まんでしまいそう。
茎になったまま、これだけ赤くなったのだから、さぞかし甘いことでしょう。
ポチッと口に入れてしまいそうな衝動をグッと堪え、無事に路地裏を脱出!
人様のトマトでありますから、いつでどこでも、お天道様が見ていますからね、摘まみ食いはできません。
さて、本日はわたくしの幼馴染みと忘年会を致しました。
ひとりは豊洲市場でマグロの中卸業をしているさわちゃん。
もうひとりは近くに住む、あきらくんのおっかさんであります。
地元・深川にある「割烹 おみたま」でランチ忘年会を開催…と言うほどではありませんが、江東区で発行した特典付き・お買物券の有効期限が迫っていると言うことで、あきらくんのおっかさんが「使っちゃおう!」と提案!
お買物券が使える店をリストアップしたところ、さわちゃんの情報では「この店、フランス産のカモとか、魚類も豊洲から仕入れてて、ちゃんとしたお店だよ」となりまして、3人で集うことになりました。
予約を問い合わせたら、本日13時が取れました。
わたくしとあきらくんのおっかさんは歩いて、さわちゃんのみ築地の家から電車で合流…「ビール飲みたいからサ、車はやめといた」
「仕事終わりで豊洲から来ると思ってたよ。今日は長ぐつじゃないんだ」
まだ東京卸売市場が築地にあるころ、さわちゃんは銀座・東劇で映画を観る時にも、長ぐつで自転車に乗って来たぐらい、足が長ぐつと一体化しております。
まぁ~市場では足元はいつも水浸しですからね、致し方ないことですけど、映画館での長ぐつは「ご遠慮下さい」とは言われませんでした。
「ランチメニューは5種類かぁ~私ね、家でしない天ぷらにする」
「あーた、家で天ぷらしないのぉ?揚げたての天ぷら、あきらはたべたことなぃんかぃ?」
「…ないけど、とんかつとかカキフライとか、あとはハムカツとかは揚げてるわよ!」
「油は使えるんだ」
「あちしは…金目の煮つけにしよう」
「あちしは…黒豚の生姜焼きもいいけど…銀だらの西京漬けにする」
「豚をやめて、銀だらにしたその根拠は?」
「根拠でランチは選ばないよ。生姜焼きってサ、ひとり暮らしだとけっこう食べるんだね。ちゃちゃっと動物性たんぱく質が摂れるから…」
「動物性たんぱく質にこだわってる未亡人てのも怖いわ!」
「生ビールで乾杯しようよ」
「何に?」
「…私たちとあきらの健康と幸せを願って」
「四角い顔のパパの健康と幸せはいいんぃかぃ!」
とにかく…乾杯しました!
どのメニューにもサラダと小鉢、カツオの刺身が付いておりました。
「アサリの味噌汁って久しぶりだなぁ~」
「うちもあきらがアサリとかシジミとかのお味噌汁が苦手だから作らないんだ。何年振りかで飲んだわ」
「あきらって美大から離れないで一生を終えちゃうの?」
「来年春から別の研究室に入るって言ってたねぇ」
「自分の作品って描かないの?」
「描いてるよ。提出が義務付けられているしね。でもサ、あの子芸術家として生きるより教授職に憧れてるんだよねぇ」
「大谷翔平がWBCで「憧れるのをやめましょう」って言ってたよ。教授になるために美大に行ったわけじゃないでしょうが!」
あきらくんは美大に入ったあとも前期・後期の院生を終え、研究室に入って何を習っているのか、27歳になっても美大生をやっているとか…実習で務めた教育課程で生徒に教える喜びとやりがいを感じたと本人は言っているそうです。
中高の同級生の中にはすでに就職、結婚して子どももいる人もいるのだそうで、はてさてどうなることやら?
「市場の方の景気はどぉ?」
「まぁ~コロナ禍が少し収まって来て、忘年会が復活したらしくてね。どこも注文が増えたって言って喜んでる。何んとか持ち応えて来てサ、ホント良かったよ」
さわちゃんが頼んだ金目の煮つけ、強火でサッと煮てあって、添えてある豆腐も絶妙の味加減だそうです。
天ぷらの白身は弾力のある身で、けっきょく何んの魚であるのか判明する前に呑み込んじゃったらしく、ただただ「美味しかった!」と申しておりました。
わたくしがチョイスした銀だらは甘さが勝っていましたが、酒の肴にはバッチリ!
ビール、ごくごくと進んじゃいました。
「とにかくサ、腐れ縁とでも言うのかねぇ~この歳までお互い元気で来れたんだから感謝だねぇ」
「大きなケガも大病もしなかったけど…私、今だに心療内科に通ってるんだ…なかなか気持ちが安定しないんだよね。こうやってふたりと会ってるときは落ち込まないんだけど、ウクライナとかガザとかの字を見るだけで不安になっちゃうんだよね。もうね、爆弾とかの映像見ると心臓がドキドキしてきて、薬飲まないと寝込んじゃうんだ」
あきらくんのおっかさんは、このコロナ禍で閉塞感や孤立感を覚え、ふさぎ込むことが多くなり心療内科に罹りました。
少しづつではありますが良い方向に向かっているかと思いますが、こればかりは本人の胸の内にしか判りません。
焦らずに回復を見守っていこうと思っております。
「美味しかったね!たまには外で食べるのもいいねぇ~」
「有効期限ぎりぎりで使い切って良かったわ」
どれも2000円のメニューで、あとはビール代プラスでございます。
さわちゃん、ふたりに串に刺した生のウナギのお土産を持って来てくれました。
「冬のウナギは脂がのって旨いのよ!」
割烹の店でウナギの包みを交わすのも…なんだか変だけど、ここは有り難く頂きます!
「またね!」
「あきらによろしくって言っといて!それと、たまにはアルバイトに市場に来いって伝えといて」
「うん!じゃね、ウナギありがと」
地下鉄の駅前でさわちゃんと別れたのはいいんですが…「ねぇ~ウナギの下ごしらえ、あーたんとこと一緒にやってくれない?私、上手にやる自信ないよぉ~心療内科に通ってるしぃ…」
「そんなのどこに通っていようが関係ないでしょ!お願いしなさいよ、やって下さいって!」
「やってぇ~!これからササッとあーたんとこで済ませちゃおう!」
コイツのどこが心療内科なんだか、解んない!
こっちの方が心療内科に通いたいよっ!