文京区白山(ぶんきょうくはくさん)にある東京大学・大学院理学系研究科付属植物園、通称「小石川植物園」に行って参りました。

 なぜに3連休のど真ん中にある4日に植物園に行ったのか?

 それは…アイツと言いますか、コイツと申しましょうか…テレビドラマ大好き!という、わたくしの幼馴染みの所為であります。

「この連休中にね、植物園でBOTANICAL FESTIVAL(ボタニカル フェスティバル)が開催されてんのよ!行こうよ」

「あーたんとんこのパパと行けば良いでしょ!」

「イヤだって言うんだもん」

「あちしもイヤだっ!」

「一緒に行こうよぉ。あーた植物、好きでしょ?ハナミズキとかイチョウとか紅葉してるかもよ」」

「う~ん…もう何年も行ってないなぁ~そこらへんの紅葉で良いよ」

「東京大学の紅葉だよ、そこらへんのとは格が違うでしょ!」

 まぁ~良い天気ですし…たまには木立の中を歩くのも良いかも知れない…と妥協いたしました。

「東西線からだと…丸の内線・茗荷谷駅か、都営三田線・白山駅から行くか…どっちにする?」

「そりゃぁ~行きは茗荷谷からじゃないと正門に着かないよ。付属の植物園とは言っても、東京大学だからね、ちゃんと正門から入らなきゃっ!裏口・裏門からの入園は絶対にダメだよ!」

「そうだよねぇ~堂々と入ろう!ってことは大手町乗り換えね。あっ!三田線も大手町乗り換えだ」

と・言うわけで、茗荷谷駅から15分ほど歩きまして、正門に到着!

「BOTANICAL FESTIVAL」、幼馴染みの言うとおり開催されておりまして、親子連れの入園者が多く見られました。

  

「先に日本庭園へ行こうよ」

 東京の高級住宅地にこんな自然が残されいるなんて、ホント奇跡ではないでしょうか?

 木漏れ日の中を歩くなんて…相手が幼馴染みでなけりゃぁ~ロマンチックなのになぁ~

 手入れがなされているような・いないような微妙なところですが、何しろ植物の研究をするところでありますから、あまり人の手を掛けぬようにしているのでしょう。

 それでもここ小石川植物園は国指定の名勝・史跡になっております。

 幾重にも重なる木陰から来る風には草の匂いや、ちょっと甘い香りも感じ…とても気持ちが落ち着いてくるのを感じました。

 

 植物園の西側にあります洋館は「旧東京医学校本館」で、重要文化財に指定されている建物となっております。

 池に映る姿も美しい…ここで折り返しとなります。

  

「これって何?」

「クチナシの実。お正月に煮るクワイとか…サツマイモを煮る時に黄色く色づけしたいじゃない?その時に使うのよ」

「こんな形してんの?」

「カラカラに乾燥させるからね。茶色く萎んじゃってるのが売られていると思うよ」

「あっ!烏瓜(カラスウリ)の実!きれいな赤!クリスマスローズに飾りたい!」

 今にも手を伸ばして取ろうとする手をバシンと払いのけ…「ダメ!東京大学の物は国の物!あーた、お縄になるよ」

「そうだった!ここは町奉行・大岡越前守(おおおかえちぜんのかみ)・由来の植物園だもんね」

 植物園には大イチョウがそびえております。

 これは1918年に画工・平瀬作五郎が発表した論文に「イチョウの精子」があるのですが、その精子を発見したとい言う実際のイチョウの樹であります。

「これこれ!ドラマの中ではね、その平野何んとかってのをモデルにして、役名・池野万作って名で出てたのよ」

「ドラマって何?」

「NHKの朝ドラ『らんまん』よ!」

「もう終わったドラマでしょ?」

「私の中では今も生き続けてんの」

 なんか…イヤ~な予感がして来た。

  

キャァ!これこれ!ここに来たかったのよ!夢みたい」

 植物園の本館です。

 ここには植物の分類する研究室や標本室が併設されていまして、植物園のシンボルともなっている建物です。

 NHKで4月から10月まで放送された朝ドラ『らんまん』は幼馴染みの大のお気に入りのドラマだったようで、毎日朝の7時30分、8時、お昼の12時45分と3回も見て、尚且つ録画もしたと聞いて、その根気というか執念というか凄まじいものを感じてしまいます。

 それもこれも彼女のひとり息子・あきらくんがドラマで主演を演じた神木隆之介くんに似ているからであります。

「そんなに似てるかなぁ~?エラが張って顔が四角いのは似てると思うけど…あとはなぁ~?」

「そっくりじゃない!」

「ふう~む」…首を傾げてしまいます。

 この本館の前でのロケだったらしく、主人公・槙野万太郎が理学博士(博士号)を授与される場面が、まさにこの玄関前とのことで、ドラマでもこうして椅子が置かれ妻の壽恵子(すえこ)、娘の千鶴、教授たちが見守る中、講演をしたそうです。

 胸ポケットには女郎花(おみなえし)の花でしょうか?

 如何にも槙野博士が選ぶ楚々とした花であります。

 花言葉は「親切・美人」とか…きっと美しい妻・壽恵子に捧げたものでありましょう。

「なんか鳥肌が立ってきちゃった!ロケ地の聖地そのものよ!」

 おいおい!ボタニカル・フェスティバルは何んだったんだよ!

 なんかなぁ~騙された気分…汗

 こういう熱心なファンに朝ドラは支えられているのだと、つくづく思いましたねぇ~

 出掛けた時間が早かったもので、午後2時半には家に戻ることができました。

 帰りは裏口でも裏門でも構いませんからね、駅に近い都営三田線「白山駅」から乗って参りました。

「今日は付き合ってくれて、ありがと。1度は行ってみたかったんだ。らんまんの撮影ってほとんどがスタジオで、ロケって言うと高知県だったのよ。東京ではこの植物園しかなかったと思うんだ。だから嬉しい!」

 コロナ禍で少しだけ気持ちが落ち込んでしまい、心療内科に罹っている幼馴染み…ちょっとづつではありますが元気を取り戻しつつあります。

 まだ薬は手放せぬと聞いていますが、1番の薬はロケの聖地を巡ることかも知れません。

 幼馴染みの華やいだ顔を見ることができて、来て良かったと思いました。

「1本残らず録画してあるから!すぐに持っていくから…私が最初から説明してあげるから」

 いやいや…そこまで気を遣ってくれなくていいよ! 

 今夜は精子が一生懸命泳いでたどり着き受精したギンナンの実を炒って、カマンベールチーズと共に頂きましょう!

 「う・旨~い!」

 

『精子発見そのぎんなん落ちつげる』

(せいしはっけんそのぎんなんおちつげる)

山口青邨(やまぐちせいそん)